【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(14日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる14日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

西部ビンニツァ州の街の中心部 攻撃受け少なくとも20人死亡

ウクライナ非常事態庁は14日、西部ビンニツァ州の街の中心部がロシア軍のミサイル攻撃を受け、子ども3人を含む少なくとも20人が死亡したと発表しました。

ゼレンスキー大統領がSNSで公開した、攻撃された直後の街の映像では、
▼街角から黒い煙が立ち上り、
▼道路に面した建物の窓などが破壊された様子が確認できます。

また、ウクライナ警察が公開した映像には、煙があがる建物から担架に乗せて人を運び出す様子や、黒く焼け焦げた車が何台も並んでいる様子がうつっています。

ゼレンスキー大統領は「ロシア軍は毎日ウクライナの市民の命を奪い、子どもを殺害し、軍事的な標的とは無縁の民間施設をミサイルで攻撃している。
テロ攻撃以外のなにものでもない」と投稿し、攻撃を非難しました。

英国防省 “ロシア側の勢いが失速する可能性も”

ロシア軍が東部ドネツク州で部隊を再編しながら、攻撃を続けていることについて、イギリス国防省は14日「ロシア軍は前線の広い範囲で砲撃を行うが、過去72時間で大きな領土の掌握はない」と指摘しました。
また、ロシア軍は兵器が老朽化しているうえ「旧ソビエト時代の戦術」が今も使われていると指摘し、ロシア側の勢いが失速する可能性もあると分析しています。
そのうえで、ロシアとウクライナは農産物の輸出をめぐる協議で進展がみられる一方、停戦に向けた交渉は依然として厳しいという見通しを示しました。

「ノルドストリーム」供給再開しない懸念も

ロシアからバルト海の海底を通ってドイツにつながる天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」を運営するロシアの政府系ガス会社ガスプロムは、先月中旬、ドイツの会社が手がける設備の修理に遅れが生じているなどとして供給量を減らすと発表し、今月11日からは、定期的な点検を理由に供給を停止しています。
ガスプロムはこれまで「ノルドストリーム」で使われるタービンの1つについて、整備を行ったカナダの工場から現地に戻せなくなっているとしていましたが、13日に更新したSNSで、現在もタービンが戻されることが書類上、保証されていないと強調しました。
そのうえで「安全な運用の確保について客観的な結論を出すことは不可能だ」としています。
カナダ政府は今月に入り、タービンの輸送を許可すると発表していますが、ロシア側が経済制裁を科すドイツに揺さぶりをかけるため、点検が終わる予定の今月21日以降も供給を再開しないのではないかという懸念が出ています。

北朝鮮 親ロシア派支配の一部地域 “独立国家”承認と発表

北朝鮮国営の朝鮮中央通信によりますと、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州にある親ロシア派の武装勢力が事実上、支配している一部の地域について、チェ・ソニ外相が13日、武装勢力側に書簡を送り、独立国家として承認することを決定したと通知しました。

チェ外相はこの中で「自主、平和、親善の理念に従って、国家関係を発展させていく意思を表明した」としていて、関係強化を図る意向を示しています。

これに対してウクライナ外務省は声明を発表し「北朝鮮がいわゆる『独立』を承認する決定を下したことを強く非難する。ウクライナの憲法や国連憲章、国際法の基本的な規範と原則の重大な侵害だ」としています。

そして「このような非友好的な行為に対し、ウクライナは北朝鮮との国交断絶を宣言する」とし、自国の主権や領土の保全への侵害に対しては厳しく対応し続けると強調しました。

ウクライナのこの地域はことし2月にロシアが、先月にはシリアが独立国家として一方的に承認しています。

ウクライナ 農産物輸出へ前進か トルコで4者協議

ロシアとウクライナは13日、ロシア軍による封鎖で、黒海に面する南部の港からウクライナ産の小麦などの農産物の輸出が滞っている問題をめぐって、仲介役のトルコと国連を交えた4者による軍などの実務者レベルの協議をトルコのイスタンブールで行いました。

協議のあとトルコのアカル国防相は声明を発表し、黒海の海上輸送の調整にあたる機関をイスタンブールに設置することや、航行の安全を確保する方針などで一致したことを明らかにしました。

そのうえで、「来週、合意文書に署名するためトルコで再び協議する」としています。

またロシア国防省は「迅速で実効的な解決に向けたパッケージを提案した」とする声明を発表していて、農産物の輸出に向け、ロシアとウクライナとの間で前進があったとみられます。

世界では小麦などの価格が高騰し、食料危機への懸念が高まっているだけに供給が増えることにつながるかが焦点です。

国連事務総長「重要な一歩が踏み出された」

トルコで行われた4者による協議の結果を受けて、国連のグテーレス事務総長は13日、ニューヨークの国連本部で急きょ記者会見を開き「ウクライナの穀物などを黒海を通じて安全に輸出するため、きょう、重要な一歩が踏み出された。世界中の飢餓に苦しむ人を減らす希望の光だ」と述べ、成果を強調しました。

グテーレス事務総長は、技術的な作業が残っているとしながらも、来週にも最終的な合意ができることに期待を示し、ロシアとウクライナの両政府と仲介にあたったトルコ政府に感謝すると述べました。

