News Up

“静かに”溺れる?夏休みの水遊びに潜むリスク

人は溺れる時、静かなことが多いって知ってますか?
特に子どもは注意が必要です。
最近、ある漫画をきっかけに注目されています。

#溺水反応 #スパイファミリー

漫画が原作で、テレビアニメとしても人気の「SPY×FAMILY」。
すご腕のスパイ(ロイド)と殺し屋(ヨル)、それに超能力を持つ少女(アーニャ)が互いの秘密を隠して普通の家族を演じるというコメディーです。
ことし6月、この漫画のタイトルと一緒にSNSで拡散したのが「#溺水反応」です。

きっかけは第3巻に出てくるワンシーン。
プールに落ちてしまった少年が声をあげることもなく水の中に沈んでいき、近くにいる大人たちは誰も気付きません。

主人公たちが気付いて少年を助けたあと、これは「溺水反応」と呼ばれる現象で、子どもは溺れる時に意外と静かだと指摘するのです。
このシーンは、編集担当者が子育てについて調べていたとき、たまたまこうした現象があることを知り、著者の遠藤達哉さんに注意喚起のためにも描いてほしいと熱弁したのがきっかけだったそうです。

静かに溺れるって、どういうこと?

子どもの事故に詳しい専門家に、教えてもらいました。
佐久医療センター小児科 坂本昌彦医師
「映画などでは溺れている人が『助けて』と叫んでバシャバシャと音を立てて、周囲の人が気付くというイメージがあると思いますが、実際は、溺れている人は呼吸をするのに精いっぱいで声を出して助けを求める余裕はなくなることが、多くの事例からわかっています。
特に子どもは、溺れていることに子ども自身が気付いていない可能性がある。これにアメリカの研究者が気付いて啓発を始めました」

川で“すっと消えた” その時…

「息子が川へ向かって、そのまま静かに沈んだんです。すっと消えた」

静かに溺れた子どもを2度、助けたという女性がいます。
1度目は4年ほど前の8月、当時3歳の息子でした。
実際の川
いつも川や海で遊ぶときは必ずライフジャケットを着用させていましたが、このときは大人が遊び道具などの荷物をどこに置こうかと話し合っている間に、川に入ってしまったといいます。

看護師の女性。静かに溺れるという話は知識としてはあったため、すぐに川に入り、息子を引き上げたそうです。
溺れた子どもを助けた女性
「焦りましたし、怖かったです。本当に音もしない。バチャバチャと水音を立ててもがく訳でもなく、水面が波立つこともありませんでした。見ていなければ気付かなかったと思います」

「水も飲んでおらず、無事でした。本人は泣いていましたが、直後に遊ぶ!と言い出したほどで今となっては覚えていないそうです」
その後、水遊びの危険性について何度も話してきかせ、必ずライフジャケットを着てから水に入ることを約束したそうです。

海から目だけ出していた男の子

2度目は1年後の夏、友人の家族と海に行った時でした。
子どもたちが大人と一緒に海に入って遊んでいる様子をビーチから眺めていると、友人の子どもが水面から目だけを出していることに気付いたといいます。
溺れた子どもを助けた女性
「保育園の年中さんくらいの男の子でした。ただ、じっとこっちを見ているだけで、手を上げたり水面が動いたりもしていない。
大人の胸あたりまで水深がある場所で、いっこうに鼻や口が水の上に出てこなかった」
実は、男の子はライフジャケットに釣り針が引っかかり、それを取るため一時的に脱いでいたそうです。大人たちが気付かないうちに海に戻っていました。

そばにいた大人やほかの子どもたちは異変に気付いていませんでしたが、女性は「溺れているかもしれない」と直感し、海に入って助けました。

岸に上げてみると、男の子は海水を飲んでいて顔色が悪く、ドクターヘリで病院に運ばれることに。幸い、ひと晩治療を受けて体調は回復したそうです。
溺れた子どもを助けた女性
「バチャバチャと音を立てて溺れると思っている人は多いと思います。でも、実際には本当に静かに沈むんだということを知ってほしい。
この時期は事故も多いので、未然に防ぐための参考にしてもらえたら」

声をあげたのに 気付かれなかったケースも

21歳の女性は、10歳のころ、姉やその友人家族と一緒に行った市民プールで溺れました。
足の付かない水深の深いプールで初めて泳いだとき、途中から泳げなくなり、パニックになりました。
女性
「プールの底を蹴って水面にあがり、息継ぎをしてから『助けて』と叫ぼうとすると沈んでしまうという繰り返しでした。1~2メートル先には姉がいて、プールサイドには監視員も2人くらいはいたはずなのに、まったく気付いてくれませんでした」
付き添いで来ていた大人に引き上げられ、大事には至りませんでしたが、大量の水を飲み、ひどい頭痛がしたそうです。
女性
「こんなに必死に叫んでいるはずなのに、どうして誰も気付かないんだろうと思っていました。幼いながらも、ここで溺れて死ぬのかなと思い怖かったです」
溺れている人に気付くのは、実は難しいと専門家は話します。
水難学会 斎藤秀俊会長
「叫ぶと肺の空気が抜けることによって浮力が失われ、体が沈みます。すると水を飲んでしまって声にならず、気付いてもらえない。また、プールサイドなど上から見ると、水面が揺れて顔がゆがみ、笑っているように見えることもあるので、ふざけて遊んでいると思われることもあります。
普通は見ていても瞬時にわからないものですが、例えばプールでは水中で顔を水面に向けていたら溺れている可能性があります」

海や川だけではない 気をつけたい場所

最後に、坂本昌彦医師が、気をつけてほしい場所を教えてくれました。
日本の家庭で注意が必要なのは「風呂場」だそうです。
佐久医療センター小児科 坂本医師
「子どもは水深10センチで溺れてしまうリスクがあると言われていて、6分以上溺れると亡くなるか、脳に後遺症が残るリスクが出ます。日本は浴槽につかる文化があるので、家庭内ではお風呂での溺水が多く、溺れて亡くなった0歳児から2歳までの子どものうち、90%近くが家庭内の浴槽水です」

溺水事故を防ぐために大人が心がけたいこと

坂本医師
「目を離さないでと言っても離れてしまうこともありますので、すぐ子どもに腕が届く範囲にいることを心がけてほしい。また、自分の髪を洗うときは子どもを浴槽から出す、お風呂を使っていないときは浴槽のお湯を抜いておくなど、溺れるリスクを減らす意識も大切です」
溺れてしまったときにはとにかく一刻も早く水から引き上げること。
そして速やかに蘇生を行ってほしいと話します。
水から引き上げたあとの手順
▼意識があるか確認
▼意識がなければ人を呼んで救急隊に連絡
▼心臓マッサージと人工呼吸を絶え間なく行う
坂本医師
「日頃から心肺蘇生のトレーニングを受けておくことがとても大事です。消防署などの救命講習やインターネットの動画などもあります。いざという時にパッと行動に移れるように、知っておくべきだと思います」
取材:記者 柳澤あゆみ 西山桃子/ディレクター 諸星佳織

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。