6月の消費者物価指数 前年同月を2.2%上回る 2%超は3か月連続

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる6月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月を2.2%上回りました。政府・日銀が目標としてきた2%を超えるのは3か月連続で消費税率引き上げの影響を除けば13年9か月ぶりの水準となります。

総務省が発表した6月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が2020年を100として、101.7となり、去年の同じ月を2.2%上回って10か月連続で上昇しました。

上昇率が政府・日銀が目標としてきた2%を超えるのは3か月連続で、消費税率引き上げの影響を除けば2008年9月以来、13年9か月ぶりの水準となります。

物価上昇の主な要因はエネルギー価格の高騰で、「エネルギー」全体では去年の同じ月と比べて16.5%の大幅な上昇となりました。

個別にみると
▽電気代は18%
▽ガス代は17.1%
▽ガソリン代は12.2%
それぞれ上昇しました。

また「生鮮食品を除く食料」は3.2%の上昇となり、このうち輸入原材料を多く使う食用油は36%、食パンは9%、それぞれ上昇しています。
政府・日銀は2%の物価上昇を目標としてきましたが、日銀は今の物価上昇は賃金の上昇を伴っておらず、本来目指している形でないとしています。

総務省は「ロシアの軍事侵攻や新型コロナの影響など複合的な要因で物価が押し上げられているが輸入原材料を使っている品目を中心に円安の影響も広く出ており、今後の物価の動向を注意深くみていきたい」としています。

鈴木財務相「景気の下振れリスクになることを十分注意」

鈴木財務大臣は、閣議のあとの記者会見で、6月の消費者物価指数が2%を超える高い伸びとなったことについて「最近の物価上昇は、主に原油をはじめとする世界的な原材料価格の高騰などを背景としたものだ。こうした物価高騰がマインドの悪化や購買力の低下を通じて民間消費や企業活動を下押しするなど景気の下振れリスクになることを十分注意していく」と述べました。

そのうえで、鈴木大臣は物価上昇への対応として「5兆5000億円の予備費を機動的に活用していくことが第一だ。その後のことは物価や景気の状況に応じて必要な対策をしていく」と述べ、切れ目ない支援を行っていく考えを強調しました。

松野官房長官「今後とも最大限の警戒感を持って」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「景気の下振れリスクには十分注意する必要があると考えており、景気、物価両面で状況に応じた迅速かつ総合的な 対応に取り組んでいる。電力需給ひっ迫と電気料金高騰の両方に対応する新たな枠組みのほか、肥料の価格高騰対策を今月中にも予備費を措置して迅速に届けることとしており、今後とも最大限の警戒感を持って取り組んでいきたい」と述べました。

物価高 しばらくの間続くか

消費者物価指数は2%を超える伸びが続いていますが、企業が原材料価格の上昇分を商品価格に転嫁する動きがさらに広がると食料品や日用品を中心に物価高はしばらくの間続くことが予想されます。

企業どうしで取り引きされる原材料などのモノの価格を示す「企業物価指数」と、私たちが買うモノやサービスの値動きを示す「消費者物価指数」の伸び率を比べると、その率には隔たりがみられます。
6月の企業物価指数の速報値は、資源高や急速な円安による輸入コストの上昇などを背景に去年の同じ月を9.2%上回る、高い伸びとなりました。
消費者物価指数の上昇率が2%台のため、大きな開きがあり、企業が仕入れコストの上昇分を吸収し、価格に転嫁していないという側面があります。

このため、企業の間ではコストの上昇に耐えきれず一度値上げした商品を再び値上げする動きもみられ、今後、価格への転嫁がさらに広がることが予想されます。

“消費者 価格にシビア”

6月の消費者物価指数が、2%を超える高い伸びとなったことについて、全国の主なスーパーなどで作る日本チェーンストア協会の牧野剛専務理事は、「物価高に対する消費者の行動としては『これだ』というのは高くても買うし、そうでないものは、価格にシビアな目をされる」と述べました。

また増田充男執行理事は「エネルギー料金も上がり、ガソリン代も思ったより下がっていないので、そうした中で秋にさらに値上げが広がるとなかなか厳しい。政府には実感のあるような施策として特別減税などをお願いすることもあるかもしれない」と述べました。

企業の経営者は

物価の上昇が続いていることについて、大手企業の経営者からは個人消費の冷え込みなど景気への影響を注意深く見ていく必要があるという声が聞かれました。

このうち、「三井不動産」の菰田正信社長は「物価が上がったということで、ショッピングセンターなどに来店する消費者の財布のひもが少し締まってきているという実感がある。また感染の急拡大もあり、夏休みの稼ぎ時に消費行動がどう変化するか注視している」として、個人消費の先行きに不透明感が出ていると指摘しました。

そのうえで、「物価の上昇にあわせた賃金の見直しをしなければならないという問題意識を持っている。賃上げは人への投資だという風に考え、それをさらに売り上げの増加につなげられるようにしたい」と述べました。

また、金融大手の「三井住友フィナンシャルグループ」の太田純社長は、「今はまだ個人消費は拡大していく傾向にあると思うが、エネルギーや食料品の価格が上がっているところにさらに円安が進んで物価高に拍車がかかると、景気に対して悪影響が出る可能性もある」と述べました。

経団連の副会長として、春闘に向けた経団連の基本方針の策定を担当している建設機械大手「コマツ」の大橋徹二会長は、「海外に比べると上昇率は低いとは言え、このところの物価高はとりわけ収入が低い人によっては大変だと思う。企業としては、生産性を上げながらきちんと賃金を上げていく。コロナ禍で業績がよくないところは雇用の維持で対応していくことが大事だ」と述べました。

実質賃金2か月連続でマイナス

6月の消費者物価指数は3か月連続で2%を超えましたが、物価上昇に対して賃金の伸びは追いついていません。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によりますと、働く人1人あたりの現金給与総額はことし5月の調査の速報値で平均で27万7016円と、去年の同じ月と比べて1%増えました。

一方、物価の変動を反映した実質賃金は去年の同じ月を1.8%下回り、2か月連続でマイナスとなりました。
総務省が行った家計の消費動向を調べる「家計調査」では、ことし5月に2人以上の世帯の支出は名目ベースで去年の同じ月と比べて2.4%増えています。

なかでも、
▽「光熱・水道」は電気代が伸びた影響で15.0%増えたほか、
▽「食料」が野菜や魚介類の値上がりなどを背景に3.6%、
いずれも去年の同じ月と比較して増えています。

物価の上昇に対して賃金の伸びが追いついていない状況は個人消費の冷え込みにもつながる可能性があり、専門家からは景気への悪影響を懸念する指摘も出ています。

世界では高いインフレ進む

日本では物価上昇率は2%台が続いていますが、世界的には高いインフレが広がっています。

アメリカでは、6月の消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの記録的な水準となりました。

アメリカでは、6月の労働者の平均時給が5.1%増加するなど賃金でも高い伸びが続いています。

深刻な人手不足の影響で企業の間で賃上げの動きが広がり物価を押し上げる要因の1つにもなっています。

また、ドイツやフランスなど、ユーロ圏19か国では、6月の消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて8.6%の上昇と、統計がある1997年以降で最大の伸び率となりました。

急激なインフレは新興国の間でもみられ、世界的な物価高騰には拍車がかかっています。