【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(23日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

国連グテーレス事務総長「オデーサ攻撃 明確に非難する」

国連のグテーレス事務総長は23日、報道官を通じて声明を発表し、ウクライナ南部オデーサの港が攻撃されたという情報について「明確に非難する」としました。

そのうえで「すべての当事者はきのう、ウクライナの穀物などの安全な移動を確保すると約束した。ロシア、ウクライナ、トルコによる合意の完全な履行は必要不可欠だ」と訴えました。

オデーサ州の港にミサイル攻撃 “約束を台なしに”

ウクライナの軍や南部オデーサ州の当局者などは、黒海に面したオデーサの港が23日、ロシア軍のミサイル攻撃を受け、2発が着弾して港湾施設が被害を受けたと発表しました。

オデーサをめぐっては、ロシア軍による封鎖で小麦などの輸出が滞っている問題を受け、ロシアとウクライナ、それに仲介役のトルコと国連が、輸出の再開に向けオデーサなど3つの港から船を安全に航行させる手順などについて、22日、合意したばかりでした。

オデーサへの攻撃について、ウクライナ外務省は「ロシアは、トルコや国連の尽力で合意に至った約束を、24時間もたたないうちに破り、台なしにした。今回の攻撃は、合意に多大な貢献をしたトルコのエルドアン大統領や国連のグテーレス事務総長に、プーチン大統領が唾を吐きかけたものだ」とする報道官の声明を発表しました。そのうえで「合意を履行しない場合、ロシアは世界的な食料危機の全責任を負うことになる」と強く非難しました。

南部でハイマースなど使いウクライナ軍攻勢か

ウクライナ軍は南部ヘルソン州で、ロシアに支配された地域の奪還を目指し、高機動ロケット砲システム=ハイマースなどを使って攻勢を強めていると見られます。

イギリス国防省は23日に発表した分析で、ヘルソン市郊外にあるドニプロ川にかかる要衝の橋がウクライナ軍のさらなる攻撃で再び損傷し、ロシア軍の補給路が断たれようとしているとしたうえで「ヘルソンにいるロシア軍が孤立すれば、ロシアにとって軍事的にも政治的にも大きな打撃となる」という見方を示しました。

ロシアのラブロフ外相は20日、ウクライナ東部の2州にとどまらず、南部や南東部など周辺地域の掌握も視野に入れていることを明らかにしましたが、南部ではドニプロ川を挟んだ攻防が一層激しくなりそうです。

一方、ウクライナ中部キロボフラード州の知事は23日、SNSに、ロシア軍が巡航ミサイル「カリブル」など13発を撃ち込み、死傷者が出ていると投稿するなど、ロシア軍による攻撃も続いていると見られます。

米ブリンケン国務長官「合意を歓迎」

アメリカのブリンケン国務長官は22日、ロシアとウクライナが、ウクライナからの農産物の輸出をめぐって合意したことを受けて声明を発表しました。

このなかでブリンケン国務長官は「合意を歓迎する。ロシアによる戦争がもたらす影響に対処するための前向きな一歩だ」として歓迎しました。
そのうえで「国際社会はロシアにこの合意の責任を負わせ、ウクライナの農産物が世界の市場に届くようにしなければならない」として、国際社会とともに合意を着実に履行するようロシア側に迫る考えを強調しました。さらに、声明では、「ロシアはこの危機が始まって以降、食料を武器として利用してきた。ロシアがウクライナへの不当かつ残忍な軍事侵攻を続ける限り、世界の食料安全保障は危機にさらされ続ける」としてロシアに対し、ただちに軍事侵攻をやめるよう求めました。

独 ロシアからガス供給減で経営難の供給会社救済へ

ドイツでは先月、ロシアからの主要な天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の供給量が大幅に削減され、今月21日までは点検を理由に停止されました。その後、再開されましたが、供給量は点検前と同じ60%削減された状態にとどまっています。

こうした中、ショルツ首相は22日、ロシアからの供給が減少したため追加のガスの調達コストが増加し経営難に陥ったドイツ最大手の供給会社を救済すると発表しました。
またショルツ首相は、この秋からガスの供給会社が追加の調達コストを消費者に転嫁できるようにすることも明らかにしました。

