【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(8月2日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる8月2日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

最初の穀物船 トルコ沖で検査へ

ロシア軍による封鎖で黒海に面するウクライナの港から農産物の輸出が滞っている問題をめぐっては、両国とトルコ、国連の合意に基づき、穀物を積んだ最初の船が1日、ウクライナ南部オデーサの港を出港し、中東のレバノンに向かっています。

調整役を担うトルコ国防省などによりますと、船はトウモロコシを積み、中東のレバノンに向かうということで、2日夜にも黒海沿岸のイスタンブールの沖合に到着したあと、3日に積み荷などの検査を受ける見通しだとしています。

「戦争研究所」“ロシア軍は南部へ部隊の移動続けている”

ウクライナの戦況を巡ってはアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日、「ロシア軍は東部ドネツク州からウクライナ南部の防衛拠点へ部隊の移動を続けている」と分析したほか、イギリス国防省もロシア軍が南東部の前線を強化しようとしていると指摘しました。
ウクライナ軍は、アメリカから供与された高機動ロケット砲システム=ハイマースなどを活用し、南部で支配地域の奪還を目指していて、双方の攻防がさらに激しくなるものとみられます。

ウクライナから日本に避難 1660人に(7月31日時点)

出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人は7月31日時点で1660人となっています。
内訳は、ことし4月に政府専用機で避難してきた人が20人、政府が座席を借り上げた民間の航空機で避難してきた人が合わせて164人、そのほかの手段で避難してきた人が1476です。
性別は男性が422人、女性が1238人となっています。
年代別では18歳未満が365人、18歳以上60歳以下が1076人、61歳以上が219人です。
入国日を月別にみると、3月が351人、4月が471人、5月が332人、6月は282人、7月は224人です。
入国した人のうち、少なくとも51人はすでに日本から出国しているということです。
政府は避難してきた人たちに90日間の短期滞在を認める在留資格を付与し、本人が希望すれば、就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更することができます。この在留資格に変更すると、住民登録をして国民健康保険に加入したり、銀行口座を開設したりすることができ、7月31日までに1363人が「特定活動」に資格を変更したということです。
政府は、ウクライナから避難した人たちのうち、日本に親族などの受け入れ先がない人については、一時的な滞在先としてホテルを確保し、受け入れ先となる自治体や企業などを探していて、先月29日までに56世帯94人の受け入れ先が決まっています。
ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めて5か月がたち、日本での避難生活が長期化する中、言葉や就労、教育などについてニーズに応じた支援が求められています。

三井物産と三菱商事「サハリン2」の資産価値を引き下げ

大手商社の三井物産と三菱商事がロシア極東で手がけているLNG=液化天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」の資産価値を合わせて2100億円余り引き下げました。
ロシアのプーチン大統領が事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名し先行きが不透明になっているためです。

自動通訳アプリにウクライナ語追加 日本への避難民を支援

ウクライナから日本に避難している人を支援しようと、国の研究所が開発した無料の自動通訳アプリに、ウクライナ語の通訳機能が追加されました。
国の情報通信研究機構が開発した自動通訳アプリ「ボイストラ」は、AI・人工知能が音声を識別し30の言語に対応できます。ウクライナから日本に避難してきた人を支援しようと、2日からこのアプリにウクライナ語の通訳機能が追加されました。
このアプリは無料でダウンロードできるということで、研究機構を所管する総務省は避難してきた人たちや自治体に周知し、役立ててもらいたいとしています。

ゼレンスキー大統領 穀物船「安全が確保されるのか見守りたい」

ウクライナのゼレンスキー大統領は1日に公開した動画で穀物を積んだ最初の船が南部オデーサの港を出発したことについて「合意がどのように機能し安全が本当に確保されるのか見守りたい。現時点では結論を出したり今後を予測したりするのは時期尚早だ。ロシアがウクライナの輸出を妨げないという幻想を抱いてはならない」と述べました。

そしてゼレンスキー大統領は16隻の船が出港に向け待機しているとしたうえで「世界の食料市場の安定に貢献する準備はできている」と述べ、今後、円滑に輸出が続くことに期待を示しました。

国連グテーレス事務総長 穀物船出港「大きな共同成果」

ウクライナ南部から穀物を積んだ最初の船が出港したことについて、国連のグテーレス事務総長は1日「世界の食料市場に救済と安定をもたらす最初の1隻となるに違いない。非常に大きな共同成果だ」と述べ、歓迎しました。

