止まらない“物価上昇” 家計や企業活動への影響は深刻さ増す

6月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月を2.2%上回って10か月連続で上昇しました。

主な要因はエネルギー価格の高騰。「エネルギー」全体では去年の同じ月と比べて16.5%の大幅な上昇となりました。また「生鮮食品を除く食料」は3.2%上昇。

企業が原材料価格の上昇分を商品価格に転嫁する動きがさらに広がると、食料品や日用品を中心に物価高はしばらくの間続くことが予想されます。

また物価上昇に対して賃金の伸びは追いついていません。こうした状況は個人消費の冷え込みにもつながる可能性があり、専門家からは景気への悪影響を懸念する指摘も出ています。

“値上げの動き 今後さらに進む”

「みずほリサーチ&テクノロジーズ」の酒井才介主席エコノミストは「ロシアのウクライナへの軍事侵攻による世界的な資源価格の高騰に加え、円安が進んでいることで食料品やガソリン代、電気代などを中心に幅広い品目で値上げが進んでいる。とくに所得が低い世帯は、収入に対する日用品の支出の割合が高いため値上げの影響が大きく、わたしたちの試算では、消費税率を3%引き上げた場合に相当する負担の増加があるとみており、非常に苦しい状況になっている」と話しています。

そのうえで「資源価格の高止まりや円安は当面続くとみられるが、これまでは消費者が離れることを警戒して値上げを我慢しているものの、値上げに踏み切る企業も増えてくると思う。このため、今後、食料品を中心に値上げの動きはさらに進んでいくとみている」と話しています。

酒井氏は「今、家計において、賃金の伸びを物価の上昇が上回ることによって、実質的な賃金が目減りしているのが現状だ。このため、貯蓄が十分に積み上げられていない世帯では、子どもの教育費も減らさざるを得ない状況になっている。政府としては、補助金の支給によって、ガソリンや小麦の小売価格を抑えるなどの短期的な政策が中心となっていくとみられる。物価高の対策として重要なのは賃上げで非正規雇用で働く人のリカレント教育などのスキル向上の取り組みを支援することで賃上げにつなげていくことが求められている」と指摘しています。

販売価格への転嫁も 都内スーパーでは

食品の値上げの動きがメーカー各社で広がる中、都内のスーパーでは、販売価格への転嫁を余儀なくされていて、いかにお客をつなぎ止めるか、難しい対応を迫られています。

東京 足立区のスーパーでは、取り扱う加工食品のほとんどの品目がことしに入り値上げの対象になっているということです。

特に値上げのペースが速いのが食用油と小麦粉です。
食用油は1、2か月おきに、小麦粉は3、4か月おきに、仕入れ先から値上げ要請が来ているということで、店ではそのつど、数円単位で販売価格の引き上げを余儀なくされています。

また、パンの仕入れ価格も小麦粉の値上がりの影響で上昇したため、これまで税抜き99円とぎりぎり100円以下にしていた食パンの価格を今月19日からは、税抜き118円で販売せざるを得なくなったということです。

一方で、客の負担感を少しでも和らげようと、割安なプライベートブランドの小麦粉を新たに取り扱うなど、販売価格を抑えた商品の品ぞろえを増やしています。

70代の女性客は「安いものを選んで買いますが、すべてのものの値段が上がってきていると感じます」と話していました。

「さんよう」の阿部芳邦取締役は「消費者は非常に敏感で、10円でも上げると売り上げには相当響く。パンの仕入れ価格がまた値上がりするという話も聞いていますが、今後の販売価格はギリギリまで詰めた上で決めていきたい」と話していました。

子どもがいる家庭からは…

物価の上昇が続くなか、子どもがいる家庭からは今後も値上がりが続くと生活は厳しいという声が聞かれます。

北海道七飯町に住む舛田さくらさん(32)は公務員の夫と2歳の長男の3人で暮らしています。ふだんの買い物や料理は舛田さんが行っていて、ガソリンや野菜の値上がりで生活に影響が出ているといいます。
車を2台所有し、給油する際はクレジットカードで支払いをしていますが、明細を比較すると、6月のガソリン代はおよそ2万円で、去年の同じ月と比べて5000円ほど率にして25%増加しているということです。

また、料理に多く使用するタマネギは函館市青果物地方卸売市場によりますとことし4月から6月の1キロ当たりの平均価格は298円と、去年の同じ時期の3倍近くに上昇しています。

このためタマネギの代わりに価格の安いもやしを使用することが多くなったほか、長男が好きなパンも小麦の輸入価格の影響で値上がりしたため、お米を食べる機会が増えました。

