【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(24日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が始まって24日で5か月となります。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる24日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア国防省「ウクライナ艦艇と武器保管庫を破壊した」

ウクライナ南部オデーサの港湾施設がミサイル攻撃を受けたことに関連してロシア国防省は24日「港の敷地内で、ウクライナ軍の艦艇と、アメリカが供与した対艦ミサイル『ハープーン』の保管庫をミサイルで破壊した」と主張しました。

プーチン大統領の健康不安説 英軍参謀総長が否定

イギリス軍の制服組トップのラダキン参謀総長は、今月17日のBBCのテレビ番組で、一部の欧米メディアがロシアのプーチン大統領について健康不安を指摘する見方を伝えていることに関連して「希望的観測だ」と否定しました。

そのうえでラダキン参謀総長は、「ロシアは比較的安定した政権であり、プーチン大統領は反対勢力を一掃することができる。上層部は、プーチン大統領にたてつく野心は持っていない」と述べ、強権的な体制が継続するロシアは、イギリスにとって脅威であり続けると強調しました。

ロシア軍の戦争犯罪 捜査続く

ウクライナでは、ロシア軍の戦争犯罪を追及するため検察や警察が捜査を続けています。検察によりますと、ロシアによる戦争犯罪とみられるケースは、今月22日の時点で2万4000件以上に上るということです。
ウクライナ当局が行っている捜査を現地で支援したオランダ軍警察の捜査チームの責任者、ムールマン副司令官が、NHKの取材に応じました。この捜査チームは、ことし5月からおよそ3週間、ウクライナの首都キーウ近郊のボロジャンカなどで、住民から証言を得たり、ウクライナ当局がロシア軍の捕虜などから押収した携帯電話の通信記録や画像を調べるなど、証拠の収集を行ったりしました。
捜査の状況について、ムールマン副司令官は「ウクライナの司法システムは機能してはいるが、捜査すべき事案の数が膨大なのでまだまだ人手が必要だ」と訴えました。そして、戦争が続くなかで、すでに戦争犯罪をめぐる捜査が行われている現状について「これまでは事案が起きて何年もたち、戦争が終わってから捜査が始まることが多かったが 今回は事案が起きて数週間で捜査ができ、証拠も多く残されている」と述べ捜査に有利だという認識を示しました。
ただ、ムールマン副司令官は「通常の犯罪現場は封鎖されるが、今回は、遺体が収容されたり、捜査が行われる前に周辺がきれいにされたりしてその過程で現場に残されたDNAが混ざり合う可能性なども考慮しなくてはならない。どうすれば信頼に足る証拠を集められるかが課題だ」と指摘しました。
ムールマン副司令官は、より詳細な捜査を行うため今後もほかの国から捜査チームが派遣されることに期待を示したうえで「より多くの人員が派遣されるようになれば、より統率のとれた連携が必要になる」と述べ、戦争犯罪を1件でも多く立件していくうえでウクライナと各国当局の連携が鍵になるという認識を示しました。

英ジョンソン首相 ウクライナ軍兵士を激励

イギリスはこれまでウクライナに対して多連装ロケットシステムなどの兵器の供与に加え、ウクライナ軍の兵士をイギリスに招いて訓練するなど積極的な支援を行っています。こうした中、イギリスの首相官邸は23日、ジョンソン首相がイングランド北部にある訓練場を迷彩服姿で視察し、ウクライナ軍の兵士たちを激励する映像を公開しました。ジョンソン首相は視察中、みずからも対戦車ミサイルについての説明を受けたり、訓練用の手りゅう弾を実際に投げたりしていました。

ジョンソン首相は視察のあと、「今後4か月でおよそ1万人のウクライナの兵士を訓練したい」と述べました。

ジョンソン首相は与党・保守党の党首を辞任することを表明していて、ことし9月に新たな党首が決まりしだい首相の座からも退くことになっていますが、ジョンソン首相としてはみずからの退陣後も、イギリスがウクライナを積極的に支援しつづけることの重要性を強調した形です。

