味覚研究の最前線 ~塩味が増強されるお箸!?~

視覚や聴覚などの五感の1つである味覚。肥満や高血圧といった生活習慣病の予防などにつなげようと、いま味覚の研究が注目されています。
入試問題に挑戦!
まずは味覚に関する入試問題です。

問題
私たちは腐敗物を酸味、毒物を苦みとして、体に必要なものを甘味やうまみとして感知する。甘味やうまみは5大栄養素のうち何を感知しているといえるか。
(麻布中学校 2022年)
私たちは腐敗物を酸味、毒物を苦みとして、体に必要なものを甘味やうまみとして感知する。甘味やうまみは5大栄養素のうち何を感知しているといえるか。
(麻布中学校 2022年)
解答例は、甘味が炭水化物、うまみがたんぱく質です。
炭水化物は体を動かすエネルギーに。
たんぱく質は筋肉や血液など体をつくるもとになります。
炭水化物は体を動かすエネルギーに。
たんぱく質は筋肉や血液など体をつくるもとになります。
なぜいま味覚研究?味覚問題が病気の原因に
では、なぜいま、味覚の研究が注目されているのでしょうか。
話を聞いたのは、管理栄養士で、徳島大学大学院講師の堤理恵さんです。
話を聞いたのは、管理栄養士で、徳島大学大学院講師の堤理恵さんです。

堤さん
「加齢に伴う味覚の低下が高齢者の健康を害しているのではないか。味覚を改善することが生活習慣病をはじめとする病気を防ぐのではないか。さらにコロナの後遺症で味覚障害が起きている。いろんなものが重なって、今トピックスになっているのではないか」
「加齢に伴う味覚の低下が高齢者の健康を害しているのではないか。味覚を改善することが生活習慣病をはじめとする病気を防ぐのではないか。さらにコロナの後遺症で味覚障害が起きている。いろんなものが重なって、今トピックスになっているのではないか」

そもそも味覚はどのように感じるのか。
舌には「味らい」という器官があります。
味らいの中の細胞が、甘味や塩味などのもとになる物質を感知し、脳に電気信号を送って味を認識しています。
この細胞が減るなど何らかの問題が起きると、味がしっかりと感じられず、余分に糖分や塩分をとってしまい、肥満や高血圧などの生活習慣病を引き起こすおそれがあるということです。
舌には「味らい」という器官があります。
味らいの中の細胞が、甘味や塩味などのもとになる物質を感知し、脳に電気信号を送って味を認識しています。
この細胞が減るなど何らかの問題が起きると、味がしっかりと感じられず、余分に糖分や塩分をとってしまい、肥満や高血圧などの生活習慣病を引き起こすおそれがあるということです。
堤さん
「味らい細胞自体は大人で約7500個持っているが、細胞が新しくなる力が年をとっていくと遅くなってくる。ちゃんと味を感じられることが健康そのものに大事なのではないか」
「味らい細胞自体は大人で約7500個持っているが、細胞が新しくなる力が年をとっていくと遅くなってくる。ちゃんと味を感じられることが健康そのものに大事なのではないか」
うまみの感じにくい人ほど太りやすい!?
味覚に関して去年発表されたのが、「うまみの感じにくい人ほど太りやすい」という研究結果です。
うまみに対する感度の低い人は味をうまく認識できず、甘味のある高カロリーの食品やお菓子などをたくさん食べているため、肥満につながりやすいと報告されました。
うまみに対する感度の低い人は味をうまく認識できず、甘味のある高カロリーの食品やお菓子などをたくさん食べているため、肥満につながりやすいと報告されました。

そこで堤さんは、うまみ感度の低下していた人にうまみ成分のグルタミン酸を食事で多くとってもらう実験を行いました。
その結果、8人のうち5人で1日の摂取カロリーの平均値が減少したといいます。
その結果、8人のうち5人で1日の摂取カロリーの平均値が減少したといいます。
堤さん
「うまみをプラスしてもらうと過食が減った。体重も増加ぎみだったのが抑えられるようになった。肥満を味覚でコントロールするのは意味があるのではないか」
「うまみをプラスしてもらうと過食が減った。体重も増加ぎみだったのが抑えられるようになった。肥満を味覚でコントロールするのは意味があるのではないか」
味覚×テクノロジーで減塩対策!?
一方、味覚を電気の力でコントロールしようという研究も進んでいます。

