【詳細版】ジェンダーギャップ指数 116位 国内の動きは

【詳細版】ジェンダーギャップ指数 116位 国内の動きは
世界各国の男女間の平等について調べた調査で、日本は146か国中116位でした。去年の120位よりは順位を上げたものの、政治参加や経済の分野で依然として大きな格差があると指摘されました。

そもそもジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダーギャップは、男らしさや女らしさなど、社会的・文化的に作り出された性差によって生まれる不平等や格差のことをいいます。

それを可視化したのが「ジェンダーギャップ指数」です。
国際機関の「世界経済フォーラム」が格差の解消を目的に2006年から毎年公表しています。

調査するのは「政治参加」「経済」「教育」「健康」の4つの分野。
指数は、1が男女の完全平等、0が完全不平等となり、数値が低ければ低いほど男女の格差があることを示しています。

調査結果の詳細

日本の結果を詳しく見ていきます。
総合スコアの順位は、G7=先進7か国のほかの国と大きく引き離され、最も低くなっています。
1位 アイスランド、2位 フィンランド、3位 ノルウェー、4位 ニュージーランド、5位 スウェーデン、6位 ルワンダ、7位 ニカラグア、8位 ナミビア、9位 アイルランド、10位 ドイツ(G7)…15位 フランス(G7)…22位 イギリス(G7)…25位 カナダ(G7)…27位 アメリカ(G7)…63位 イタリア(G7)…115位 ブルキナファソ、116位 日本(G7)117位 モルディブ

(総合スコア)
日本:0.650 対前年比↓(2021年 0.656)
116位 対前年比↑/146か国(2021年 120位/156か国)

平均:0.681
※人口加重平均

4つの分野別にみると、教育と健康はギャップがないか、あっても小さい一方、政治、経済の分野ではギャップが大きくなっています。
(教育)
日本:1.000 対前年比↑(1位 対前年比↑) ※1.000の国はほかにもあります
平均:0.944
▽「教育」のコア指数
識字率:1.000→(1位→)
初等教育の就学率:1.000→(1位→)
中等教育の就学率:1.000↑(1位↑)
高等教育の就学率:数値なし

(健康)
日本:0.973→(63位↑)
平均:0.958
▽「健康」のコア指数
出生時男女比:0.944→(1位→)
健康寿命:1.039↓(69位↑)

(経済参画)
日本:0.564↓(121位↓)
平均:0.603
▽「経済参画」のコア指数
労働参加率:0.750↓(83位↓)
同一労働における賃金の格差:0.642↓(76位↑)
推定勤労所得:0.566↑(100位↑)
管理職:0.152↓(130位↑)
専門・技術者:数値なし

(政治参画)
日本:0.061→(139位↑)
平均:0.220
▽「政治参画」のコア指数
国会議員:0.107↓(133位↑)
閣僚:0.111→(120位↑)
最近50年における行政府の長の在任年数:0.000→(78位↓)

専門家「日本のポテンシャルはとても高い」

OECD東京事務所の元所長で、スタートアップ企業などに投資するファンド、MPower Partnersのゼネラル・パートナー村上由美子さんは、日本の順位が低い理由をこう指摘します。
「変化のスピードが他の国のほうが早いことがあります。日本の20年前、30年前と比べるとここまできたか、と言えますが、他の国がもっと頑張っているので順位が上がらないのです。

性別、年齢、国籍などの多様性があるのとないのとでは新しいモノを作る力、イノベーションを促進する環境が変わってきます。投資家の間では、多様性を高めて企業価値を高めるというのは共通認識となっています」
「教育や健康の分野でよいスコアが出ていて、日本の女性はとてもポテンシャルが高い。世界でも最高レベルの人的資源なのに、それを生かし切れていない。土台はもうできているので、あとは仕組みを変えていくこと。どう活躍する舞台を作っていくか。その改革ができれば、舞台に立つ女性はいるということです。仕組みを変えると、世界が驚くほど変わるはずです」

管理職の積極的な育成に取り組む企業は

従業員の6割以上を女性が占めている損害保険大手の損害保険ジャパンは、女性管理職の割合が2010年度の2.8%から昨年度は26.9%とおよそ10倍になりました。

2023年度末までに30%に引き上げる目標も、達成できる見込みだということです。

また、取締役7人のうち2人が女性で、いずれも生え抜きの社員からの登用です。

会社では管理職を育成するため2011年以降、「女性経営塾」という社の内外から講師を招いたセミナーを開催してきたほか、現在は社員が自身のキャリアアップについてイメージできるよう、女性の管理職や役員からこれまでの経験などについて直接話を聞く機会を設けています。

また、人事制度上、女性を中心に転勤が難しい社員は昇進が遅れてしまっていましたが、これをおととし10月に改めました。
損害保険ジャパン 人事部 吉池玲子 課長代理
「早い段階から『女性が多いからこそ女性に活躍してもらわなければ持続的な企業の成長が見込めない』という危機感があったことが、取り組みにつながっています。子育てなどで大変だろうと、過度に上司が気を遣って仕事を任せないなどの『アンコンシャスバイアス』に陥っているケースもあると思うので、上司がしっかり経験を積ませてキャリアアップさせる環境を整えていきたい」