アメリカ ブリンケン国務長官「ロシアは約束を破った」

ウクライナ南部オデーサの港湾施設がミサイル攻撃を受けたことについて、アメリカのブリンケン国務長官は23日、声明を発表し「黒海経由でのウクライナの穀物の輸出再開を可能にする合意が成立してわずか24時間後に、ロシアは港を攻撃し、約束を破った」として、ロシアを厳しく非難しました。

そのうえで「ロシアは世界の食料危機を悪化させた責任を負っている。軍事侵攻を停止し、合意を完全に履行しなければならない」として、ロシアに対し、攻撃をやめ輸出再開に関する合意を着実に履行するよう強く求めました。

アメリカ大使「オデーサ攻撃、受け入れられない」

南部オデーサの港がミサイル攻撃を受けたことについて、ウクライナに駐在するアメリカのブリンク大使は23日、ツイッターに投稿し「受け入れられない。ロシアは農産物の輸出を認める合意文書を交わしてから24時間もたたずにオデーサの港を攻撃した。クレムリンは食料を武器として使い続けている。ロシアは責任を問われるべきだ」と強く非難しました。

トルコ国防相 “ロシアは攻撃への関与を否定”

トルコの国防省は23日、アカル国防相の声明を発表し「ロシアは、決してこの攻撃に関与しておらず、詳細を調査しているところだと私たちに話した」として、ロシア側はミサイル攻撃への関与を否定していることを明らかにしました。

また、トルコのアカル国防相はウクライナのレズニコフ国防相、クブラコフ・インフラ相とも電話会談しました。このなかで「ミサイルのひとつは穀物を貯蔵するサイロに命中したが、港湾施設の重要な部分に被害はないということだ」として、ウクライナ側から、輸出に向けた作業に支障は生じていないとの説明を受けたことを明らかにしました。

そのうえでアカル国防相は「穀物の輸出の合意があった直後の出来事で危惧しているし、不快だ。22日の合意に沿って両者が冷静に、辛抱強く協力を続けることを願っている」と述べました。

ゼレンスキー大統領「ロシアは何を約束しようが‥」

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、首都キーウで開かれたアメリカ議会下院の代表団との会議で、南部オデーサの港がロシアから攻撃を受けたことを説明しました。そのうえで「ロシアは何を言おうが、約束しようが、それを履行しない方法を見つけるということだ」と非難しました。

ウクライナ軍の関係者によりますと、ロシア軍の巡航ミサイル「カリブル」4発が黒海から発射され、そのうちの2発はウクライナ軍が迎撃しましたが、残りの2発は港のインフラ施設に命中したということです。この攻撃で港にあるポンプ場で火災が発生しましたが、すぐに火は消し止められたとしています。

このほかの大きな被害はなく、けが人の情報は入っていないと説明しています。

また、攻撃を受けたあと、ウクライナのクブラコフ・インフラ相は農産物の輸出再開に向けて準備を進めていると自身のSNSで明らかにしました。

オデーサ州の港にミサイル攻撃 “約束を台なしに”

ウクライナの軍や南部オデーサ州の当局者などは、黒海に面したオデーサの港が23日、ロシア軍のミサイル攻撃を受け、2発が着弾して港湾施設が被害を受けたと発表しました。

オデーサをめぐっては、ロシア軍による封鎖で小麦などの輸出が滞っている問題を受け、ロシアとウクライナ、それに仲介役のトルコと国連が、輸出の再開に向けオデーサなど3つの港から船を安全に航行させる手順などについて、22日、合意したばかりでした。

オデーサへの攻撃について、ウクライナ外務省は「ロシアは、トルコや国連の尽力で合意に至った約束を、24時間もたたないうちに破り、台なしにした。今回の攻撃は、合意に多大な貢献をしたトルコのエルドアン大統領や国連のグテーレス事務総長に、プーチン大統領が唾を吐きかけたものだ」とする報道官の声明を発表しました。そのうえで「合意を履行しない場合、ロシアは世界的な食料危機の全責任を負うことになる」と強く非難しました。

