新型コロナ 子どものワクチン接種 打つ・打たない どう考える

いま、新型コロナウイルスのオミクロン株の1つで、広がりやすい「BA.5」というウイルスが広がっていて、子どもの感染も増えています。
5歳から11歳の子どもでワクチンを2回打った人は、6人に1人ほどになっています。子どもはコロナにかかっても重症になる人は少ないですが、病院やクリニックの医師からは最近、高熱の子どもが前より多くなっているという声も聞かれます。

ワクチンを打ったほうがいいか、打たなくてもいいか。
子どもと保護者が一緒に考えられるよう、新しいデータも含めてまとめました。
(2022年7月25日現在)

子どものワクチンってどんなもの?

現在、日本で使われている5歳から11歳の子どもに打つコロナのワクチンは、アメリカの薬の会社ファイザーが作ったワクチンで、3週間あけて2回打ちます。

子どものワクチンの中には、体で働く成分が大人のワクチンの3分の1の量、含まれています。

ワクチンが効くのは、外から入ってきたウイルスや細菌と戦ってやっつける「免疫」と呼ばれるしくみが働くためです。
くわしく言うと、コロナのワクチンには、ウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」というトゲトゲの部分の設計図となる「メッセンジャーRNA」という物質が入っています。

ワクチンを注射すると、この設計図をもとに体の中で「スパイクたんぱく質」が作られます。

「スパイクたんぱく質」はウイルスの部品です。

そして、これを目印に免疫の仕組みが働いて、ウイルスを攻撃する武器となる「抗体」という物質が作られます。

こうすることで、本当に新型コロナウイルスが体の中に入ってきたときに戦えるようになるのです。
ワクチンを打っていなくて感染したときには、「免疫」は新型コロナウイルスの形に合った「抗体」を作って戦おうとします。

でも、十分な量の「抗体」を作るのが間に合わなかったり、敵が多すぎて期待したほど戦えなかったりします。

このため、せきやだるくなるなどといった症状が出たり、場合によっては重症になったりします。
ワクチンを打つと、新型コロナと戦うときの武器、「抗体」をあらかじめ作っておけるようになります。

本当にウイルスがやってきたときに戦えるように準備することで、感染したり、症状が出たり、重症になったりするのを抑えることができるようになります。

どれくらいの子どもがワクチンを打っているの?

日本では、5歳から11歳までの子どもへのコロナのワクチンの接種は、2022年2月から始まりました。
2022年7月24日の時点で、ワクチンを1回打った5歳から11歳の子どもは143万人余り。

5歳から11歳の子どもは全国でおよそ741万人いるので、19.3%、5人に1人ほどです。

2回ワクチンを打った人はおよそ133万人いて、17.9%。6人に1人ほどです。
(首相官邸ウェブサイトより)

海外では、日本よりも早く子どもへのワクチンが始まった国があります。

2回ワクチンを打った人は、たとえば、
▽アメリカでは7月12日の時点で30%、10人に3人、
▽カナダでは7月17日の時点で42.4%、10人に4人となっています。

打ったほうがいいの? 打たなくてもいいの?

事情は人それぞれ、家族によっても考え方は違います。

それでは、どんなことを考えて、ワクチンを打つか打たないか決めたらいいのでしょうか。

大切なのは「ワクチンを打つことで起きるであろうよいこと=利益」と、「ワクチンを打つことで起きるかもしれない悪いこと=リスク」を比べて、どちらが大きいか考えてみるということです。
ワクチンを打つ利益には、たとえば、
▽自分自身がコロナに感染して重症になることを防げること、
▽周りの人に感染を広げないこと、
▽学校などで安心して過ごすことができる、といったことがあります。

ワクチンを打つことで起きるかもしれないリスクは、
▽打ったあとに望まない体の反応、副反応が起きることがあります。
(アメリカ・CDC=疾病対策センターの資料より)

また、子どももコロナのワクチンは無料で受けられますが、はしかやみずぼうそう、日本脳炎などのワクチンのように、子どもが受けるよう保護者が努めなければいけないものではありません。

ワクチンの利益とリスクを比べて打つかどうか、家庭でも一緒によく考えて、打ったほうがいいか、打たなくてもいいか、考えることが大切です。

よく考えるために新しいものも含めて、詳しいデータを示します。

どれくらいの子どもが感染しているの?

