都内の発熱外来ひっ迫 “4回目のワクチン接種困難”

新型コロナウイルスの感染の急拡大を受けて、東京都内のクリニックでは発熱外来を訪れる患者の対応に追われ、診療態勢がひっ迫しています。22日にも医療従事者などに拡大される見通しのワクチンの4回目接種への対応が難しいという声が上がっています。

東京 中野区のクリニックの発熱外来には3連休明けの今週から特に発熱やせき、のどの痛みなどを訴える患者が相次いで訪れています。

患者の数も、先週は1週間で32人でしたが、今週は20日と19日の2日間で85人と急増し、陽性率も6割から7割程度と高い水準になっています。

医師1人と看護師など外来で働く7人に感染者は出ていませんが、感染リスクは高まっていて、今後、人手が不足したときもほかの医療機関との連携など準備が十分に整っていないということです。

国はワクチンの4回目接種の対象を22日にも医療従事者や高齢者施設のスタッフなどにも拡大する見通しですが、急増する患者への対応に追われ、接種に対応することは難しいと懸念しています。

みやびハート&ケアクリニックの渡邉雅貴院長は「患者数の急激な増加に態勢が追いついていないのが現実です。検査を優先するとワクチン接種に手が回らず、接種の準備をしてほしいと言われても態勢をつくるのに苦戦するのは間違いないと思う」と話しています。

人工透析受けている感染者の入院 満床で困難に

新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか、都内では、新型コロナに感染した、人工透析を受けている患者の入院が難しい状態となっていて、通院の形で患者を受け入れているクリニックは、感染対策をとりながら人工透析を続けています。

人工透析を行っている東京 世田谷区のクリニックでは7月に入り、ふだん通院している患者のうち、2人が新型コロナに感染しましたが、このうち1人は入院できず、このクリニックへの通院を継続する形で、人工透析を続けているということです。

ほかにも、濃厚接触者となった患者もいて、人工透析を受けています。

クリニックでは感染拡大を防ぐため、感染した患者などに対し、2つある個室で人工透析をしたり、人工透析の時間を夜間に変更したりする対応をとっているほか、一般の患者の間でも感染が広がらないように、すべてのベッドの間にパーティションを設置しましたが、これ以上、感染者が増えると対応が難しくなるおそれがあるということです。

「腎内科クリニック世田谷」の菅沼信也院長は「人工透析を受ける患者は、新型コロナに感染すると重症化するリスクが高い。これ以上、感染する患者が増えれば、個室以外で受け入れざるをえなくなり、感染のリスクが高まってしまう」と危機感を強めていました。

東京都透析医療アドバイザーの菊地勘医師によりますと、人工透析を受けている患者が新型コロナに感染した場合、入院できる専用の病床は限られ、都内には、およそ100床ありますが、満床の状態が続いていて、症状の重い患者から入院の調整を進める対応に追われているということです。

救急外来 コロナ心配しての受診増加

救急外来の状況について、感染症が専門で新型コロナの対応を行ってきた東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は「発熱やのどの痛みを訴えてコロナを心配して受診する人が増えている。コロナを疑う症状がある患者の検査や診察は十分な感染対策をしたうえで行う必要があるため、数名の患者を同時に診ることが難しい。この状況が続けば、けがや重い症状など、急病の人に対応するという救急医療本来の役割が果たせなくなる懸念がある」と述べて、危機感を示しました。

そのうえで、今の対応について「救急外来に来てもらっても、重症化リスクの低い若い世代の患者さんには、陽性の検査結果を伝えたうえで、解熱剤を処方して水分補給をしっかりして自宅で安静にするようお願いして、診察が終了する場合が多い。コロナを疑う症状を自覚したら薬局で買える抗原検査キットなどで、みずから検査をしたうえで、かかりつけ医や発熱外来に相談、受診してもらうことが重要だと思う」と述べました。

一方で、高齢者や重症化リスクのある人、それに、基礎疾患がない若い人でも症状が重い場合は、早く治療を受ける必要があるとしています。

寺嶋教授は「たとえ若くて重症化リスクが低い場合でも、水分補給や食事ができない、意識がもうろうとする、呼吸が苦しくなっている場合などは、迷わず救急外来を含めて医療機関を受診してほしい。また、小さな子どもは大人より脱水症状になりやすく、自分の症状をうまく伝えられない場合もある。保護者は、ふだんと同じような様子か、水分はとれているかなど注意する必要がある」と強調しました。