末期がん患者がコロナに感染 搬送先見つからず自宅で死亡 東京
新型コロナウイルスの感染拡大で自宅療養者が急増する中、東京都内では末期がんの高齢患者がコロナに感染し、救急車を呼んだものの、搬送先が見つからず自宅で亡くなるケースがありました。診察した医師は「都内の病床は50%くらい空いているのに重症患者が入院できない原因はどこにあるのか今一度、見直してほしい」と訴えています。
東京 品川区の「ひなた在宅クリニック山王」は、大田区や品川区を中心に500人近くの患者への訪問診療を行っています。
7月28日、以前から末期の盲腸がんと診断され、自宅で療養をしていた83歳の男性の体調が悪化していると男性の妻からクリニックに連絡がありました。
午後6時ごろ医師が訪問して診察したところ、血液中の酸素の値は90%に下がり意識がもうろうとしている危険な状態で、抗原検査を行った結果、新型コロナに感染していることが確認されました。
医師が妻と相談をしたうえで、119番に電話し救急搬送を依頼したところ「救急要請が非常に多く、到着まで1時間近くかかるかもしれない」と言われました。
結局、救急隊は20分ほどで到着し、医師は引き継ぎを行って別の患者の往診に向かいました。
それからおよそ3時間後の午後10時前に医師が再び訪問したところ、まだ搬送ができない状態が続いていて、消防隊は「病院を100件ほど確認したが、搬送先が見つからない」と話していました。
男性は息苦しさを訴えていて、酸素の値も84%まで下がっていました。
医師は自宅でできるだけの治療を行うことを決め、酸素濃縮装置で酸素の投与を行いました。
午前0時前まで医師が立ち会いましたが、翌朝の午前4時ごろ妻から男性の呼吸が止まっていて反応がないとクリニックに連絡がありました。
午前9時ごろに医師が自宅に向かい男性が亡くなっていることを確認しました。
新型コロナの感染が確認されてから半日ほどのことでした。
医師は男性の妻に「病院に搬送できないのは僕らとしても力不足だった」と声をかけ、静かに手を合わせました。
死亡診断書の死因の欄には新型コロナウイルス感染症と書かれていました。