「BA.5」というウイルスが広がってから、新型コロナウイルスに感染した人は、一気に増えています。

7月23日には1日で20万人を超え、感染した人は毎日のように「これまでで最も多い」状態になっています。

7月19日までの1週間では、感染した人は赤ちゃんから大人まで合わせて全国でおよそ59万人いました。

このうち10歳未満の子どもはおよそ8万3000人で、およそ14%。感染した人のうち7人に1人ほどとなっています。
(厚生労働省データより)

子どもは感染するとどうなるの?

コロナの感染が始まってからの2年余りで、10歳未満の子どもはおよそ146万2000人が感染しました。

このうち亡くなった人は7人です。

また、7月19日までの1週間で重症になっている子どもの数は4人でした。

コロナに感染しても、子どもは軽症の人がほとんどです。

ただ、軽症といっても、高い熱が出たり、はいたり、のどの奥がはれて呼吸が苦しくなったりすることもあります。

さらに、いま、「BA.5」と呼ばれるタイプのウイルスが広がっていて、小児科の医師からは「これまでよりも高い熱が出る子どもが増えたように思う」という意見が出ています。

重症化する子どもが少ないということは変わらないのですが、高い熱が出ると、熱性けいれんや脳症になるおそれも出てきます。

小児科の医師などのグループ(日本小児科学会)は、もともと心臓や肺などに病気がある子どもでは重症になるリスクが上がるとしています。

また、症状が出なくても、治ったあとに、せきや息苦しさなどの後遺症が続くこともあります。

ワクチンの効果は?何を防ぐことができるの?

ファイザーは2021年に、実際に5歳から11歳の子どもたちにワクチンを打って調べています。

2回打って7日以上たったあとでは、コロナで症状が出るのを防ぐ効果は90.7%でした。

ただ、いま感染が広がっているオミクロン株というタイプの新型コロナウイルスは、ワクチンが前よりも効きにくいことが分かっています。

アメリカの研究者が発表した論文では、5歳から11歳の子どもがワクチンを打つと、オミクロン株でも、重症になるのを防ぐ効果は68%に上ることがわかったとしています。重症になった子どものほとんどはワクチンを打っていなかったとしています。
(アメリカCDCなどが3月30日に医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表)

また、シンガポールで行われた研究では、5歳から11歳の子どもがワクチンを2回打つと、オミクロン株でも、感染を防ぐ効果は36.8%、入院になるのを防ぐ効果は82.7%に上るということです。ワクチンの接種が1回だと、感染を防ぐ効果は13.6%、入院になるのを防ぐ効果は42.3%でした。
(シンガポール大学などが7月20日に医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表)

ワクチンを打っても感染を完全に防ぐことは難しいですが、入院になるような重い症状になることを防ぐ効果はあります。

ワクチンを打ったあとの副反応は?

ワクチンを打ったあとで副反応が出ることがあります。

体の「免疫」がウイルスがどのようなものか覚えるときに、熱が出たり、ワクチンを打った部分が痛くなったりします。

具体的にどのような副反応が出るのでしょうか。
ファイザーが調べたところ、
▽注射を打った部分の痛みが出たのは、1回目の注射で74%、10人に7人ほどでした。2回目の注射で71%、こちらも10人に7人ほどでした。

▽体がだるく感じた人は、1回目の注射で34%、10人に3人ほど。2回目の注射で39%、10人に4人くらいでした。

▽38度以上の熱が出たのは、1回目の注射で3%、100人に3人ほどでした。2回目の注射で7%、100人に7人ほどでした。
(ファイザーが医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文より)

5歳から11歳では大人に比べると、副反応が出る割合は低いということです。

ワクチンを打った場所が痛くなったり、うでを上げにくくなったりする症状は、ほとんどの人で出ますが、1日から2日ほどでおさまるということです。

重い副反応が出ることはないの?

