1人目に話を聞いたのは、河川工学が専門で各地の河川災害を調査してきた東京理科大学 二瓶泰雄 教授です。
埼玉県鳩山町では、冠水した道路を走っていた軽乗用車が流されて道路脇の農地に転落しました。乗っていた女性は自力で脱出し無事でした。
ドライブレコーダーの映像や運転していた女性の話によると、急にハンドルが効かなくなりあっという間に流されて転落したということです。

何が生死を分けるのか 首都圏の大雨被害で見えたポイントは
12日夜の首都圏の大雨では大きな人的被害はありませんでしたが、専門家は「かなり危険な状態で、ひとつ間違えば大きな災害につながっていた」と警鐘を鳴らしています。
何が危険だったのか。次に同じような大雨になったらどう行動すればいいのか。今回のケースを踏まえて2人の専門家に命を守るポイントを教えてもらいました。
二瓶教授ポイント(1)車は簡単に流される 冠水道路は走らない

(二瓶教授)
「冠水した道路では車に浮力が働くうえに、水に流れがあれば車でも簡単に流されます。車種にもよりますが、数十センチ浸水すればエンジンが止まるし、ドアが開かなくなる危険もあります。徒歩よりも車の方が浸水の深い場所まで耐えられるという訳ではありませんし、過去の災害でも繰り返し被害が出ているので、冠水した道路は走らないで欲しい」
「冠水した道路では車に浮力が働くうえに、水に流れがあれば車でも簡単に流されます。車種にもよりますが、数十センチ浸水すればエンジンが止まるし、ドアが開かなくなる危険もあります。徒歩よりも車の方が浸水の深い場所まで耐えられるという訳ではありませんし、過去の災害でも繰り返し被害が出ているので、冠水した道路は走らないで欲しい」
二瓶教授ポイント(2)橋の近くは特に危険 早めに避難を
埼玉県を流れる「鳩川」では氾濫が発生しました。
現場の橋の欄干には大量の草や木が絡みついていて、橋の上流側ではあふれた水の勢いでフェンスが倒れていました。
現場の橋の欄干には大量の草や木が絡みついていて、橋の上流側ではあふれた水の勢いでフェンスが倒れていました。

二瓶教授によると、川の水位が上がると橋には草木や流木、ごみがたまり水の流れを妨げるため、▽橋の近くでは急激に水位が上がりやすく、▽橋を避けるように水が流れる「迂回流(うかいりゅう)」と呼ばれる現象もたびたび発生するということです。

(二瓶教授)
「橋に草木や流木がたまる状況が大規模になると、広範囲の浸水につながります。 橋の近くはよりリスクが高いと考えて早めに避難することが大切です。避難する際も橋を渡るようなルートは避けてください」
「橋に草木や流木がたまる状況が大規模になると、広範囲の浸水につながります。 橋の近くはよりリスクが高いと考えて早めに避難することが大切です。避難する際も橋を渡るようなルートは避けてください」
二瓶教授ポイント(3)「アンダーパス」は通らない
埼玉県滑川町では線路の下の「アンダーパス」が冠水し、車2台が動けなくなりました。

(二瓶教授)
「短時間に大雨が降ると排水が追いつかなくなって水はアンダーパスのような周囲よりも低い場所に集まります。運転していると浸水の深さがわかりにくく、過去にはアンダーパスが冠水していることに気づかずに 侵入して被害にあうケースもありました。事前にアンダーパスの場所を確認し大雨の際は通らないようにしてください」
「短時間に大雨が降ると排水が追いつかなくなって水はアンダーパスのような周囲よりも低い場所に集まります。運転していると浸水の深さがわかりにくく、過去にはアンダーパスが冠水していることに気づかずに 侵入して被害にあうケースもありました。事前にアンダーパスの場所を確認し大雨の際は通らないようにしてください」
二瓶教授ポイント(4)川沿いの道路は避ける
埼玉県を流れる鳩川沿いでは、護岸が崩れる被害も確認されました。
大雨で水位が上昇すると水の勢いも強くなるため、たとえアスファルトの道路であっても、護岸が削り取られて崩れることがあります。
二瓶教授によると、川がカーブしている場合には、遠心力が働き、左カーブなら右岸側、右カーブなら左岸側の護岸に、より力がかかるためリスクが高いということです。
大雨で水位が上昇すると水の勢いも強くなるため、たとえアスファルトの道路であっても、護岸が削り取られて崩れることがあります。
二瓶教授によると、川がカーブしている場合には、遠心力が働き、左カーブなら右岸側、右カーブなら左岸側の護岸に、より力がかかるためリスクが高いということです。

(二瓶教授)
「過去の災害でも川沿いの道路が崩落していることに気づかず転落して死亡するケースが相次いでいます。避難する際にはカーナビの指示通りにルートを決めるのではなく、川沿いの道路を避けて下さい」
「過去の災害でも川沿いの道路が崩落していることに気づかず転落して死亡するケースが相次いでいます。避難する際にはカーナビの指示通りにルートを決めるのではなく、川沿いの道路を避けて下さい」
二瓶教授ポイント(5)都市河川では気象情報を見て避難の判断を
大雨で都内を流れる目黒川でも、目黒区の観測点で一時、氾濫危険水位を超えました。水位の記録を確認すると、目黒川では12日午後10時から13日午前0時までの2時間で2.7メートルも水位が上がっていました。

