【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(21日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ハルキウ州 “バス停をロシア軍が攻撃 少年ら3人死亡”

ウクライナ東部ハルキウ州のシネグボフ知事は20日から21日にかけて、現地の被害状況をSNS上で明らかにしました。

それによりますと、ハルキウ市では、20日、バス停がロシア軍による攻撃を受け、13歳の少年を含む3人が死亡し、少年の姉で15歳の少女もけがをしたということです。

シネグボフ知事は「彼らはただバスを待っていただけだ。占領者たちは再び市民を襲った。これは新たな恐ろしいテロだ」 としてロシア軍を強く非難しました。

現地の映像では、攻撃を受けたとされるバス停が破壊されているほか、近くにある建物も壁が大きく崩れ、窓ガラスが割れている様子が写っています。

ザポリージャ州で住民にロシアのパスポート配付

ロシア通信は20日、ウクライナ南東部のザポリージャ州の都市エネルホダルで、ロシア当局が住民にロシアのパスポートを配付する様子を伝えました。

エネルホダルはロシア軍が掌握したザポリージャ原子力発電所がある街で、映像ではロシアの国旗が飾られた会場で住民にパスポートが手渡されています。

ロシアは南部のヘルソン州などでもパスポートを発行していてウクライナ側はロシアによる支配の既成事実化が加速するのではないかと警戒を強めています。

広島 ウクライナのジャーナリストらが報告会

ウクライナのジャーナリスト団体と支援団体のメンバー2人が広島市で報告会を開催し、ウクライナの惨状を忘れずに関心を持ち続けてほしいと訴えました。

広島市を訪れたのは、ウクライナのジャーナリスト団体のセルヒイ・シェフチェンコさん(62)とジャーナリストを支援する団体のリュドミラ・メーヒさん(70)です。

21日に市内で開かれた報告会で2人は現地でジャーナリストが置かれている現状を説明し、3日に1人のペースで記者が亡くなっていることや、現地の新聞は広告費が入らないことなどから発行が難しい状況になっていると報告しました。

その上で、現地の記者たちは厳しい状況の中で危険にさらされながらも、一日も早く軍事侵攻を止めたいという思いを持ち世界に真実を伝えるため懸命に取材を続けていると強調しました。

そして「ウクライナでは今も戦火の中で一生懸命生きようとしている人がいることを忘れないでほしいと思います。どうかウクライナの惨状に関心を持ち続けてほしい」と訴えました。

「ノルドストリーム」ガスの供給再開

ロシアからドイツに天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム」が点検のため供給を停止していましたが、このパイプラインを運営するロシアの政府系ガス会社ガスプロムは21日、NHKの取材に対し、ガスの供給を再開したことを明らかにしました。

またドイツのメディア、DPA通信もパイプラインの運営会社にガスの供給再開を確認したと伝えています。

ガスプロムはパイプラインの定期点検の期間を今月21日までとしていて、ドイツではロシア側が経済制裁への対抗として供給を再開しないのではないかとの懸念が広がっていました。

ただ今後、天然ガスの供給が全面的に再開されるかは不透明です。

ゼレンスキー大統領「ウクライナへ近代的な兵器を」

ウクライナのゼレンスキー大統領は20日に公開した動画で、ハイマースなどの追加供与を歓迎したうえで、「ウクライナへの近代的な兵器の供給を増やし、有効な防空手段を提供することが必要だ」と述べていて、ウクライナ軍が欧米からの軍事支援を受けて反転攻勢に出られるかが焦点です。

ロシア・ラブロフ外相「南部や南東部の掌握も視野」

ロシアのラブロフ外相は、20日国営通信社が伝えたインタビューで「今や地理的な目標は変わった。ドンバス地域だけでなく、ヘルソン州やザポリージャ州、さらにほかの地域も含まれる」と述べ、東部2州にとどまらず、南部や南東部など周辺地域の掌握も視野に入れていることを明らかにしました。

また「欧米側はウクライナに射程の長い兵器を供与し、状況を悪化させている。地理的な目標は、今後さらに広がるだろう」と述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米をけん制しました。

プーチン政権はこれまで、ロシア系住民の保護を名目として東部2州の掌握を作戦目標に掲げてきましたが、ラブロフ外相の発言は、支配地域の目標を拡大するもので、東部2州以外への攻撃も正当化するとともに、掌握した地域を将来、一方的にロシアに併合することも視野に入れ、南部などで「ロシア化」を進めたい思惑もあるとみられます。