ロシア外相 アフリカ訪問へ 欧米に対抗するねらいか

ロシアのラブロフ外相は、24日からエジプトやエチオピアなどアフリカの4か国を歴訪する予定で、ロシア産の農産物の輸出などをアピールしながら関係強化を図り、ウクライナ侵攻を受け制裁を強める欧米に対抗するねらいがあるものと見られます。

ラブロフ外相は22日、ウクライナ産の小麦などの輸出再開に向けた合意を受けて「特に途上国のために食料安全保障を維持するという喫緊の課題に応えるものだ」と述べ、ロシア産の農産物の輸出再開にも道を開くという考えを示しました。

今月20日のロシア国営メディアとのインタビューでは「アフリカ諸国とはソビエト時代から良好な関係を維持している」と述べ、来年にはロシアで、アフリカ諸国との首脳会議や経済フォーラムを開催する予定だと明らかにしています。

ロシアは今月、国営の原子力企業が、エジプトで初めてとなる原子力発電所の建設を始めていて、食料やエネルギーを通じてアフリカ各国との連携を強めていくものと見られます。

軍事侵攻から5か月 戦闘は収まらず

ロシア軍はウクライナ東部で攻撃を続ける一方、南部では、一部地域の支配の既成事実化を図る動きを強めています。ウクライナ軍も欧米から兵器の供与を受けながら抗戦を続けていて、軍事侵攻から5か月がたったいまも、戦闘が収まるめどは立っていません。

【東部攻撃も苦戦か】
ロシア国防省は、今月3日、ウクライナ東部ルハンシク州全域を掌握したと発表し、その後、ドネツク州の完全掌握も目指してウクライナ軍の重要拠点となっているスロビャンシクなどへの激しい攻撃を続けています。

ただ、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は今月20日の分析で「ロシア軍は大きく前進することはできていない。小規模な町への攻撃で戦力は低下し続けている」としていて、双方の消耗戦が続いているとみられます。

【ロシア軍 士気くじくねらいか】
戦況がこう着するなか、ロシア軍はウクライナ側の士気をくじくねらいか、東部以外でも人が密集する場所へのミサイル攻撃を強めています。

先月27日には中部ポルタワ州にあるショッピングセンターが攻撃を受けて20人が死亡したほか今月14日、西部ビンニツァ州でも子どもを含む26人が死亡、200人以上がけがをしました。

ウクライナ側は、ロシア軍による攻撃の7割が民間施設などを標的にし、軍事施設などに向けられたのは3割にとどまると非難しました。

【南部支配の既成事実化を図る】
一方、ロシアは、すでに掌握したとしている南部など一部の地域の支配の既成事実化を図る動きを強めています。

アメリカ政府は、ヘルソン州やザポリージャ州などの一部の地域にロシア側が当局者を送り込み、併合に向けてロシア編入への賛否を問う見せかけの住民投票を行う見通しだと警戒しています。

【ウクライナ軍 南部で反撃】
こうした動きに対して南部では、ウクライナ軍がロシア軍への反撃も続けています。

ウクライナ側は、黒海にある戦略的な拠点ズミイヌイ島を先月末にロシア軍から奪還したほか、ヘルソン州でロシア軍の物資の補給や部隊の撤退に必要なルートだった橋に大きな損害を与えました。

こうした攻撃に効果的だとされるのが、射程が長く精密な攻撃が可能な高機動ロケット砲システム=ハイマースなど欧米から供与されている兵器です。

ゼレンスキー大統領は20日、「近代的な兵器の供給を増やし有効な防空手段を提供することが必要だ」と述べウクライナ軍が欧米からの支援を受けてどこまで反転攻勢に出られるかが焦点です。