バイデン大統領 “アルカイダ指導者 ザワヒリ容疑者殺害”発表

アメリカのバイデン大統領は、国際テロ組織アルカイダの現在の指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者をアフガニスタンで殺害したと発表しました。

これはバイデン大統領が日本時間の午前8時半すぎにホワイトハウスで行った緊急の演説で明らかにしました。

バイデン政権の高官によりますと、ザワヒリ容疑者を殺害する作戦はアフガニスタンの現地時間の先月31日、午前6時20分ごろに行われ、首都カブールでザワヒリ容疑者が、潜伏していた住宅のバルコニーにいたところを無人機からミサイルを発射して殺害したということです。

これについて、バイデン大統領は「正義がもたらされた。テロの指導者はもういない」と述べて、成果だと強調しました。

そのうえで「アメリカに危害を加えようとする者たちよ、よく聞け。われわれは常に警戒を怠らず行動し、アメリカ人の安全を確保するために必要なことを行っていく」と警告しました。

この攻撃による市民の犠牲者はいないとしています。

ザワヒリ容疑者は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の計画に深く関わったとされ、事件の首謀者のオサマ・ビンラディン容疑者が2011年に殺害されたあと、指導者となっていました。

ザワヒリ容疑者は、ことし5月にもアメリカを非難する内容の動画を公開し、アメリカ政府は、拘束に直接つながる情報の提供者に最大で2500万ドルの懸賞金を出すとしていました。

作戦実行までの経緯

バイデン政権の高官によりますと、アメリカ政府はことしに入ってからザワヒリ容疑者がアフガニスタンの首都カブールに潜伏しているとの情報を得たということです。

そして、ことし4月にホワイトハウスの高官の間で情報が共有されたあと、サリバン大統領補佐官からバイデン大統領に報告が行われたということです。

潜伏先の住宅が判明してから、ザワヒリ容疑者が外出することは一度もなかったということですが、バルコニーにいる姿を何回も確認したということです。

その後、攻撃によって住宅が壊れてザワヒリ容疑者以外の犠牲者が出ないように、建物の構造などについても調査したとしています。

そして先月1日、バイデン大統領はホワイトハウスでCIA=中央情報局のバーンズ長官などから作戦の説明を受け、潜伏先の住宅の模型も示されたということです。

先月25日にはバイデン大統領に最終的な報告が行われ、大統領は会議の参加者に意見を聞き、全員が賛同したのちに作戦の実行を許可したということです。

現場にはアメリカ人の関係者はいなかったということですが、複数の筋から得た情報によって死亡したのはザワヒリ容疑者だったとしています。

また、バルコニーにいたザワヒリ容疑者への攻撃が無人機によるミサイルによって行われた際、住宅にいた家族にけがはなかったほか、市民への被害も確認されていないということです。

この高官は、アフガニスタンの統治を進めるイスラム主義勢力タリバンの幹部はザワヒリ容疑者がカブール市内に潜伏しているのを知っていたとしたうえで、作戦をタリバン側に伝えなかったとしています。

ザワヒリ容疑者とは

国際テロ組織アルカイダの指導者ザワヒリ容疑者は71歳。

エジプト出身の元医師で、地元のイスラム過激派組織を率いて1990年代後半にオサマ・ビンラディン容疑者を指導者とする国際テロ組織アルカイダに加わりました。

資金を管理したり活動の基本理念を構築したりしてビンラディン容疑者が最も信頼する側近の一人となり、アルカイダのナンバー2としての地位を固めます。

ザワヒリ容疑者は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件のあとアメリカ軍などによるアフガニスタンへの攻撃が始まると隣国パキスタンとの国境地帯に逃れたとみられます。

2011年5月にビンラディン容疑者が潜伏先のパキスタンでアメリカの軍事作戦によって殺害された後、後継者としてアルカイダの最高指導者になります。

ザワヒリ容疑者は指導者になった後もアメリカなどへの攻撃を呼びかける声明を繰り返し出す一方で、その動向が伝えられることはなく、たびたび死亡説も流れました。

最近ではことし5月にもアメリカを非難する内容の動画を公開し、アメリカは懸賞金をかけてザワヒリ容疑者の行方を追っていました。

タリバン “首都カブールの住宅に米が空爆” 強く非難

アフガニスタンの統治を進めるイスラム主義勢力、タリバンは、バイデン大統領が演説を行う前の日本時間の2日朝早くに声明を発表し、先月末に首都カブールの住宅に対し空爆があり、調査の結果、アメリカの無人機による攻撃だったことが判明したと明らかにしました。