舛田さんは、少しでも生活費を節約するため野菜を購入する際にはこれまで通っていたスーパーではなく比較的安く購入できる直売所を利用するようになりました。

舛田さんは、「今後も値上がりが続くと生活は厳しいです。物価が上がることで外出する回数が減ってしまうなどの影響も出ています」と話していました。

家庭へ食料などを届ける支援の動きも

新型コロナの感染拡大に加え、物価の高騰も続く中、多くの学校は夏休みに入りました。不安を抱える家庭に対して、食料などを届ける支援の動きも進められています。

このうち国際的NGOの「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は、おととしから新型コロナウイルスの影響で経済的に苦しい家庭に食料品などを届ける活動を行っています。

対象はしだいに拡大し、今回は物価高騰も踏まえ、全国に呼びかけたところ予定していた3200世帯分をはるかに上回る5644世帯から申し込みがあったということです。

このため、発送先を抽選で決め、夏休みに届くように順次発送を進めているということです。箱の中には米や麺、レトルト食品といった食料品以外にもこれまで支援を受けてきた人からの要望なども踏まえ文房具のほか、公的な支援に関する案内も同封しています。
「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」国内事業部の川上園子部長は「申し込みをした方からは『日用品の物価がどんどん上がっていて、毎日生活が苦しくなり、先が見えない』という声も寄せられています。誰にも助けを求めない方が多いので民間でも公的機関でも、誰かを頼っていいということをメッセージとして受け止めてほしいです」と話していました。

学生支援の大学も

物価の上昇が続くなか、学生を支援しようと取り組む大学もあります。

東京 世田谷区の駒沢大学では、夏休み前となる22日までの3日間、学生を対象とした食料品の無料配布が行われました。
新型コロナの感染拡大でアルバイトのシフトに思うように入れなかったり、物価の上昇で食費の負担が増している学生を支援しようと、日持ちのする食料品を中心に9万食が用意されました。

パックご飯やレトルト食品、それにパスタなど、メーカーなどから提供を受けた食料品が並べられ、授業の合間に訪れた学生たちが1時間待ちの列をつくって、次々と食料品を受け取っていました。

食料品の配布には3日間で3000人あまりの学生が訪れたということです。

主催した駒沢大学・学生支援センターの松田健所長は「物価の上昇に対応しないといけないと思い、開催しました。保存のきくものをなるべく多くしたので夏休みを乗り切ってほしい」と話しています。

食料品の配布を受けた学生からは物価の上昇で食費などの負担が増えていて、生活への影響が大きくなっているという声が聞かれました。

大学3年の女子学生は大学生活を送りながらスーパーでアルバイトをして、都内で1人暮らしています。生活費を節約するために授業がある日もキャンパス内の食堂はなるべく使わずに、自炊して弁当を持参しています。

友人と一緒に食べたこの日の昼ご飯は自分で握ったおにぎり1個で、最近は1日2食で済ませることも増えてきているということです。このため、外食の機会を減らしたり、なるべく安い食材を普段から選ぶなどして、生活費を抑える工夫を行っています。

女子学生は「1人暮らしをするなかで食費の負担がとくに大きいと感じます。生活費を節約するためにできることをやり続けるしかないです」と話していました。

また、食料品を受け取った大学2年生の男子学生は「コロナ禍でアルバイトのシフトが減ったりしてお金の面が不安だったので数多く提供してもらい助かります」と話していました。

自治体でも支援策

自治体でも物価や原油価格の高騰に対する支援策が行われています。

総務省は、6月末時点で、都道府県と政令指定都市が公表している物価や原油価格高騰への支援策をまとめました。

このうち、現金などの給付をする自治体は多く、岩手県は児童手当を受給している世帯の子ども、およそ14万人を対象に1人あたり1万5000円を給付するほか、大阪府は18歳以下を対象に1人あたり1万円のプリペイドカードを配布するとしています。

また、給食費を支援する自治体もあり、名古屋市は、保護者の負担を増やさないよう値上がりした食材費の増額分を支援するほか、堺市では今年度の2学期について市立の小学校と特別支援学校の給食費を無償にするとしています。

このほか、兵庫県は、家族の介護をしている子どもたち「ヤングケアラー」とその家族を対象におよそ3か月にわたり、週に1度のペースで食事を届ける支援をおこなうほか、山形県では特産の米を活用し、県内の大学生や専門学校生などには10キロ、低所得のひとり親世帯には20キロを提供するということです。