新型コロナ“今後も過去最多感染者数の更新予想” 専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、今後も全国的に過去最多の感染者数の更新が予想され、高齢者の感染も増えるとして、最大限の警戒感を持って医療体制への影響を注視する必要があると指摘しました。
感染リスクを伴う接触機会を可能なかぎり減らすため、それぞれが感染しない、感染させない対策をとるよう呼びかけています。

専門家会合は、現在の感染状況についてことし1月から始まった感染の「第6波」を大きく超えこれまでで最も高いレベルの感染となっていて、新規感染者数はすべての年代で増え、60代以上の高齢者でも増加幅が大きくなっていると指摘しています。

また、検査の陽性率が上昇していて、症状がある人など検査が必要な人が受けられているか懸念があるともしています。

感染者数の増加に伴って療養者数は増加し、病床使用率は大都市部など多くの地域で3割を超え、一部で5割を超える地域もあるほか、救急搬送が困難なケースも全国的に急増しています。

人口当たりの感染者数が全国で最も多い状態が続く沖縄県では、病床使用率が7割を超えたほか、医療従事者の感染が増えたことで医療体制への負荷が懸念されるとしています。

専門家会合は、全国的に今後も過去最多の感染者数の更新が予測されるため、最大限の警戒感を持って医療体制への影響を注視する必要があると強調しました。

専門家会合は、それぞれが感染しない、感染させないための対策に取り組むことが必要だと指摘し、国や自治体が日常的な感染対策の必要性を周知し、医療提供体制の強化などを行うよう求めました。

そして、専門家会合はワクチン接種のさらなる促進、検査の活用、効果的な換気などが必要だとしていて、基本的な感染対策として、少しでも体調が悪ければ外出を控えることや、リモートワークを再び推進すること、それにイベントや会合を行う場合は感染状況を踏まえて開催の可否を検討することなどを求めました。

脇田座長「高齢者の感染増で重症化や死亡者増加につながる懸念」

専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は「重症者数は今はまだ低いレベルだが増加し始めていて、高齢者の感染が増えると重症化や死亡者の増加につながっていく懸念もある。ただオミクロン株の『BA.5』に置き換わっているが、今のところ感染したときの重症度が高くなっている状況ではないと考えている」と述べました。

また子どもの感染について「家庭内での感染が多く子どもの感染が分かれば家族への検査キットの配布で対応しているという議論もあった。部活動やスポーツ中の感染や子どもたちが屋内で集まってゲームすることで感染した事例もあり、感染リスクの高い行動をなるべく避けてもらうべきではないかという意見があった。ただ基本的には周りの大人がなるべく感染しないようにすることが子どもへの感染を防ぐための対策の中心だと報告されている。子どもの感染をなるべく避け、重症化を抑えるためにはワクチン接種を検討してもらうことも重要な対策の1つだと考えている」と述べました。

1週間の新規感染者数 前週比1.72倍 全都道府県で増加

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、20日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.72倍で、各地で過去最多となる中、すべての都道府県で増加が続いています。

首都圏の1都3県では、
▽東京都が1.64倍、
▽神奈川県が1.93倍、
▽埼玉県が1.90倍、
▽千葉県が1.79倍と、
2倍以上だった1週間前より増加の幅は小さくなっているものの、急速な増加が続いています。

また関西では
▽大阪府が1.74倍、
▽兵庫県が1.89倍、
▽京都府が1.70倍、

東海でも
▽愛知県が1.80倍、
▽岐阜県が1.69倍、
▽三重県が1.58倍と増加が続いています。

また、
▽秋田県は2.34倍、
▽栃木県は2.23倍、
▽香川県は2.14倍など8つの県で2倍以上となっています。

また、人口当たりの感染者数が最も多い沖縄県は1.37倍となっています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▽沖縄県が1655.97人と1000人を大きく超えて全国で最も多く、
次いで
▽熊本県が964.79人、
▽島根県が911.01人、
▽佐賀県が869.44人、
▽大阪府が845.37人、
▽東京都が829.64人、などとなっていて
▽全国では564.94人となっています。

「BA.5」全国でほぼ置き換わったか

新型コロナウイルスのオミクロン株の1つで、より感染力が強いとされる「BA.5」の広がりを国立感染症研究所で推定したところ、すでに全国でほぼ置き換わったとみられるとしています。

厚生労働省の専門家会合で、国立感染症研究所の鈴木基 感染症疫学センター長が示した資料によりますと、国立感染症研究所で民間の検査会社で検出された「BA.5」の割合をもとに推定すると、全国で「BA.5」が占める割合は今週の時点で全体のおよそ96%とみられ、来月の第1週にはすべて置き換わるとしています。

地域別では、首都圏の1都3県では99%とすでにほぼすべてが置き換わっているとみられるほか、関西の2府1県ではおよそ91%で来月の第1週にはほぼすべてが置き換わると推定されています。

後藤厚労相「新規感染者数の増加続くと見込まれる」

専門家会合で、後藤厚生労働大臣は「全国の一日当たりの新規感染者数は、先週比1.72となり、急速な増加が継続している。病床使用率についても、地域差が見られるものの総じて上昇傾向にある。重症者数や死亡者数は、低い水準にあるものの増加傾向にあり、多くの地域で新規感染者数の増加が続くことが見込まれる」と述べました。

そのうえで「今後の感染状況について最大限の警戒を保ちつつ、引き続き適宜適切な対応を図っていく。現時点で新たな行動制限を行うことは考えていないが、油断することなく改めてマスクの適切な着用、手洗い、3密の回避や換気など基本的感染防止策の徹底を心がけてほしい」と呼びかけました。

松野官房長官「最大限の警戒感持って注視」

松野官房長官は、午後の記者会見で今の感染状況について「新規感染者数は全国的にこれまでで最も高い感染レベルとなっており、医療提供体制への影響も含め、最大限の警戒感を持って注視していく必要がある」と述べました。

そのうえで「厚生労働省から都道府県などに対し、感染状況に応じて遅れることなく確保病床を稼働させることや発熱外来の拡充・公表などを要請しており、都道府県と緊密に連携を図り、必要な支援も行いながら保健医療提供体制の確保に万全を期していく」と述べました。

一方、「確保病床の使用率」が全国で最も高くなっている沖縄の状況について「沖縄県はほかの地域よりも高い感染レベルが継続している。沖縄県とも緊密に連携して適切に対応していく」と述べました。