タリバンは、この攻撃とザワヒリ容疑者の殺害の関連については明らかにしていませんが「国際原則に反し、アメリカやアフガニスタン、地域の利益に反するものだ」として攻撃を強く非難しています。

タリバンは、ザワヒリ容疑者が率いるアルカイダと密接なつながりを維持してきたとみられていて、武器の提供や軍事訓練などで日常的に連携してきたと指摘されています。

オバマ元大統領「ようやく正義がもたらされた」

アメリカ同時多発テロ事件の首謀者で、国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者を2011年に殺害する作戦を指揮したオバマ元大統領はツイッターで「事件から20年以上がたち、ようやく正義がもたらされた」としたうえで「アフガニスタンで戦わなくてもテロを根絶することが可能だということが証明された。事件の遺族やアルカイダによって苦しめられた人たちに少しでも平和がもたらされることを願う」とコメントを発表しました。

サウジアラビア「発表を歓迎 テロ根絶に協力」

サウジアラビアの外務省は2日、アメリカ政府がアイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したと発表したことについて「容疑者はアメリカなど、世界各地で忌まわしいテロ事件を主導した1人で、多くの罪のない人を殺害した。発表を歓迎するとともに、テロ根絶に協力していく」とコメントを発表しました。

ザワヒリ容疑者が関わったとされる、2001年のアメリカ同時多発テロ事件をめぐっては、2011年に殺害された首謀者のオサマ・ビンラディン容疑者のほか、実行犯の多くがサウジアラビア出身でした。

事件の遺族の中には、サウジアラビアの政府関係者や周辺人物が事件に関与したと主張する意見も根強く、サウジアラビア政府は否定を続けています。

サウジアラビア政府としては、ザワヒリ容疑者の殺害を歓迎する姿勢を示すことで、改めて関与を否定したいねらいがあるとみられます。

カブール市民からは米に反発する声も

アメリカの政府高官によりますとザワヒリ容疑者を殺害する作戦はアフガニスタンの現地時間の先月31日午前6時20分ごろに、首都カブールで行われたということです。

アフガニスタンの統治を進めるイスラム主義勢力タリバンも、アメリカの無人機による攻撃が行われたのは、首都カブールの中心部だとしていて、2日朝、NHKの取材クルーが向かったところ、攻撃されたとみられる周囲はタリバンの戦闘員が配置され、近づくことが許されず、緊張が高まっていました。

カブールの市民にアメリカによるザワヒリ容疑者の殺害について尋ねたところ、反発の声が上がっていました。

このうち60代の男性は「われわれはアメリカのひどい攻撃を非難しなければならない。われわれの土地で攻撃を行うことはよくないことだ」と話していました。

また、30代の男性は「アフガニスタンは独立した国なのに、アメリカはこのようなことを、過去も今も変わらず行っている」と話していました。

一方、カメラを止めて話を聞いた市民からは「アルカイダはアフガニスタンの人々を殺害してきた」として今回の攻撃について、理解を示す声もありました。

専門家「報復としてテロが頻発する可能性に注意」

過激派組織の動向に詳しい日本エネルギー経済研究所の保坂修司理事は、NHKの取材に対し「アメリカにとってザワヒリ容疑者は、オサマ・ビンラディン容疑者と並ぶ最も重要なテロリストで、その殺害は対テロ戦争において1つの大きな区切りになるのではないか」と述べました。

一方、アルカイダにとっては、もともと組織内でのザワヒリ容疑者の影響力は限られ、殺害は大きな打撃にならないと分析したうえで「リーダーが殺害されたことは新たなテロを行う大きな理由づけになり、報復として各地でテロが頻発する可能性に注意する必要がある」と指摘しました。

また、アフガニスタンで統治を進めるイスラム主義勢力タリバンの幹部の家で、ザワヒリ容疑者が殺害されたという報道があることを踏まえ、保坂理事は「そうであれば、タリバンがザワヒリ容疑者をかくまっていた可能性が高くなる」として、タリバンの暫定政権が望む国際的な承認は、さらに遠のくという見方を示しました。