日米経済版「2プラス2」初会合 中国やロシア念頭に行動計画

日米の外務、経済閣僚が経済分野の議論を行う経済版「2プラス2」の初会合が29日、ワシントンで開かれました。
会合では中国やロシアの脅威を念頭に具体的な行動計画が取りまとめられ、LNG=液化天然ガスの確保などエネルギー安全保障のほか、重要な先端技術やインフラの開発などで両国が協力していくことで一致しました。

日米両国による経済版の「2プラス2」の初会合には、日本から林外務大臣と萩生田経済産業大臣が、アメリカからはブリンケン国務長官とレモンド商務長官が出席し、会合の成果を共同声明としてとりまとめ、個別の課題ごとに行動計画を示しました。

それによりますと、経済安全保障に欠かせない戦略物資となっている半導体の安定供給に向けて、日米が協力して供給網の強化に取り組むことで一致しました。

またエネルギー安全保障をめぐってはロシアによる軍事侵攻を受けて、日本でLNGの調達への懸念が高まっていることから、アメリカによるシェールオイルやシェールガスの増産に期待するとしています。

さらに、中国やロシアの脅威を念頭に重要な先端技術や通信インフラの強化に関する議論も行われ、高速・大容量の通信規格「5G」のネットワーク拡大や海底ケーブルの整備について日米や友好国で協力していくことでも一致しました。

日米両国は、年末までに次官級の協議を開き、今後も年に1度、閣僚会合を開いて、進捗を確認することにしています。

萩生田経産相「一致したメッセージ発信する意義極めて大きい」

会合のあとに開かれた4人の閣僚による共同会見で、萩生田経済産業大臣は「外交・安全保障政策と経済政策はもはや一体不可分だ。そうした時代に日米の外務・経済の閣僚が、ひざ詰めで議論を行い、一致したメッセージを世界に発信する意義は極めて大きい」と述べました。

そのうえで、次世代半導体の開発に向けた研究開発拠点を新たに整備する方針を表明し、日米で共同開発を加速させることで一致したと明らかにしました。

これについて萩生田大臣は「海外の企業や研究機関にもオープンで、国際共同研究のハブとする考えだ。科学技術立国である日本の力を結集し、日米、さらには有志国の協力をリードしていく決意だ」と述べました。

そして「経済版2プラス2は『自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた羅針盤』で、この地域に平和と繁栄をもたらす基盤となるものだ。外交上の要求を通すために、経済的な力を国際ルールに反するような形で、一方的に行使するようなことはあってはならない」と述べ、経済版の2プラス2が果たすべき役割を強調しました。

林外相「日米の決意を力強く発信」

林外務大臣は、共同記者会見で「日米の4閣僚が、経済秩序の構築や経済安全保障などについて幅広く議論できた。時代の要請に応じたもので、変動する国際経済の中での日米同盟の適応力と、この分野における国際連携をリードしていく日米の決意を力強く発信するものになった」と述べました。

その上で、林大臣は「来年、日本が議長国を務めるG7や、アメリカが議長国を務めるAPECの場を含め、同志国とともに、さまざまな関連分野での議論を深めていきたい。今後も閣僚会合を定期的に開催していくことで一致した」と述べました。

一方、林大臣は「私から両長官に、インド太平洋地域の経済秩序に、より積極的な役割を果たす観点から、IPEFへの日本の支持と協力に加え、アメリカのTPPへの早期復帰への強い期待を伝えた」と述べました。

米国務長官「われわれが直面するあらゆる課題を網羅」

会談後の共同記者会見でアメリカのブリンケン国務長官は「日米同盟というものが今ほど重要な時期はない。日本とアメリカの関係は安全保障や人権の擁護、自由で開かれたインド太平洋の推進など、われわれが直面するあらゆる課題を網羅している」として、幅広い分野で日米が協力していくことの重要性が増していると述べました。
そして「経済安全保障は、安全保障全体にとって非常に重要な要素だということを確認した。これこそが両国の関係の重要性を強調するものだ」と述べるとともに「中国の威圧的な経済慣行が、ルールに基づく開かれた国際経済秩序にいかに反しているかについて取り上げた」として、中国に対抗していく上でも日米両国が経済安全保障における連携強化を進めていくことの意義を強調しました。また「来年また4人で会うことで合意した」と述べて来年も経済版の「2プラス2」を開催することで合意したと明らかにしました。

一方、レモンド商務長官は、議題となった半導体の安定供給について「半導体は、われわれの経済安全保障や国家安全保障の要だ。日本とアメリカが特に先端半導体の分野でどうやって協力していくかということについて、すばらしい議論ができた」と述べて評価しました。

今回の会合でまとめた共同声明の主なポイント

国際情勢に対する現状認識

▽新型コロナウイルスの感染拡大が供給網の混乱や物価の高騰などを引き起こし、ロシアによるウクライナ侵攻が状況をさらに悪化させて世界のエネルギーと食料の安全保障を損なったとする認識を共有するとともに、ロシアの不当な侵略を強く非難する。

