【詳しく】「サル痘」WHOが緊急事態を宣言 特徴や感染経路は?

欧米などを中心に報告が相次ぐ「サル痘」についてWHO=世界保健機関は、日本時間の7月23日夜に記者会見し、感染の拡大が続いているとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。WHOは現在、新型コロナウイルスとポリオの感染拡大について緊急事態の宣言を継続していて「サル痘」は3つ目となります。

「サル痘」の特徴や感染経路などについて、これまでに分かっている情報をまとめました。

発疹が特徴的な「サル痘」 今回の感染では

サル痘は天然痘ウイルスに似た「サル痘ウイルス」に感染することで起きる病気です。

国立感染症研究所やWHOなどによりますと、サル痘のウイルスの潜伏期間は通常7日から14日間で、潜伏期間のあと発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日から5日間続き、その後、発疹が出るということです。発疹は典型的には顔面から始まって体じゅうに広がります。徐々に膨らんで水疱(水ぶくれ)になり、うみが出てかさぶたとなり発症から2~4週間で治癒します。

多くの場合は軽症で自然に回復しますが肺炎や敗血症などの合併症を引き起こすことがあり、年齢が低いほど重症化する可能性があるとされています。
ただ今回広がっているサル痘では様相が異なっています。

WHOが6月の緊急委員会のあとで出した資料によりますと、今回の感染拡大では発疹が性器や肛門の周辺など一部にとどまっているケースや、発熱などの前に発疹が出るケースが特徴的だということです。入院したケースはほとんどないとしています。

すべての人に免疫がなかった場合などに1人の患者から何人の人に感染するかを示す「基本再生産数」は0.8とされ、2を超えるとされる新型コロナウイルスなどと比べてそれほど感染力が強いわけではありません。

またオランダでの分析に基づくと感染から発症するまでの潜伏期間は平均で8.5日、イギリスでの分析によると感染した人1人が発症し、次に感染した人が発症するまでの発症間隔は平均で9.8日だと推定されているということです。

さらに医療従事者の感染はこれまでに10例報告されているものの、少なくとも9例は業務に関わる感染ではなかったということです。(2022年7月4日時点)

感染経路は?

サル痘は一般にネズミやリスなど感染した動物にかまれたり血液や体液、発疹に触れたりすることで感染するとされています。また感染した人の発疹や体液、かさぶた、患者が使った寝具や衣類などに接触したり、近い距離で飛まつを浴びたりすることで誰もが感染する可能性があると指摘されています。

WHOは「密接な接触によって誰もが感染する可能性がある」としたうえで、これまでの調査で確認された患者の多くは男性どうしでの性的な接触があったとしています。

一部の専門家はヨーロッパ各地で開かれた大規模なイベントを介して感染が広がった可能性を示唆しています。

一方で感染経路が特定できない、いわゆる「市中感染」とみられる患者や女性の患者も確認されているとして、特定のグループの人々の病気としてとらえずに警戒すべきだとしています。

そしてサル痘にかかった人と密接に接触したことのある人は誰もが感染するリスクがあるとして「病気を理由に不当な扱いを受ける人がいてはならない」としています。

WHOは症状が出ている人は検査を受け、他の人との密接な接触を避けて医療機関にかかるよう呼びかけています。

ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターは「可能性は非常に低い」としたうえで、ヒトからヒトへの感染が続けばヒトからいずれ動物に感染、動物の間でも広がってヨーロッパに定着する可能性を指摘しています。

“サル痘” 名前の由来とこれまでの感染

サル痘は1958年、ポリオワクチンを製造するために世界各国から霊長類が集められた施設にいたカニクイザルで最初に発見されたことから名付けられました。

しかし通常の状態でこのウイルスを持っている自然宿主はサルではなく、げっ歯類だと考えられています。WHOは現在「サル痘」という名称について変更を検討しているということです。

人への感染は1970年に現在のコンゴ民主共和国で最初に確認され、アフリカでは現在も感染が頻繁に起きています。ナイジェリアなど西アフリカとコンゴ民主共和国など中央アフリカでは別々の系統のウイルスが広がっているとされています。

中央アフリカでみられるサル痘ウイルスのほうが重症化しやすく、致死率は数%から10%程度に上ると報告されています。
一方、現在ヨーロッパなど各国で広がっているのは比較的病原性が低い、西アフリカ系統のウイルスだとされています。

サル痘は2003年にはアフリカからペットとして輸入された小動物を通じてアメリカにウイルスが持ち込まれ71人が感染しました。

近年アフリカ以外で確認されたケースはすべてナイジェリアからの帰国者が発症するパターンで、年間に数人程度確認されていました。アフリカ以外では死亡した人は報告されていません。

ワクチン・治療薬は?

サル痘に対してはかつて接種が行われた天然痘のワクチンが高い効果があり、WHOによりますと、サル痘の感染を防ぐ効果は85%に達するということです。

ただ天然痘はワクチン接種が積極的に行われた結果、1980年に地球上から根絶されていることもあり日本国内で最後に接種が行われたのは1976年で、その時に子どもだった今の40代後半以上の世代は接種を受けていて、サル痘に対する免疫がある可能性があります。

日本には効果が高く副反応も小さいとされる天然痘のワクチンがあり、テロ対策の一環として国家備蓄されています。

しかしサル痘のワクチンとしては承認されておらず、厚生労働省は薬の安全性や有効性を調べる「特定臨床研究」として東京の国立国際医療研究センター病院で濃厚接触した患者の家族などを対象に接種できる体制を整えました。
6月29日に開かれた厚生労働省の感染症の専門家でつくる部会では、接種の対象を
▽患者の入院を担当する医師や看護師などの医療従事者
▽患者を搬送する保健所の職員
▽検査を行う地方衛生研究所の担当者などに
広げることも検討されていると報告されています。

アメリカやカナダ、イギリスなどではサル痘の感染対策として天然痘のワクチンの接種が始まっています。

当初は医療従事者や患者と直接接触した人が接種の対象となっていましたが、イギリスやアメリカでは対象を拡大し、男性どうしで性的な接触があった人や不特定多数の人と性行為をした人なども対象になっています。しかしワクチンの供給量が少ないため、ワクチンが足りなくなる事態も起きています。
6月23日から対象を拡大した接種が始まったニューヨークでは1000回分のワクチンの予約が、その日のうちにいっぱいになったということです。

アメリカ政府は6月28日、数週間以内におよそ30万回分のワクチンを全米の医療機関に供給すると発表しました。EUも11万回分のワクチンを新たに購入することを明らかにするなど、ワクチン確保の動きも加速しています。

治療薬について国内では臨床研究での投与が検討されています。用いられるのはアメリカの製薬会社が天然痘の治療薬として開発した「テコビリマット」という飲み薬で、ヨーロッパではサル痘の抗ウイルス薬として承認されています。

国立国際医療研究センター病院で「特定臨床研究」として患者に投与できるようになっているほか、関東以外の大都市圏の医療機関にも導入することが検討されています。ただWHOなどによりますと、薬の流通量などにかぎりがあり、多くの場合は対症療法で対応しています。(2022年7月4日時点)