“捕虜収容施設攻撃”で欧米なども相次ぎロシアを非難

ウクライナ東部ドネツク州にあるウクライナ側の捕虜が収容されていた施設が攻撃を受け、50人以上が死亡したとされることについて、ウクライナ政府のほか、欧米なども「ロシアの責任を追及する」などと相次いで非難しています。

ウクライナ東部ドネツク州の、親ロシア派が支配する地域にあるオレニウカの捕虜の収容施設が29日、攻撃を受けました。

これについてロシア国防省は、アメリカから供与された高機動ロケット砲システム=ハイマースを使ったウクライナ側による攻撃だと主張しましたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は攻撃で50人以上が死亡したとしたうえで「意図的な、ロシアの戦争犯罪でありウクライナ人捕虜の大量殺人だ」と述べ、ロシア側による攻撃だと強く非難しました。

ウクライナ国防省の情報総局は、収容施設にいたのは東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から連れてこられた捕虜たちとみられ、攻撃を実行したのはロシアの民間軍事会社ワグネルの武装警備員によるものだったとの見方を示しました。

ウクライナの首都キーウでは30日、捕虜の家族などがデモを行い「ロシアはテロ国家だ」などと書かれたプラカードを掲げて抗議の声をあげました。

今回の攻撃についてEU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表がロシアを非難したのに続き、アメリカのブリンケン国務長官もウクライナのクレバ外相との電話会談で「残虐行為についてロシアの責任を追及していく」と強調しました。

また、ICRC=赤十字国際委員会も声明を発表し「すべての捕虜はどこで拘束されていようと、国際人道法のもとで保護されている」として、捕虜の収容施設への攻撃は国際人道法違反だと非難しました。

ウクライナ国防省の情報総局「ワグネルの攻撃 テロ行為だ」

ウクライナ国防省の情報総局は、東部ドネツク州でウクライナ側の捕虜が収容されていた施設が攻撃を受けたことについて、ロシアの民間軍事会社ワグネルの武装警備員によるものだったという見方を示し、非難しています。

ウクライナ国防省の情報総局によりますと、攻撃されたのは、捕虜の収容施設のなかでもウクライナ東部の要衝マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から連れてこられた捕虜を収容するため新たに作られた施設だったということです。

情報総局は、攻撃は、ワグネルの代表を務め、ロシアのプーチン大統領とも近い関係にあるとされるプリゴジン氏の個人的な指示を受けてワグネルの武装警備員が行ったもので、ロシア国防省と調整せずに実行した可能性があるとしています。

そして、情報総局は、攻撃を行った理由として、ウクライナ国民の多くが英雄とたたえるアゾフスターリ製鉄所で戦った兵士たちを殺害することで、社会に対して不安や緊張をもたらすためだと指摘したうえで「テロ行為だ」と強く非難しています。

捕虜の家族らがデモ「人間がすることとは思えない」

ウクライナ側の捕虜が収容されていた施設が攻撃を受けたことに対し、捕虜の家族などが30日、首都キーウの中心部でデモを行い、ロシアを強く非難しました。

家族などは「ロシアはテロ国家だ」とか「私たちは忘れない。私たちは許さない」と書かれたプラカードを掲げて抗議の声をあげました。

捕虜となった人の母親は「ロシアは私たちの子どもたちを殺しました。彼らはただ国を守っていただけで何の罪もありませんでした。人間がすることとは思えません。どうして丸腰の人を殺すことができるのでしょうか」と涙ぐみながら話していました。

米 国務長官 “ロシアの責任追及していく”と強調

アメリカ国務省によりますと、ウクライナ側の捕虜が収容されていた施設が攻撃を受け50人以上が死亡したことについて、ブリンケン国務長官は29日、ウクライナのクレバ外相との電話会談の中で哀悼の意を伝えました。

そのうえで、ブリンケン長官はウクライナの人たちへの残虐行為についてロシアの責任を追及していくと強調したということです。

ICRCが声明発表 “攻撃は国際人道法違反”

ウクライナ側の捕虜が収容されていた施設が攻撃を受けたことについて、ICRC=赤十字国際委員会は29日、声明を発表し「すべての捕虜はどこで拘束されていようと、国際人道法のもとで保護されている。彼らはもはや戦闘に加わっておらず、攻撃されるべきではない」と述べて捕虜の収容施設への攻撃は国際人道法違反だとして非難しました。

また「けが人が救命措置を受け、亡くなった人たちの遺体が尊厳のある形で処置されることを優先している」としたうえで、その場にいた人たちの状況の確認を試みているとしています。