▽感染拡大が経済社会や生活を大きく変え、新たな機会と課題を提示している。

人工知能や量子技術などの技術は変革をもたらす可能性もある一方で、こうした技術が悪用された場合経済にリスクをもたらすと指摘した。

日米協力の方向性

▽日米はインド太平洋地域などで民主主義の価値観を堅持し、経済格差を縮小して人権を保護するような開かれた持続可能な経済成長を支持する。

新たな経済連携、IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組みなどを通じてこうしたビジョンを推進する。

▽2大民主主義経済としての日米両国は民主主義が繁栄と安定、安全保障のもっとも良いモデルだという認識を共有した。

協力分野の重要性

▽経済安全保障や、ルールに基づく国際経済秩序に対する脅威に対抗することを約束するとともに、半導体など重要な技術のサプライチェーンの強じん化と多様化に焦点をあてた。

▽経済的威圧や経済的な影響力の悪用について深刻な懸念と反対を表明した。

今後の展望

▽経済安全保障は、国の安全保障にとって不可欠で、経済政策と外交政策は深く結びついており一体的に取り組むことが必要だと強調した。

▽来年、アメリカで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議や日本でのG7=主要7か国の一連の会合での優先的な経済課題の解決に向けた協力を確認した。

個別の課題ごとの具体的な「行動計画」の主なポイント

ルールに基づく経済秩序を通じた平和と繁栄の実現

▽日米両国は、新たな経済連携、IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組みなどを通じてインド太平洋地域での協力や安定、繁栄、発展それに平和をさらに強化する。

▽ロシアによるウクライナ侵略がエネルギーや食料の市場に及ぼす影響を緩和するために協力する。

▽両国は、脱炭素化に向けた方向性を維持し長期的なエネルギー安全保障や2050年までの温室効果ガス排出ゼロの達成に向けて再生可能エネルギーや原子力、アンモニア、水素、二酸化炭素の回収や貯留などの役割を認識する。

▽日米でエネルギー部門への投資を強化し、現在の危機に対応するために、LNG=液化天然ガスを含めた短期的なエネルギー資源を安定的に確保する必要性を認識している。

▽食料安全保障については、農業サプライチェーンの開放性を支持し、食料システム、食料の供給網の強じん性を高めるとともに肥料などが調達しやすくする取り組みをすべての国に求める。

▽民間企業が人権を守る環境を醸成するためビジネスと人権に関して両国で協力して取り組む。

経済的威圧・不透明な開発金融への対抗

▽日米両国は「経済的威圧」に対処し、市場原理に沿っていない政策や慣行に効果的に対抗するとともにWTO=世界貿易機関やG7、G20などの多国間の枠組みで国際社会にメッセージを発信するために同志国と協調する。

▽日米両国は公正で透明性のある開発金融を促進するために協力する。

スリランカのようなぜい弱な国の債務処理においては債権者の間の公正な負担分担を確保するため債権者の調整が果たす重要な役割を強調する。

重要新興技術・基幹インフラの強化

▽日米両国は2030年までに第5世代の通信規格5Gの市場で「オープンRAN」という新しいネットワークの仕組みについて市場シェアを大幅に拡大するため次世代の情報通信ネットワークのための安全な技術開発を支援する。

▽悪意がある者による先端技術の不適切な流出に対応するため機動的な輸出管理を日米で強化するための取り組みを続ける。

サプライチェーンの強じん化

▽日米両国は、半導体や電池、重要な鉱物資源など戦略物資の供給網を強じんなものとするための取り組みを促す。

▽この目的に向けて両国は、岸田総理大臣とバイデン大統領が発表した次世代の半導体の開発について、これを検討する合同タスクフォースのメカニズムを通じて協力する。

▽日本企業がアメリカでの電池製造への投資を増やし、供給網の強化に貢献していることや両国が強力なバッテリーサプライチェーンを構築することの重要性を確認する。

▽レアアースなど重要な鉱物資源のサプライチェーンを構築するため、財政面などの支援が重要だと強調した。

ほかのパートナーとも緊密に協力し、民間セクターが関与することが重要だと指摘した。

林外相が現地で講演「日米同盟の抑止力と対処力の強化急務」

また林外務大臣は、日本時間の30日早朝、アメリカのシンクタンクのCSIS=戦略国際問題研究所の主催の講演会で英語でスピーチしました。

この中で林大臣は、ロシアのウクライナ侵攻について「自由で開かれた国際秩序を根底から揺るがし、冷戦後、われわれが享受してきた平和と繁栄を崩壊させる暴挙だ。ウクライナで起きていることをインド太平洋を含め、ほかの場所で決して許してはならない」と述べました。

そして中国を念頭に、インド太平洋地域の安全保障環境について「『法の支配』より『力の論理』のほうがいっそう顕著になり、日米両国にとって、戦略バランスは厳しいものになりつつある。日米同盟の抑止力と対処力の強化が急務で、日本がより大きな役割を果たしていく考えだ」と述べました。