ウクライナ ミサイル攻撃で市民の死者増加 士気低下ねらいか

ウクライナでは16日も、南部オデーサなど、各地でロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎ、市民の死傷者が増え続けています。専門家は「ロシア軍は、戦線から離れた場所にも攻撃することで、ウクライナ国民の士気をくじくねらいがある」と分析しています。

ウクライナでは14日、西部のビンニツァ州へのロシア軍によるミサイル攻撃で、子ども3人を含む24人が死亡し、60人以上がけがをして病院で手当てを受けています。ウクライナの公共放送は、この攻撃で亡くなった4歳のリーザちゃんについて詳しく伝えています。
リーザちゃんはダウン症で、生後6か月のときに心臓の手術も受けたということです。攻撃を受けたのは、母親のイリーナさんに連れられてセラピーを受けた帰りで、リーザちゃんはその場で死亡し母親も大けがをして病院で治療を受けているということです。

ロシア軍によるミサイル攻撃はほかでも相次いでいて地元当局などによりますと、16日は、南部の港湾都市オデーサで男性1人がけがをしたほか、広い範囲で火災になりました。

また、北東部ハルキウ州のチュフイウにも攻撃があり、3人が死亡し、3人がけがをし、ロイター通信のまとめでは、14日以降の都市部への攻撃でウクライナ全土で合わせておよそ40人が死亡したということです。

ウクライナの軍事専門家「ミサイル攻撃は世論影響ねらいか」

ウクライナの軍事専門家はNHKのインタビューで、各地で相次いでいるロシア軍のミサイル攻撃について「人々に恐怖を植え付け、国内世論に影響を与えることをねらっている」という見方を示しました。

ウクライナ軍に長年在籍した経験がある軍事専門家のセルヒー・ズフーレツ氏(54)は、ロシア軍によるミサイル攻撃がウクライナ各地で相次いでいることについて、「ウクライナの人々に恐怖を植え付けることでロシアと交渉すべきだという国内世論を高め、政府への圧力につなげようとしているのではないか」と分析しました。

また、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の掌握に向け、部隊を立て直しているとみられることについて、「部隊の再編がいつ終わるか判断することはできないが、2週間から1か月かかるのではないか。ただ、完全に休止するのではなく攻撃は引き続き行われている」と指摘しました。

一方、ズフーレツ氏は、南部でウクライナ軍が反撃の構えを見せていることについて、本格的な戦闘は始まっていないとの見方を示したうえで「南部のへルソン州を奪い返すためには2、3か月しか残されていない」と述べ、降雨量が増える季節が到来することを考慮すると時間的な猶予はあまりないとの見方を示しました。

そして「東部の戦況次第で、南部にどれだけの兵力を振り分けられるかが決まる」として、東部の戦況が南部の戦線にも重要な意味を持つと指摘しました。

このほか、アメリカやイギリスなど欧米諸国からの武器の支援について「高機動ロケット砲システム=ハイマースは、前線での状況を好転させられると信じている。ただ、われわれの分析ではハイマースなどは少なくとも56基が必要だが、今のところ20基ほどしか提供の約束をされていない」として、さらなる武器の支援が必要だと強調しました。