ドニプロ川に架かる橋をめぐり攻防か

ロシア国防省は20日、東部ドネツク州の武器庫などをミサイルで攻撃したほか、南部オデーサ州ではアメリカの対艦ミサイル「ハープーン」を破壊したと発表しました。

一方、ウクライナ軍はロシア側が掌握したと主張する南部ヘルソン州などで反撃を続けています。

ヘルソン州の親ロシア派勢力の幹部は、ロシアのメディアに対し、ウクライナを縦断するドニプロ川にかかる要衝の橋が、ウクライナ側に攻撃されたと明らかにしました。

親ロシア派勢力は、橋の攻撃に、アメリカが供与した高機動ロケット砲システム=ハイマースが使われたと主張した上で、「被害は深刻だ」としています。

イギリス国防省は20日、この橋は、ロシア軍が物資を補給し、部隊を移動させるために必要なルートだったと指摘し、ドニプロ川を渡る手段をめぐる攻防が、今後の南部の戦況をうらなう重要な要素になると分析しています。

ドイツ 天然ガス供給再開見通し示すもロシアの対応は不透明

ロシアとドイツを結ぶ海底のガスパイプライン「ノルドストリーム」をめぐり、運営するロシアの政府系ガス会社ガスプロムは、今月中旬以降、定期点検を理由にガスの供給を停止し、点検が終わる21日以降のロシア側の対応が注目されています。

こうした中、ドイツ国内でパイプラインを運営する事業者は20日、供給が再開される予定だと発表する一方で、供給量は40%にとどまるという見通しを示しました。

ロシア側は先月、国外に修理に出したタービンが制裁の影響で戻ってこないとして供給量を40%にまで削減していて、プーチン大統領は、20日、タービンが依然、戻っていないとしたうえで「設備が戻らなければ供給量は大幅に減る」とドイツ側をけん制しました。

さらに、今月末には別のタービン1台も修理に出す予定だと主張しました。

これに対してドイツ政府のホフマン副報道官は20日、記者会見で「ガスプロムには供給者としての義務がある」と述べ、供給の全面再開を強く求めましたが、ロシアが契約どおりの十分な量のガスを供給するかどうかは不透明です。

米 高機動ロケット砲システム4基をウクライナに追加供与へ

ウクライナへの軍事支援を協議する国際会合が開かれ、アメリカは、激しい砲撃を続けるロシア軍にウクライナ軍が対抗できるよう、射程が長く、精密な攻撃が可能な高機動ロケット砲システムを、追加で供与する方針を明らかにしました。

この会合はウクライナへの軍事支援を協議するため、アメリカが主催しているもので、20日、オンライン形式で開かれた4回目の会合には、およそ50か国の国防相らが参加しました。

会合にはウクライナのレズニコフ国防相も出席し、ロシア軍がウクライナ東部で掌握する地域を広げようと、激しい砲撃を続けていると説明しました。

これを受けてアメリカのオースティン国防長官は「戦争は重要な局面にあり、ウクライナに対する団結した支援は不可欠で、緊急なものだ」と強調した上で、ウクライナに高機動ロケット砲システム=ハイマースを、追加で4基、供与する方針を明らかにしました。
ハイマースは射程が長く、精密な攻撃が可能とされる兵器で、アメリカはすでに12基を供与し、ウクライナ軍は、ロシア軍の弾薬や物資の供給網のほか、指揮所など軍事拠点に対する攻撃に使っています。

オースティン長官は会合のあとの記者会見で「ロシアは執ような砲撃を続けており、第1次世界大戦の恐怖を思い起こさせる残酷な戦術だ。ウクライナには砲撃に耐え、反撃するための火力が必要で、支援の勢いを維持し、強化するために、われわれは力強く後押ししていく」と強調しました。

ゼレンスキー大統領夫人 米議会で演説「防空システム供与を」

ウクライナのゼレンスキー大統領の妻、オレーナ氏は20日、アメリカの連邦議会で演説し「ロシアが人々の命を奪い、アメリカは命を救っている」と述べ、これまでの支援に感謝を示しました。

そのうえで「本来は望まないことだが、武器の供与をお願いしなくてはならない。空爆や砲撃で人々が死なずにすむよう、防空システムを供与してほしい」と訴えました。

オレーナ氏は、ウクライナで子どもたちが犠牲になったりけがをしたりしていることに触れ「大統領夫妻としてではなく、子どもたちの親としてお願いしている」と述べ、いっそうの軍事支援を求めました。

ウクライナへの軍事支援をめぐっては、ウクライナの国防次官が先月「求めた兵器のうち、10%しか受け取れていない」と述べるなど、供与された兵器を、いかに早く戦闘の前線に届けるかが課題となっています。