都市部の河川の水位が急激に上がって被害が出るケースは過去にもあり、2008年には神戸市内を流れる都賀川の水位が10分間でおよそ1メートル30センチ上昇し、遊びに来ていた小学生や保育園児など5人が流されて死亡しました。

(二瓶教授)
「川の水位を見てまだ大丈夫と思っていると一気に水位が上がって逃げ遅れます。 気象情報を確認し、周辺や上流で雨が降っている時には川から離れることが大切です。東京であれば50ミリの雨がひとつの目安です」
「川の水位を見てまだ大丈夫と思っていると一気に水位が上がって逃げ遅れます。 気象情報を確認し、周辺や上流で雨が降っている時には川から離れることが大切です。東京であれば50ミリの雨がひとつの目安です」
牛山教授ポイント(1)記録的短時間大雨情報 連続で安全確保
2人目に話を聞いたのは豪雨災害の被害実態の調査を長年続けている静岡大学の牛山素行 教授です。
12日夜の雨では埼玉県内で合計9回も「記録的短時間大雨情報」が発表されました。これは災害につながるような猛烈な雨が降っていることを伝える情報です。
12日夜の雨では埼玉県内で合計9回も「記録的短時間大雨情報」が発表されました。これは災害につながるような猛烈な雨が降っていることを伝える情報です。

牛山教授らのグループが2016年から2020年の「記録的短時間大雨情報」を検証した結果、▽1回出た自治体の5割余り、▽複数回出た自治体の8割余りで何らかの災害が起きているということです。
実際に12日は▽鳩山町で3回、▽東松山市で2回発表されたほか、▽嵐山町や坂戸市などで発表され土砂災害や川の氾濫が発生しました。
(牛山教授)
「『記録的短時間大雨情報』が同じような場所で繰り返し発表された場合には災害が発生している可能性が極めて高いと思って下さい。周囲では浸水や土砂災害などが発生し、危ない状態になっていてもおかしくなく、直ちに安全を確保して下さい」。
実際に12日は▽鳩山町で3回、▽東松山市で2回発表されたほか、▽嵐山町や坂戸市などで発表され土砂災害や川の氾濫が発生しました。
(牛山教授)
「『記録的短時間大雨情報』が同じような場所で繰り返し発表された場合には災害が発生している可能性が極めて高いと思って下さい。周囲では浸水や土砂災害などが発生し、危ない状態になっていてもおかしくなく、直ちに安全を確保して下さい」。
牛山教授ポイント(2)無理して外に出ない
牛山教授は「記録的短時間大雨情報」が繰り返し発表されているような場合には、無理して外に出ないことも必要だと指摘します。今回の大雨でも屋外を移動中に災害にあうケースが相次ぎました。
牛山教授によると1999年から2020年までの風水害による犠牲者1465人のうち、およそ5割が屋外で死亡していて、大雨の際の屋外での行動は危険を伴うということです。
(牛山教授)
「周囲の状況が悪化している場合には屋外に出て離れた避難場所を無理に目指すのではなく、自宅の2階に上がったり近所の頑丈な建物に移動するなどして、安全を確保して欲しい」
牛山教授によると1999年から2020年までの風水害による犠牲者1465人のうち、およそ5割が屋外で死亡していて、大雨の際の屋外での行動は危険を伴うということです。
(牛山教授)
「周囲の状況が悪化している場合には屋外に出て離れた避難場所を無理に目指すのではなく、自宅の2階に上がったり近所の頑丈な建物に移動するなどして、安全を確保して欲しい」
牛山教授ポイント(3)自治体の避難情報 間に合わないことも
また今回、大雨となった鳩山町では町から「避難指示」や「高齢者等避難」の情報が発表されていませんでした。
町は「すでに道路冠水などが起きている中で避難を促す情報を出すと二次災害が起きるおそれもあり、防災無線などで警戒を呼びかけることとし、避難指示などは発表しなかった」としています。
町は「すでに道路冠水などが起きている中で避難を促す情報を出すと二次災害が起きるおそれもあり、防災無線などで警戒を呼びかけることとし、避難指示などは発表しなかった」としています。

(牛山教授)
「自治体が発表する避難の情報が間に合わないこともあります。記録的短時間大雨情報が続けて出ている場合など、直ちに身を守る行動を取ることが必要なケースもあり、自治体の避難情報だけでなく▽大雨による災害の危険度を地図上に色で示す危険度分布=キキクルや▽土砂災害の危険度を示す「土砂災害警戒情報」など、複数の防災情報を参考にすることも重要です」
「自治体が発表する避難の情報が間に合わないこともあります。記録的短時間大雨情報が続けて出ている場合など、直ちに身を守る行動を取ることが必要なケースもあり、自治体の避難情報だけでなく▽大雨による災害の危険度を地図上に色で示す危険度分布=キキクルや▽土砂災害の危険度を示す「土砂災害警戒情報」など、複数の防災情報を参考にすることも重要です」