そのうえで「飢餓の危機にある人々は、生き残るために合意が機能することを必要としている」と述べ、輸出の継続が必要だと強調しました。

アメリカ 約725億円の追加軍事支援を発表

アメリカのバイデン政権はロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して最大で5億5000万ドル、日本円にしておよそ725億円の追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には
▽高機動ロケット砲システム=ハイマースに使われるロケット弾や
▽155ミリ口径の砲弾7万5000発などを供与するとしています。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は1日、会見で、この日、ブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官、それにアメリカ軍の制服組トップのミリー統合参謀本部議長がウクライナ側と協議をし、ウクライナへの継続的な支援を決めたとしています。

穀物船出港 ウクライナの業界団体 歓迎も今後の動向を警戒

ウクライナ南部から穀物を積んだ最初の船が出港したことについて、ウクライナの穀物の業界団体幹部は1日、歓迎する意向を示す一方、再び輸出の停止につながるような攻撃が起きないか、ロシアの今後の動向に警戒感を示しました。

ウクライナ穀物協会のセルヒー・イワシチェンコCEOは、現在、ウクライナ国内には、小麦やトウモロコシなどおよそ2500万トンの穀物が留め置かれ、輸出を待っている状態だと指摘したうえで「輸出の再開は、ウクライナの農業市場にとってよいチャンスだ」と歓迎しました。

一方で「ロシアが合意を守らなかったり穀物を運ぶ船や港を攻撃したりするリスクもある。これは重大な問題だが、起こりえることだ」と述べ、輸出の停止につながるような攻撃が起きないか、ロシアの今後の動向に警戒感を示しました。

イワシチェンコCEOは、仮に輸出が再び停止に陥り、長期間続く事態になれば、国内の農家の半数以上が年内に経営に行き詰まる可能性があるという見方を示し、すでに業界全体が経済的に深刻な影響を受ける中、今後の情勢を注視していきたい考えを示しました。

プーチン大統領「核戦争に勝者なく 決して戦ってはならない」

ロシア大統領府は1日、NPTの再検討会議に合わせてプーチン大統領のメッセージを公開しました。

この中で、プーチン大統領は「ロシアは核拡散防止条約の締約国であり、条約の文言と精神を一貫して順守している。また、関連する兵器の削減や制限に関するアメリカとの2国間協定に基づく義務も完全に果たしている」と主張しています。

そのうえで「われわれは、核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならないと信じている」としています。

また「再検討会議がすべてのNPT締約国がその約束を厳格に順守する場となるとともに、核拡散防止体制の強化と世界の平和、安全、安定の確保に貢献する意思を確認する場になることを期待している」としています。

プーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻後、核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じただけでなく、4月には複数の核弾頭を搭載できる新型のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験を行うなど、核による威嚇を続けていますが、メッセージの中でこうした行為への言及はありませんでした。

ウクライナ大統領府長官「冬が来る前に事態を打開すべき」

ウクライナ大統領府のイエルマク長官は、7月31日、NHKの単独インタビューに応じました。

この中で、イエルマク長官は、ウクライナ軍が南部で反撃を強めていることについて「軍事作戦の詳細を明らかにすることはできないが、国の独立と主権において譲歩することは決してない。領土の一体性を100%回復することがゴールだ」と述べました。

ただ、イエルマク長官は「戦争が冬まで続けば、軍事作戦も領土の奪還もより困難になる。冬が来る前に事態を打開すべくあらゆる手段をとることが議論の中心になっている」と述べ、ウクライナ側の軍事活動にも支障をきたしかねない厳しい冬の到来を前に、東部や南部の領土奪還を目指して戦闘を終結させたいという考えを明らかにしました。

一方、イエルマク長官は、ウクライナ南部からの穀物の輸出再開について「期待が持てる」としました。

ただ、「ロシアは、食料だけではなくエネルギーなどあらゆる手段を武器にしている。各国は、この動きに対して責任ある行動をとるべきだ」と述べ、エネルギーなどの輸出をてこに制裁解除を求めるロシアの姿勢は変わらないとして欧米各国は、制裁強化など圧力を強めるべきだと強調しました。