アメリカ ペロシ下院議長が台湾に到着

アメリカのペロシ下院議長が2日夜、台湾に到着しました。ペロシ議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、台湾訪問に中国政府は強く反対していて、地域の緊張がいっそう高まることが懸念されます。

アメリカのペロシ下院議長は2日夜、専用機で台北の空港に降り立ち、呉※ショウ燮 外交部長らの出迎えを受けました。
※ショウは「かねへん」に「りっとう」

台北にあるアメリカの代表機関「アメリカ在台協会」によりますと、ペロシ議長は3日まで滞在し、台湾の指導者らと米台関係や平和・安全保障問題などについて意見を交わすということです。

台湾メディアはペロシ議長が蔡英文総統らと会うと伝えています。

ペロシ議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、アメリカの現職の下院議長が台湾を訪問するのは1997年のギングリッチ氏以来25年ぶりです。

「台湾は中国の一部だ」と主張する中国政府は、ペロシ議長の台湾訪問計画がイギリスの新聞フィナンシャル・タイムズで7月中旬に報じられた直後から、「断固反対する。訪問すれば強力な措置をとる」などと繰り返し表明していました。

中国政府が今後、軍事的な対抗措置をとるようなことがあれば、地域の緊張がいっそう高まることが懸念されます。

ペロシ下院議長「アメリカの揺るぎない関与を示すもの」

ペロシ下院議長は台湾に到着した直後に同行している議員らと声明を発表しました。

その中では「アメリカ議会の代表団の台湾訪問は、台湾の活力ある民主主義を支援するというアメリカの揺るぎない関与を示すものだ」とその意義を説明しています。

そして「世界が専制主義か民主主義かの選択を迫られる中で、2300万人の台湾の人々とアメリカの連帯はこれまでになく重要だ」としています。

そのうえで今回の訪問について「長年にわたるアメリカの政策と矛盾するものではない。アメリカは一方的に現状を変更しようとする試みに反対し続ける」として、アメリカの台湾政策に変更はないと強調しています。

また、ペロシ議長は有力紙ワシントン・ポストにも寄稿し「近年、中国は台湾との緊張関係を劇的に高めている」として、軍事、サイバー、そして経済のあらゆる面で中国が台湾への圧力を強めていると非難しました。

そのうえで「中国共産党が抑圧的な行為を加速させる中で議会の代表団の訪問は、アメリカは台湾とともにあるという明確なメッセージだとみなされるべきだ。われわれは中国共産党が台湾を脅かすのを黙ってみているわけにはいかない」としています。

米下院議長の台湾訪問は1997年以来

アメリカ連邦議会の現職の下院議長が前回、台湾を訪れたのは、25年前の1997年です。

当時の共和党のニュート・ギングリッチ議長は、アメリカが1979年に台湾と断交して以来、アメリカ連邦議会の下院議長として初めて台湾を訪れ、李登輝総統などと会談しました。

会談後の記者会見でギングリッチ氏は「中国が武力によって台湾を統一しようとすれば、アメリカはあらゆる手段で台湾を防衛する」などと述べ、中国側は「内政干渉だ」として強く反発しました。

訪問めぐりアメリカでは大きな議論に

ペロシ下院議長の台湾訪問をめぐっては、中国側が「訪問を強行すれば、中国は断固とした強力な措置をとる」などと強くけん制したことからアメリカでは、訪問前から大きな議論を呼んできました。

バイデン大統領は先月20日、「軍はいま行くのはよい考えだとは思っていない」と述べたほか、有力紙、ワシントン・ポストは、先月23日、バイデン政権は台湾海峡の緊張が一気に高まることを懸念し、ペロシ議長に対し、訪問のリスクを説明したと伝えました。

一方、トランプ前政権で国防長官を務めたマーク・エスパー氏は先月26日、シンクタンクのイベントで「自己抑止をすべきでない。脅しには立ち向かわなければならない」と述べたほか、共和党の議員や一部の民主党の議員からも訪問を後押しする声が上がっていました。

バイデン大統領と習近平国家主席は日本時間の先月28日、電話による首脳会談を行い、両首脳は対話を継続し、今後、対面での首脳会談の時期を模索していくことで一致しました。

バイデン政権の高官はペロシ議長の台湾訪問をめぐるやり取りが首脳会談の中で行われたか明らかにしませんでしたが、ペロシ議長が中国の反対を押し切る形で台湾を訪問したことで米中関係の悪化は避けられず、台湾海峡の緊張が高まることも懸念されます。

専門家 “中国は反発も衝突までには発展しない”

アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことについて、中国政治に詳しい専門家は中国は演習を行うなどして反発の意思は示すものの、軍事的な衝突までには発展しないとみられると指摘しています。

中国政治に詳しい早稲田大学の天児慧名誉教授は民主党のペロシ下院議長が台湾を訪問した背景について「アメリカがことし秋に中間選挙を控え、民主党が不利な状況に置かれているとも言われる中で中国に対する強硬な姿勢を国内向けに見せる。その材料として、台湾を訪問することによってアメリカが世界のリーダーシップを握っているということをアピールした」と指摘しています。

中国の受け止めについては「習近平国家主席としてはペロシ下院議長の台湾訪問を何も抵抗しないで見過ごすと、口だけの腰抜け外交などと国内から強い反発が出るため、強気の態度を示さないとならない。一方でアメリカとの対立に拍車をかける状態にすれば、コロナ禍で経済的な問題を抱えているなかで新たな火種を作り出すことになるので、非常に頭が痛いと思う」と話しています。

そのうえで中国の対応について「目立つけれど実害が出ないのは軍事的な威嚇を何回か続けるということだろう。しかしそれは威嚇であって攻撃をするわけではない」と述べ、演習などで反発の意思は示すものの、軍事的な衝突までには発展しないとみられるという認識を示しています。