明治大学教授の宮下芳明さんらが開発したのは、「電気刺激で味をコントロールできるお箸」です。

宮下さん
「食べ物の味を濃く感じさせる。例えば薄味の減塩食はよりしょっぱく感じて普通の食事と大体同じくらいの濃さに感じる」
「食べ物の味を濃く感じさせる。例えば薄味の減塩食はよりしょっぱく感じて普通の食事と大体同じくらいの濃さに感じる」
お箸とデバイスをつなぐと、体に影響しないごく微量の電気が流れ、感じる塩味が1.5倍に増強できるといいます。
減塩のみそ汁をさらに薄味にしたみそ汁で試させてもらいました。
減塩のみそ汁をさらに薄味にしたみそ汁で試させてもらいました。

鎌倉アナウンサー
「確かに薄い」
「確かに薄い」

続いては、お箸にデバイスをつないで同じものを飲んでみます。
本当に味が変わるのか、電気を流してみると…
本当に味が変わるのか、電気を流してみると…

鎌倉アナウンサー
「何か急に味が変わった。しょっぱさというよりは味が深くなった感じ。さっきはお吸い物のような薄味だったのが、いまは普通のみそ汁に。十分ご飯のお供にできるぐらいおいしいみそ汁に変わった」
「何か急に味が変わった。しょっぱさというよりは味が深くなった感じ。さっきはお吸い物のような薄味だったのが、いまは普通のみそ汁に。十分ご飯のお供にできるぐらいおいしいみそ汁に変わった」

味が濃く感じられる秘密は、塩味のもとになるナトリウムイオン。
電気を帯びている性質を利用し舌から浮かせたり舌にくっつけたりしているということです。
電気を帯びている性質を利用し舌から浮かせたり舌にくっつけたりしているということです。

宮下さんは、舌に見立てたクッションなどを使って説明してくれました。

宮下さん
「この電気を使って自分の体をプラスにするとナトリウムイオンもプラスなので、プラスどうし反発して浮かすことができる。この状態でこれが一気に落ちると、もともとの塩味よりも濃く感じるといったことが起こる」
「この電気を使って自分の体をプラスにするとナトリウムイオンもプラスなので、プラスどうし反発して浮かすことができる。この状態でこれが一気に落ちると、もともとの塩味よりも濃く感じるといったことが起こる」
酸味やうまみなど、電気の性質を利用できるものなら味を濃くすることができるというこのお箸。
来年、実用化される予定です。
来年、実用化される予定です。
宮下さん
「減塩をするとより健康維持につながったり、将来の病気が予防できたりする。でもやっぱり味が物足りなかったらおいしくないし楽しくない。このお箸を使っていただくと、健康的な食事がより精神的な満足感が高い状態でできると思う」
「減塩をするとより健康維持につながったり、将来の病気が予防できたりする。でもやっぱり味が物足りなかったらおいしくないし楽しくない。このお箸を使っていただくと、健康的な食事がより精神的な満足感が高い状態でできると思う」
さまざまな形で進む味覚研究。
気になるのは、味覚を鍛えることはできるのかということですが、徳島大学大学院講師の堤さんによりますと、いろんな種類の食べ物をしっかり食べて、味らいの中の細胞の栄養状態をよくし、口の中をきれいにしておくことで味覚を鍛えることができるということです。
子どものうちから味覚に興味をもって食を楽しみ、健康を守ってほしいとも堤さんは話されていました。
気になるのは、味覚を鍛えることはできるのかということですが、徳島大学大学院講師の堤さんによりますと、いろんな種類の食べ物をしっかり食べて、味らいの中の細胞の栄養状態をよくし、口の中をきれいにしておくことで味覚を鍛えることができるということです。
子どものうちから味覚に興味をもって食を楽しみ、健康を守ってほしいとも堤さんは話されていました。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を鎌倉キャスターと考えていきましょう。
コーナーのホームページでは、これまでのおさらいもできます。
下のリンクからぜひご覧ください。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を鎌倉キャスターと考えていきましょう。
コーナーのホームページでは、これまでのおさらいもできます。
下のリンクからぜひご覧ください。