第167回直木賞に窪美澄さんの「夜に星を放つ」

第167回芥川賞と直木賞の選考会が東京で開かれ、直木賞に窪美澄さんの「夜に星を放つ」が選ばれました。

窪美澄さんの経歴と作品

直木賞の受賞が決まった窪美澄さんは、東京 稲城市出身の56歳。

短大を中退したあとフリーの編集ライターなどを経て、2009年に短編小説「ミクマリ」で「女による女のためのR-18文学賞」の大賞を受賞しました。

女性の生き方をテーマにした作品を多く手がけ、2018年に「じっと手を見る」、翌年には「トリニティ」という作品で、それぞれ直木賞の候補となりました。

そして今回、3回目の候補で直木賞を受賞しました。
受賞作の「夜に星を放つ」は、かけがえのない家族を死別や離婚で失う人たちの「喪失」をテーマに据え「星座」について織り交ぜながら描いた短編集です。

学校でいじめに遭っている少女と、事故で亡くなった母親との不思議な同居生活をつづった「真珠星スピカ」や、父親の再婚相手との関係に悩む少年と、東京大空襲の様子を絵に描く高齢の女性との交流を描いた「星の随に」など、喪失感を心に抱えながら、その隙間を埋めたいと願う登場人物の心の動きを、繊細に描いた5編の小説が収められています。

窪美澄さん「いかに良質な作品を残していくか」

直木賞を受賞した窪美澄さんは記者会見で、「小説家としては隅の方で生きてきたので、会見に臨んでも冗談じゃないかと思っている。いまは実感がなく、身体的な反応が感情よりも先走って汗が止まりませんが、たぶんうれしいのだと思う」と緊張した表情で述べました。

また、作品の中で新型コロナを取り上げたことについて、「この3年間、非常に重いものをみんなが抱えている。せめて、小説の中では心が明るくなれるようにと思って書いた。年下の友人たちがコロナ禍で婚活アプリにはまっていて、寂しくて心のよりどころを求めているような気がして、それも書いておきたかった」と述べました。

そして、今後の抱負について「デビューが遅咲きで、44歳で最初の本が出たので、作家として残された時間が短いなか、いかに良質な作品を残していくかが課題だ。今、書店が次々に店を畳んで、みんな本を読まなくなっている。さまざまなエンタメがあるが、小説にしか解決できない心の穴のようなものが誰しもにあると思う。私も小説を書いていきたいし、何か心に迷いがあるときにはちょっと近所の本屋さんに行って1冊読んでみてはどうでしょうかと皆さんに伝えたい」と話しました。

選考委員 林真理子さん「つくづく感服した」

直木賞の選考委員の林真理子さんは「窪さんの作品は選考過程で最初から高い得点をとった。短編集は文学賞の選考では不利だとされることもあるが、文章がすばらしく技巧を凝らしている。文章はなめらかに進み構成に無理がなく、短編のお手本のようだと高く評価する人もいた」と述べました。

また「中には新型コロナから逃げることなく日常生活の中で取り上げて1編の小説に仕上げた作品もあった。窪さんは人間というものが分かっているとつくづく感服した」と話していました。