そのうえで「きょうの合意は、当事者どうしが建設的に対話できることを示す非常によいニュースだ。しかし、平和のためには長い道のりがある」と述べ、国連として、対話を通じた事態の打開に向け仲介の役割などに引き続き取り組む考えを示しました。

ゼレンスキー大統領「食料危機の深刻さ 緩和できる」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、13日に公開したビデオメッセージで「国連とトルコのそれぞれの努力に感謝している」と述べました。

そのうえで「協議の成功はわが国だけではなく、誇張なしに、全世界が必要としている。黒海の航行に対するロシアの脅威を取り除くことができれば、世界の食料危機の深刻さを緩和することができる」として世界の市場への食料供給を回復するために、努力を続けていると強調しました。

ゼレンスキー大統領は協議で一定の進展があったと報告を受けたとしていて、詳細については近く、合意するという見通しを示しました。

米国務長官 ロシアが最大160万人を連れ去ったと非難

アメリカのブリンケン国務長官はウクライナに軍事侵攻を続けるロシアが、支配下に置いた地域から子どもたちを含む最大160万人の市民をロシアに連れ去ったとして非難しました。

ブリンケン国務長官が13日に発表した声明によりますと、ロシアに連れ去った人数は、90万人から最大160万人で、このうち子どもたちはおよそ26万人と推計されるとしています。

また、連れ去った人たちの生体情報や個人情報を収集してロシアに滞在することに同意する書類に強制的に署名させ、ウクライナに自由に帰国できないようにしているとしています。

さらに市民のパスポートを押収してロシアのパスポートを発給することで、ウクライナの人口構成を変えようとしているとしています。

ブリンケン長官は「市民の違法な移送や連れ去りは、ジュネーブ条約に著しく違反しており、戦争犯罪だ」と非難していて、国際社会とともに、ロシア政府の責任を追及していく姿勢を強調しています。

ウクライナ軍 南部へルソン州でロシア軍の弾薬庫攻撃

ウクライナでロシア軍は東部ドネツク州の完全掌握を目指して攻撃を続けているほか、13日には南部ミコライウ州の各地をミサイルで攻撃し、指揮所や弾薬庫などを破壊したと発表しました。

これに対しウクライナ軍は、ロシアが掌握したと主張する南部ヘルソン州でロシア軍の弾薬庫をロケットで攻撃し、兵器や軍用車両を破壊したとしています。

人工衛星から12日に撮影された画像を前日と比べると弾薬庫とみられる建物がなくなっているほか、地面に穴ができ周辺が黒く焦げているのが確認できます。

ヘルソンから避難の住民「ウクライナ軍の反撃始まった」

ウクライナ軍がロシア軍が掌握したと主張する南部ヘルソン州などを奪還する方針を示す中、ヘルソンから避難した住民がNHKのインタビューに応じ、ウクライナ軍がロシア軍が駐留するヘルソンの空港などに対する砲撃を強めている様子を語りました。

ヘルソン州からウクライナ西部に避難しているNGO職員のオルガ・ジュコバさん(47)は、13日、NHKのインタビューに応じ、今もヘルソン市内に残る母親と姉と連絡を取っているとしたうえで「以前に比べて、市の中心部での爆発音が増えているほか、ロシア軍が駐留するヘルソンの空港に対する砲撃が増えているということだ。母親が住む市内の家の近くにもロシア軍の拠点があり、数日前にウクライナ軍の攻撃による大きな爆発音が聞こえたと話していた」ということです。

こうした状況からジュコバさんは「市民はウクライナ軍の反撃が始まったと受け止めている」として、奪還に向けてウクライナ軍が動き出したと見ていると話しました。

一方で、ロシア軍の動きについては「ロシアの占領者は、検問所の数を増やし通過する市民の書類をしつこく確認している」として、市民に対する警戒や監視を強めているということです。

こうした中、ウクライナ政府は、ロシア軍から領土を奪還する方針を示し、南部ヘルソン州と、南東部ザポリージャ州の住民に対し、できるだけ早く避難するよう呼びかけています。

これについて、ジュコバさんは「避難の呼びかけはとても適切なことだが、残念ながら、ロシアの占領者は市民が脱出するのをあらゆる手段で阻んでいる」として、多くの市民が取り残されている現状に懸念を示しました。

ウクライナ政府 農産物輸出ルート稼働と発表

ウクライナ南部オデーサの港が面する黒海がロシア軍に封鎖され、農産物の輸出が滞っている状況が続いています。

こうした中、ウクライナ政府は12日、隣国ルーマニアとの間に流れるドナウ川沿いにある港から黒海を抜けて輸出するルートが稼働し始めたと発表しました。

発表によりますと、この4日間でウクライナの農産物を輸出するため16隻の貨物船がドナウ川沿いの港に向かうことが可能になったということです。このルートの活用によって農産物の輸出は月に50万トン増やせるとの見通しも明らかにしました。

イギリスの公共放送BBCによりますと、川沿いの港に到着した貨物船は農産物を積んだあと、ドナウ川の河口を通って黒海に出て、ルーマニアとブルガリアに向かうということです。

これまでロシア軍がドナウ川河口近くの黒海にあるズミイヌイ島を占拠していましたが、この島をウクライナ軍が奪還したことで今回稼働を始めたルートでの航行が可能になりました。