従業員の賃金格差を調査する企業も

働く女性の待遇改善につなげるため、国は大企業に対し、従業員の男女の賃金差について開示を義務づけました。

対象となる企業の多くは、今の事業年度分について来年6月末までに公表することになりますが、これに先立ち、大手繊維メーカーの「帝人」は、2020年に従業員の賃金格差を調査しました。

対象は、日本国内のほかアメリカやヨーロッパ、アジアにある主要なグループ会社。部長以上クラス、課長、総合職、一般職の4つに区分し、それぞれの男女の賃金を比較しました。

その結果、国内では男女が同じ昇給制度で昇進していくため、職位が同じなら賃金格差がほとんどないことがわかりました。

一方、育児休業を取得する女性が多く、昇進のタイミングが男性よりも遅れるケースがあること、管理職の女性比率が低いことによって、全体では男女の賃金格差が生じていたということです。

この調査結果を受けて、会社では昇進に影響を与える要素として「育休」があると判断。昇進試験の受験資格を育休中もキープできるよう社内の規定を見直しました。

また女性管理職の育成にも力を入れ、数値目標を設定。2019年10月には117人だった女性管理職を2022年度末にはおよそ1.5倍の174人まで増やし、2031年には管理職全体の13%にすることを目指しています。
帝人グループ 人財開発部 原美奈子 部長
「これまでは女性管理職の人数や割合だけでダイバーシティの度合を測っていましたが、別の尺度で可視化することで、今まで気付かなかった課題を把握して改善策につなげることができました。
賃金格差の数字を出して公表するのが目標ではなくて、なにが男女の賃金格差につながってるのかを分析し、自社の課題は何か、深掘りするツールとして使うことが重要だと思っています」

参議院選挙で女性候補の当選過去最多となったものの…

女性の政治参加について詳しい上智大学法学部の三浦まり教授は、ことしのジェンダーギャップ指数について「順位は少し改善したものの、対象国が減っている上、個別のスコアはむしろ悪化している。特に政治や経済の分野でのジェンダーギャップが大きいことが明らかになり、大きな課題が残されていると感じました」と話しました。

今月10日に行われた参議院選挙では、女性候補の当選者が35人と過去最多になりました。その結果、参議院議員のうち女性の占める割合は25.8%と改選前に比べて2.8ポイント上昇することになります。
ただ、衆議院の女性議員の割合は9.9%にとどまっています。
三浦教授
「参議院は少しずつ女性議員を増やしている一方で、衆議院は相当大きな改革をしないかぎり10年たってもこのままだと思います。女性に公認を出すかどうか判断する政党の責任です」
衆議院で女性議員が少ない背景については、小選挙区の場合、地元の祭りや会合への出席など対面での活動が重視され、子育てとの両立やハラスメントの問題もあって女性が立候補しづらい状況があるとしています。
三浦教授
「いろんな人が立候補しやすくなるという意味でも、候補者などの一定割合を女性に割り当てる『クオータ制』は効果的です。数あわせと批判する人もいますが、環境整備を加速化させるためのツールになります。実は今の選挙は男性にとっても、若い人や障害者にとっても入りにくく多様性に欠けています。女性が擁立しやすくなるという意味でも、数値目標を設けることで、そもそもの選挙制度を変えていかないといけない」

女性議員を増やす“裏技” 有権者にできること

「2枚目の投票用紙には政党名ではなく女性候補者の個人名を」―

参院選を前に、SNSではこんな呼びかけが広がりました。この「#女性に投票チャレンジ」というキャンペーンを展開したのは、大学生から40代の有志メンバーで作るグループです。
発起人のひとり、「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さん。
きっかけは、子育て政策に関する国会審議に参考人として出席したとき、目の当たりにした風景でした。
天野妙さん
「ほとんどが中高年の男性議員で、バッシングのようなやじがすごかったんです。こんな世界で活動している女性議員へのリスペクトを感じるとともに、女性議員が能力を発揮できるような環境を作るためにも、女性議員を少なくとも3割まで増やす手伝いができないか、と思いました」
女性議員を増やすために、なにができるのか。参院選で注目したのは、投票用紙が選挙区と比例代表の2枚ある点です。

このうち比例代表の投票用紙には多くの有権者が政党名を書きますが、候補者の個人名を書くこともできます。比例代表では各党が決めた特定枠以外は、個人名での得票が多い候補者順に当選が決まるため、天野さんは選挙区の次に投票する比例代表、つまり「2枚目」に女性候補者の名前を書けば、女性が当選する確率が高くなると考えました。

メンバーはインスタグラムやTikTokなどを活用して「#2枚目は女性」のハッシュタグなどで投票を呼びかけ、候補者への政策アンケートなども紹介しました。

今回の参院選で当選した女性候補35人のうち、14人が比例代表での当選でした。
noteを担当したShimaさん
「女性議員が結果として増えたのはよかったし、2枚目の投票用紙に個人名を書いた投票者も増えました。私たちの発信も少しは寄与できたんじゃないかなと思います」
TikTokを担当した大島碧生さん・大学4年
「以前、市長選のボランティアをしたときに、選挙が『おじさんたちの運動会』になっていると感じました。今回のキャンペーンは例えるなら『女性たちのフリーマーケット』。デザインがかわいいと10代や20代もシェアしやすいですし、政治に関心がない人たちも見てくれる手応えがありました。若者は政治に興味がないと言われますが、やり方次第で関心は伸ばせると思います」
(取材:ネットワーク報道部 金澤志江 柳澤あゆみ 報道番組センター 市野凜)