景気を診断する「ドクター・カッパー」とは??【経済コラム】

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化し、欧米や中国の景気減速も懸念されるなか、世界経済の先行きはますます見通しにくくなっています。
こうしたなか景気の先行きを占ううえで注目されるのが「カッパー」。
もちろん、きゅうりが大好きなあの妖怪ではありません。
Copper=銅のことです。
世界経済の変調をいち早く診断する“ドクター・カッパー”とも呼ばれる銅の価格。そこから見えてくるものとは?(経済部記者 仲沢啓)

銅の価格で景気の先行きを見通せるのはなぜ?

“ドクター・カッパー”の景気診断、気になるところですが、その前に、その実力から見ていきましょう。

そもそもどうして銅の価格から景気の変調を知ることができるのか、それは銅が幅広い用途で使われ、企業のさまざまな経済活動に関わっているからなんです。

銅は電気を通しやすく、加工しやすいという特徴があります。
電線や電子機器、家電製品からEVまで私たちの身の回りにある幅広い製品に使われています。

こうした製品の販売が増えると見込まれると、銅の需要が拡大するという思惑が広がり、その結果、価格が上がります。

それでは“ドクター・カッパー”はどこに現れるのか。

世界で取り引きされる銅の価格の指標となっているのは、LME=ロンドン金属取引所で取り引きされる銅の3か月先物。

つまり、未来の企業活動や製品の販売動向を見通して、そこで使われる銅の需要が価格に反映されるのです。

銅価格と世界経済

このLME3か月先物は、これまで世界経済の変わり目には敏感に反応してきました。

1997年7月、タイの通貨・バーツの急落をきっかけに広がったアジア通貨危機。

銅の先物価格は前月・6月に1トンあたり2600ドル台をつけていましたが、危機の端緒を察知するように7月になって急落。

1年で1600ドル台まで落ち込みました。

リーマンショック2か月前にも銅価格に変化が。
2008年7月に9000ドル近くだったのが下げに転じ、12月には3000ドルを割り込みました。

そして新型コロナショック。

2020年の年初に6000ドルを超えていた価格は、中国で新型コロナの発生が確認された直後に値下がりを始め、3月には5000ドルを割り込みました。

足元では下落が止まらない

そしていま、まさに世界経済は変調のときを迎えているのかもしれません。
LME3か月先物は、ことし3月に1万845ドルの過去最高値をつけましたが、6月からは下落基調が続き、7月15日には1年8か月ぶりに一時、7000ドルを割り込みました。

ゼロコロナ政策の影響で中国の経済活動が停滞したことに加えて、欧米などの各国がインフレを抑制するために金融の引き締めを行ったことで世界的に景気減速への懸念が強まっていることが背景にあるとみられます。

“ドクター・カッパー”のサインを裏付けるような動きも。

アメリカの6月の中古住宅販売戸数は5か月連続のマイナスに。

アメリカでは中古住宅の市場が大きく、家具や家電の売り上げにも直結するだけに気になる動きです。

また、半導体大手、TSMCの経営トップが今月、「パソコンやスマートフォンの需要が落ち込み、来年前半にかけて業界全体で在庫を減らす動きが出てくる」と発言。
半導体の需要も節目を迎えているのかもしれません。

大手商社の関係者は、「世界的な脱炭素の流れの中で、EVや再エネに欠かせない銅の需要は底堅いと見ているがドクター・カッパーが示唆する足元の景気の変化には警戒している」と話していました。

“ドクター・カッパー”が示唆する景気の先行きは

記録的なインフレを抑え込むため欧米などで金融引き締めの動きが相次ぐ中、市場では景気の減速懸念が次第に強まっています。

最近の“ドクター・カッパー”の動きが世界経済の減速・後退を示唆するものなのか。

しっかり見極めたいと思います。

注目予定

日本時間の28日未明に声明文が公表されるアメリカのFOMC=連邦公開市場委員会とその日に行われるFRB・パウエル議長の会見に注目が集まっています。

今月発表されたアメリカの6月の消費者物価指数が記録的な水準となったことで、今回も大幅な利上げに踏み切るのではないかという観測も出ています。

また、主要企業の決算発表も相次ぎます。

企業が景気の先行きをどう見ているかという点も注目です。