安倍元首相銃撃 容疑者“宗教団体 総裁狙い火炎瓶用意”と供述

安倍元総理大臣が演説中に銃撃されて死亡した事件で、逮捕された容疑者が、恨みがあったとする特定の宗教団体について、「これまで団体の総裁をずっと狙っていて、来日した際に火炎瓶を用意して会場を訪れるなどしたがうまくいかなかった」という趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で分かりました。
警察当局は団体への執ような恨みがあったとみて、元総理大臣の襲撃につながったいきさつを詳しく調べています。

今月8日、奈良市で演説をしていた安倍元総理大臣が銃で撃たれて死亡し、警察は奈良市に住む無職の山上徹也容疑者(41)を逮捕して、殺人の疑いで捜査しています。

これまでの調べで、山上容疑者は恨みがあったとする特定の宗教団体について、「母親が団体にのめり込み、多額の寄付をするなどして家庭生活がめちゃくちゃになった」という趣旨の供述をしていることが分かっています。

容疑者がその後の調べに対し、「これまで団体の総裁をずっと狙っていて、数年前に韓国から来日した際には、火炎瓶を用意して愛知県の会場を訪れたが、信者以外は中に入れず、うまくいかなかった」という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材で分かりました。

また、「かつてはナイフを持って団体が会合を行っている施設などの周辺をうろついていたこともある」と話しているということです。

警察当局は、長年にわたる団体への執ような恨みがあったとみて、元総理大臣の襲撃につながったいきさつを詳しく調べています。

発砲地点から約90m先の立体駐車場の壁に弾痕か

警察は13日早朝に現場周辺の道路を封鎖し、これまでより範囲を広げて大規模な検証を行い、容疑者が銃を撃った地点からおよそ90メートル先にある立体駐車場の壁に銃の弾が当たったような穴が3か所あいているのを確認しました。

穴は壁面の4メートルから8メートルの高い位置にあったため、警察は午後3時すぎから高所作業車を出して、中の状況を調べました。

その結果、警察によりますと、複数の穴に弾丸のような金属片がめり込んでいるのが見つかったということです。

これらは、発砲地点と安倍元総理大臣が演説していた地点の延長線上にあり、容疑者が撃った銃の弾と考えても矛盾はないということです。

警察は穴の中から金属片を回収して鑑定するとともに、容疑者の作った手製の銃が強い威力を持っていたとみて捜査を進めています。
これについて銃器評論家の津田哲也さんは、これまでに報道された内容や映像を踏まえ、「容疑者は一度に複数の弾が飛び出す、散弾銃で用いるような弾丸を使用していたとみられるが、本物の散弾銃は有効射程がおよそ100メートルあり、十分な殺傷力を持ったままほぼ直進で飛ぶ。容疑者がつくった銃は本物の散弾銃と変わらない威力があったのではないか」と指摘しています。
そのうえで「殺傷力のある弾1発1発が拡散するので、周囲の人が被害を受けるおそれは十分にあったと思う」と話しました。

威力については「容疑者がつくった銃弾は、本来であればクマなどの大型動物を対象にして使うサイズと見られ、拳銃とは比べ物にならない殺傷力がある」と指摘しています。

一方、容疑者がインターネット上の動画を参考に銃を製造したという趣旨の供述をしていることについては「銃の構造を解説する海外の報道番組などがアップロードされていて、それらの断片的な情報を参考に自分なりに工夫してつくったのだと考えられる。法的な規制は難しく、現時点では動画投稿サイトの自己規制で削除するなど、民間レベルで規制する以外は対応は難しいのが現状だ」と話しています。

宗教施設の近くにある防犯カメラの映像では発砲音のような音

逮捕された山上容疑者が、手製の銃の試し撃ちをしたと供述している、奈良市内の宗教施設の近くにある防犯カメラの映像では、発砲音のような音が確認できます。

容疑者は、事件前日の今月7日の未明、奈良市内にある宗教団体の施設で試し撃ちをしたと供述し、近くに住む住民も「午前4時ぐらいにバーンと破裂するような音を1回聞いた」などと話しています。

この宗教団体の施設から80メートルほど離れた住宅の玄関近くに設置された防犯カメラの映像では、今月7日の午前4時ごろ、発砲音のような、「パーン」という乾いた音が1回、確認できます。

この住宅に住む男性によりますと、奈良県警の担当者が13日、防犯カメラの映像を確認するため自宅を訪ねてきたということです。

男性は、「当時は音に気がつきませんでしたが、容疑者が家の近くで試し撃ちしたという話を聞いて驚いています」と話していました。

容疑者が登録していた人材派遣会社は

山上容疑者が登録していた大阪府内の人材派遣会社によりますと、容疑者はおととし10月から、京都府内の企業の倉庫でフォークリフトを運転する仕事をしていたということです。

おととし9月に派遣会社に応募し、面接をした担当者は、容疑者について「もの静かな印象で、ことばづかいが丁寧で口かずがとても少ない人間だと感じた」と話していたということです。

履歴書にはこれまでの職歴として、アルバイトや派遣の仕事を転々としていた経歴に加え、測量に関係する資格や、宅地や建物の取り引きができる資格、それに、家計に関する金融や税制の資格などを取得していたと記されていたということです。

このほか、趣味の欄には、映画鑑賞や読書、パソコンゲームなどと書かれていたといいます。

容疑者は、去年は特段のトラブルもなく仕事を続けていましたが、ことしに入って、トラック運転手との間で口論になったことから、派遣会社の担当者が後日、指導を行ったところ素直な反応だったということです。

その後、ことし2月には体調不良を訴えて6日間休み、本人は「心筋あるいは食道の関係ではないか。ストレスが原因だと思う」と話していたということです。

まもなく職場に復帰しましたが、ことし4月には再度、体調がよくないと訴え、4月20日の勤務を最後に有給休暇を取ったうえで、退職したということです。

派遣会社の社長は「このような事件が起こり動揺しています」と話していました。

事件現場近くの献花台には13日も大勢の人

奈良市の事件現場近くに設けられた献花台には、事件から5日たった13日も大勢の人が訪れ手を合わせていました。

午後1時すぎには、献花に訪れた200人余りが列を作り、花を供えて手を合わせていました。

奈良県天理市から訪れた60代の女性は、「ありがとうございますの気持ちと安らかにお休みくださいと伝えにきました。安倍元総理大臣には直接お会いしたこともあったのですが、気さくに声をかけてくださるすばらしいお人柄でした。事件はあってはならないことで残念でしかたがありません」と話していました。

また、奈良市から子どもと親子3人で訪れた20代の父親は、「これまで日本のために働いてくださった安倍元総理大臣ということで、事件後から胸が締めつけられる思いがあったのでその気持ちをお伝えしました。実際にお会いしたことはありませんでしたが朗らかな印象があったからこそ胸にくるものがあり悲しい気持ちです」と話していました。