平均的な家庭の負担は年間およそ3万円から4万円増える見込みで、ショルツ首相は家計の負担を減らす対策を講じるとして理解を求めました。

そして「どんな時もロシアから合意した量のガスが送られてくるという、長年の考えは誤りだった」と述べ、供給量の減少の長期化に備え、国民にガスの節約などを呼びかけました。

ゼレンスキー大統領 “合意はウクライナの利益に完全に合致”

ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、新たに公開した動画で、「港の封鎖を解除しウクライナの農産物の輸出を元に戻すための合意に至った」と述べ、仲介役を担った国連のグテーレス事務総長とトルコのエルドアン大統領に謝意を表しました。

合意内容については「ウクライナの利益に完全に合致している」と評価しました。

一方で「ロシア側が挑発行為をしたり、ウクライナや国際社会の努力をおとしめようとしたりするおそれがあるのは誰の目にも明らかだ。だが、私たちは国連を信頼している」と述べて、国連などに合意の確実な履行に向けた役割を果たすよう求めました。

ゼレンスキー大統領 “米の武器供与でロシア軍の攻撃が鈍化”

ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに応じ、アメリカから供与されている高機動ロケット砲システム=ハイマースなどによって東部ドンバス地域でロシア軍の攻撃の勢いを鈍らせていると述べました。

具体的にはロシア側は以前、一日に1万2000発の砲弾を発射し、ウクライナ側は1000から2000発にとどまっていましたが、今ではウクライナ側は一日に6000発ほどの砲弾を撃てるとしていて、ロシア側は弾薬と兵力の不足を感じ始めていると指摘しています。

一方、今後の戦況について、ゼレンスキー大統領は、東部のドンバス地域の前線を安定させれば、ウクライナは他の方面へ進出できるという考えを示しました。

バイデン政権 ウクライナに367億円余の追加の軍事支援

アメリカのバイデン政権は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して、およそ2億7000万ドル、日本円にして367億円余りの追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には、高機動ロケット砲システム=ハイマース4基や、最大で580機のドローンなどが含まれているとしています。

このうち、ハイマースは射程が長く、精密な攻撃が可能とされる兵器でウクライナ軍はロシア軍の弾薬や物資の供給網のほか、指揮所などの軍事拠点に対する攻撃に使っていて、アメリカはこれまでに12基を供与しています。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は22日、記者団に対しロシアがウクライナのアパートやショッピングモールを攻撃の対象とするなど市民に対して残虐な行為を続けていると非難したうえで「アメリカはウクライナが必要とするかぎり支援を続けていく」としています。

ロシア国防省 “米がウクライナに供与したハイマース4基を破壊”

ロシア国防省は22日、ロシア軍が今月5日から20日までの間に、ウクライナ各地を攻撃し、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム=ハイマース4基を破壊したと主張しました。

ウクライナ軍は、ハイマースを使用して東部や南部で反撃を続けているとみられ、ロシア軍はこうした軍事支援を強くけん制しています。
また、ロシア軍は掌握を目指す東部ドネツク州で、ウクライナ側の拠点、クラマトルシクを攻撃し、兵士およそ300人を殺害したほか、南部ミコライウ州でもミサイルによる攻撃で武器庫や装甲車を破壊したとしています。

一方、イギリス国防省は22日、ロシア軍が地上攻撃用のミサイルが不足していて、代わりに防空ミサイルを攻撃に使用するようになっているという、分析を明らかにしました。

攻撃には航空機などを撃墜する地対空ミサイルシステム「S300」などが使われているとみられ、地上への攻撃には適さないうえ、兵士も訓練をほとんど受けていないため、攻撃の標的が外れ、市民の被害がさらに広がるおそれがあると指摘しています。

ロシア中央銀行 政策金利8%に引き下げを発表

ロシアの中央銀行は22日、政策金利を今の9.5%から8%に引き下げると発表しました。

ロシア中央銀行はウクライナへの軍事侵攻後のことし2月末、通貨ルーブルの急落に対応するため政策金利を9.5%からほぼ2倍に当たる20%へと大幅に引き上げましたが、ルーブルが値を戻していることなどから金利の引き下げを続けていて、利下げは5会合連続です。

ロシア中央銀行は声明で「ロシア経済の外部環境は依然として厳しく、経済活動にかなりの制約があるものの、企業活動の縮小は、6月に予測したより緩やかだ」などとしています。