まれに、ワクチンを打ったあとに心臓の筋肉がはれたりして動きにくくなる「心筋炎」や「心膜炎」になる人がいることが分かっています。

日本でも、2022年2月から6月までの間に、5歳から11歳向けのワクチンを打った人のうち、心筋炎や心膜炎の疑いがあると報告された人の数がまとめられています。

1回目の注射のあと、心筋炎の疑いがあった人は3人、心膜炎の疑いがあった人は2人、2回目の注射のあと、心筋炎の疑いがあった人は3人、心膜炎の疑いがあった人はいませんでした。

この時点で、1回目の注射はおよそ132万回、2回目の注射はおよそ115万回行われていて、心筋炎や心膜炎が疑いがあった割合は、100万回に2から3人程度だということです。
(厚生労働省の副反応検討部会より)
アメリカでは、日本よりも先に子どもたちにワクチンを打っているので、副反応も多く調べています。

5歳から11歳で「心筋炎」になった人は、男の子では、1回目の注射では100万回当たり0回、2回目の注射では4.3回でした。

女の子では、1回目の注射ではデータが少なすぎてよく分かりませんでしたが、2回目の注射では100万回当たり2回でした。いずれも軽症で、回復したということです。

また、アメリカからの報告では、ワクチンを打った後に亡くなった子どもは2人いましたが、2人とももともと病気があり、ワクチンを打つ前から健康状態が悪かったということです。ワクチンを打つことによって亡くなったということを示すデータはないとしています。
(CDCの説明資料より)

コロナのワクチンは新しいから怖いの?

コロナのワクチンは「メッセンジャーRNA」を使っている、世界で初めての新しい技術のワクチンです。

「メッセンジャーRNA」は病気を治すのに使おうと、30年以上、研究されてきています。

「メッセンジャーRNA」はすぐに壊れる物質で、ワクチンを打ってから、数日で分解されてなくなってしまいます。

厚生労働省も体の中に残って悪い影響が出ることはないとしています。

また、何十年もたったあとに、ワクチンが原因で病気になることは考えにくいとされています。

一方、「メッセンジャーRNAワクチン」以外にも、ウイルスの成分を人工的に作って注射する「組み換えたんぱく質ワクチン」や、本物のウイルスを加工して毒性をなくして注射する「不活化ワクチン」など、ほかのタイプのワクチンを開発している国内の企業もあります。

こうした技術は以前からワクチンに使われていて、安心だという声もあります。どう考えればよいか、小児科の医師で、ワクチンの研究をしている北里大学の中山哲夫 特任教授は「科学的には、メッセンジャーRNAワクチンは、基礎的な免疫をつけるために、効果が期待できるワクチンです。従来型のワクチンを打ちたいという気持ちも理解できますが、まだ開発が進んでいる段階で、子どものワクチンとして実用化されるのがいつになるのか、はっきり分かりません。待つのが果たしていいのかどうか考える必要があります」と話しています。

専門家はどう見ているの?

ワクチンを打ったほうがいいのか、打たなくてもいいのか、専門家はどう考えているのでしょうか。

小児科の医師で作るグループ(日本小児科医会)は、6月22日、子どものワクチンについて、
▽ワクチンを接種したあとの発熱や痛みは、大人と違って、とても軽いことが分かった、
▽ワクチンを接種して重症化を防ぐことは子どもたちにも必要だなどとして、「子どもたちにもぜひワクチンを受けさせてあげてください」というメッセージを出しました。
また、北里大学の中山特任教授は、これまでとは子どもの感染状況が変わってきていることも考えて判断してほしいと話しています。

「これまでは感染してもそれほど高い熱が出ず、ぐったりもしていない子どもが多かったですが、いまは、高い熱が出る子どもが多く、ぐったりしてつらそうにしている子どもが増えた印象です。高い熱が出ると、熱性けいれんや脳症につながるおそれもあります。熱が出ることをどう考えるかはそれぞれの判断でもありますが、子どもにとっては大変です。さらに、治ったあとも後遺症が出ることや『MIS-C(ミスシー)』といってさまざまな臓器に炎症が出ることもあります。ワクチンを接種することで予防できるのであれば、予防したほうがいいのではないかと思います。新型コロナウイルスが広がる前も、みんなが健康な学校生活を送ることができたのは、はしかや風疹などさまざまなワクチンを接種して、ワクチンで守られていたからです。新型コロナウイルスは次々に形が変わっていて、いま広がっている『BA.5』ではない、新たなタイプの『変異ウイルス』も出てくると思われます。今のワクチンはオミクロン株に対して、そこまで効果は高くないと言われていますが、重症化を防ぐ効果はありますし、今後の変異ウイルスに対する基礎的な免疫にもなります。そういったことも踏まえて、ワクチンの接種を考えてみたほうがいいのではないでしょうか」。