ウクライナの農産物海上輸送に向け協議進展 戦況はこう着
ウクライナの港からの小麦などの輸出が滞っている問題では、ロシアとウクライナの協議で進展がみられ、食料供給の増加につながるかが注目されています。
一方、ロシア軍はウクライナ各地に砲撃を続けているものの、激戦地の東部ドネツク州では新たな領土の掌握はみられず、戦況はこう着しています。
ロシアとウクライナは13日、ロシア軍による封鎖で黒海に面するウクライナ南部の港からの小麦など農産物の輸出が滞っている問題をめぐり、仲介役のトルコと国連を交えた4者による実務者レベルの協議をトルコで行いました。
協議のあと、トルコのアカル国防相は黒海の海上輸送の調整にあたる機関をイスタンブールに設置することや、航行の安全を確保する方針などで一致したと発表し「来週、合意文書に署名するためトルコで再び協議する」と明らかにしました。
ウクライナは、小麦やトウモロコシ、それにヒマワリ油などの世界有数の輸出国で、各国で食料価格が高騰し食料危機への懸念が強まるなか、供給の増加につながるかが注目されています。
一方、ロシア国防省は13日、南部ミコライウ州ではミサイルによる攻撃などで、ウクライナ軍の兵士420人以上を殺害し、指揮所や弾薬庫などを破壊したと発表しました。
ただ、ロシア軍が東部ドネツク州で部隊を再編しながら、攻撃を続けていることについて、イギリス国防省は14日「ロシア軍は、前線の広い範囲で砲撃を行うが過去72時間で大きな領土の掌握はない」と指摘しました。
また、ロシア軍は兵器が老朽化しているうえ、「旧ソビエト時代の戦術」が今も使われていると指摘し、ロシア側の勢いが失速する可能性もあると分析しています。
そのうえでロシアとウクライナは農産物の輸出をめぐる協議で進展がみられる一方、停戦に向けた交渉は、依然として厳しいという見通しを示しました。
国連事務総長「重要な一歩が踏み出された」
グテーレス事務総長は、技術的な作業が残っているとしながらも、来週にも最終的な合意ができることに期待を示し、ロシアとウクライナの両政府と仲介にあたったトルコ政府に感謝すると述べました。
そのうえで「きょうの合意は、当事者どうしが建設的に対話できることを示す非常によいニュースだ。しかし、平和のためには長い道のりがある」と述べ、国連として、対話を通じた事態の打開に向け仲介の役割などに引き続き取り組む考えを示しました。
ゼレンスキー大統領「食料危機の深刻さ 緩和できる」
そのうえで「協議の成功はわが国だけではなく、誇張なしに、全世界が必要としている。黒海の航行に対するロシアの脅威を取り除くことができれば、世界の食料危機の深刻さを緩和することができる」として世界の市場への食料供給を回復するために、努力を続けていると強調しました。
ゼレンスキー大統領は協議で一定の進展があったと報告を受けたとしていて、詳細については近く、合意するという見通しを示しました。
ウクライナ軍“ロシア軍の弾薬庫を攻撃 車両など破壊”
これに対しウクライナ軍は、ロシアが掌握したと主張する南部ヘルソン州でロシア軍の弾薬庫をロケットで攻撃し、兵器や軍用車両を破壊したとしています。人工衛星から12日に撮影された画像を前日と比べると弾薬庫とみられる建物がなくなっているほか、地面に穴ができ周辺が黒く焦げているのが確認できます。