そのうえで「インフレの動向を見ながら、ことし後半にも利下げの必要性を改めて検討する」としています。

ウクライナから農産物輸出へ 安全航行手順などで合意

ウクライナ産の小麦などの輸出が滞っている問題で、ロシアとウクライナ、それに仲介役のトルコと国連を交えた協議がトルコのイスタンブールで行われ、ウクライナ南部の港から農産物の輸出に向けて安全に船を航行させる手順などで合意しました。

イスタンブールでは、22日午後5時すぎ、日本時間の22日夜11時すぎ、ロシアのショイグ国防相とウクライナのクブラコフ・インフラ相が相次いで合意文書に署名し、トルコのエルドアン大統領、国連のグテーレス事務総長を介して、文書が交換されました。

小麦やトウモロコシなどの世界有数の輸出国であるウクライナからの輸出が滞り、世界的に食料価格の高騰や食料不足への懸念が高まる中、今後は合意内容が着実に履行され食料供給の安定につながるかが焦点となります。

ロシア ・ショイグ国防相「トルコと国連のおかげ」

ロシアのショイグ国防相は「トルコと国連の積極的な仲介のおかげで署名が可能になった。世界の食料安全保障の問題を解決するための実質的な貢献になることを期待している」と評価しました。

一方、ショイグ国防相は、この合意とは別に、国連との間でロシア産の農産物の輸出制限を解除することを含めた覚書を交わしたと明らかにしたうえで「2つの文書は相互に関連している」と主張し、今回の合意がロシアからの農産物の輸出の再開にも道を開くという考えを示しました。

ロシア・ラブロフ外相「ロシアの農産物輸出再開を」

ロシアのラブロフ外相は声明を発表し、ベロウソフ第1副首相が国連のグテーレス事務総長との間で覚書を署名したとしています。

そして「主な目的はロシアの農産物と肥料を世界市場に確実に円滑に届けることだ。とりわけアメリカやEUによる金融や保険に関する障害を取り払うため、農産物の輸出がロシアに科された制限から除外されることを目的としている」と述べました。

ロシアとしては、今後はロシア産の農産物と肥料の輸出再開に向け、働きかけを強めるとみられます。

トルコ エルドアン大統領「和平への希望に」

エルドアン大統領は署名式で「両国の期待と懸念を率直に話し合った。世界の食料危機に対する解決策が導き出されたことを誇りに思う」として、合意を歓迎しました。

そのうえで「私たちは戦争に勝者はいないと繰り返してきた。両国との歩みが和平への希望をよみがえらせる新たな道しるべとなることを願う」として、今回の合意をきっかけに停戦交渉の再開にも意欲を示しました。

国連 グテーレス事務総長「合意 完全に履行を」

今回の合意について国連のグテーレス事務総長は「黒海の希望のともし火だ」と述べたうえで「疑いの余地なく、この合意は世界の人々のためのものだ。飢餓の瀬戸際にいる最も弱い立場の人々を救うだろう」と述べ、世界的な食料不足への懸念が高まる中、重要な合意だと評価しました。

また「合意の実現のために取り組んだすべての人たちに感謝したい」と述べ、ロシアとウクライナの両政府、それに仲介にあたったトルコ政府に謝意を表しました。

そのうえで「合意は完全に履行されなければならない。私はすべての当事者に対して合意の履行に向け努力を惜しまないよう求める」と強調しました。

そして最後に「紛争の両当事者による前例のない合意だが、紛争は続いていて、戦闘は日々、激しさを増している。この地域と地球にとって試練と激動の時代に、この希望のともし火を人々の苦しみを和らげ、平和を確保するための道しるべとなるようにしよう」と呼びかけました。

EU ボレル上級代表「食料不安解消へ重要な一歩」

EU=ヨーロッパ連合の外相に当たるボレル上級代表は声明を発表して今回の合意を歓迎したうえで「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が引き起こした世界的な食料不安を解決するための重要な一歩だ。実を結ぶかどうかは、合意が速やかに、そして誠実に履行されるかにかかっている」と述べました。

そして、EUとしてもウクライナから陸路で穀物を運び出す取り組みを進めていることに触れ「EUは今後もできるだけ多くの穀物をできるだけ早く世界市場に届けられるよう、ウクライナを支援していく」と強調しました。