参議院選挙 2022 投票率ランキング 全国最下位の街では…

参議院選挙 2022 投票率ランキング 全国最下位の街では…
7月10日に行われた参議院選挙。
投票率は52.05%と前回より3.25ポイント上がりましたが、それでも半分ほど。
過去4番目の低さでした。

なかなか上がらない投票率。
しかし、中には有権者の9割近くが投票したところもあります。

投票率日本一の村と、最下位の街の人たちの声を聞きながら、投票について考えます。

(ネットワーク報道部 記者 松本裕樹 野田麻里子 穐岡英治)

投票率3位は東京だった

参議院選挙の投票率。都道府県別に見ると地域差がありました。

最も投票率が高かったのは、山形県です。
61.87%と前回に続いて全国でいちばん投票率が高くなりました。
2位は長野県で57.70%。
いずれも1人区で、野党の現職が自民党の新人を破った自治体が上位に並びました。

そして、3位が東京でした。
6つの議席をめぐり、各党激しい選挙戦となり、前回よりも投票率が4.78ポイント上昇。前回の11位から順位を大きく上げました。

最下位は2回連続で徳島

一方、投票率が最も低かったのは徳島県で45.72%。
前回に引き続き最下位でした。
前々回、6年前の参議院選挙から高知県と徳島県が合区となりましたが、6年前は高知が最下位でした。

投票率最下位の街は?

では市町村別の投票率はどうなっているのか?

データをもとに調べてみると、全国でいちばん投票率が低かったのは大阪・浪速区でした。
投票率は全国平均を13ポイント以上下回る38.23%。
大阪・浪速区は通天閣や新世界など、大阪を代表する観光地もあります。
投票の翌日、新世界で選挙にいったか尋ねると…
買い物帰りの女性
「選挙なんかいかん。興味ない。1000円くれたら行くわ」
19歳の女性2人組
「選挙行ってません。知ってる人がいれば選挙に行くかもしれないけれど、選挙で自分たちの生活が変わるとか実感がないです」
一方、選挙に行ったという女性にも話を聞くと…
投票した女性
「投票日は仕事だったので、会社に半休を申請して、期日前投票をしました。物価高だし、本当は少しでも働いて稼ぎたいのですが、大事な1票なので毎回投票しています」
浪速区の投票率がどうすれば上がるかについては…
「期日前投票所の区役所は仕事場から遠く、仕事が終わってからでは間に合いません。買い物などのついでに期日前投票できればいいと思います」

飲食店主「みんな今が必死なんちゃうかな」

コロナ前は、インバウンドなど多くの観光客が訪れていた大阪・浪速区。
新型コロナウイルスの感染者の増加を受けて、飲食店は時短や休業要請などが繰り返されてきました。
通天閣は、新型コロナの警戒状況を伝える大阪府独自の基準、「大阪モデル」に合わせ、ライトアップ。
また再び感染者が増えてきたため、12日からは警戒を示す「黄色」が点灯されました。

投票日翌日の11日午後9時すぎ、新世界を訪れると街は閑散とした状況でした。

飲食店を経営する40代の男性は、今回は投票しなかったといいます。
飲食店経営の男性
「また黄色信号になるみたいやし、飲食店は日々が大変。選挙とか話題にも上らなかった。飲食店を支援する具体的な話が出ていたら、耳に入ってきたと思うけど、全く他人事という感じ。みんな今が必死で、国政のことなんかどこか上が勝手にやっていることとみているんちゃうかな」

大阪市浪速区役所「このままではいけない」

投票率が低いことに役所も危機感を募らせています。

単身者向けの住宅なども多く、人の出入りが激しい浪速区。
難波など繁華街が近く、若い人も多く住んでいて、20代の人口の割合は大阪市の平均の2倍近くにのぼります。
選挙を身近に感じてもらうため、SNSを通じた呼びかけなどもしていますが、なかなか結果に結び付いていません。
大阪市浪速区選挙管理委員会 小林秀隆事務局長
「今回の結果にこのままではいけないと、重々感じています。いろいろ対策は施していますが成果になかなかつながらず、頭を悩ませています」

日本一選挙や政治に関心のある村

一方、今回の参議院議員選挙で投票率がもっとも高かったのが宮崎県西米良村です。

投票率は、なんと88.15%。
宮崎県と熊本県の境、九州山地の中央部に位置する西米良村。
今回の選挙では903人中、796人が投票しました。
村の合言葉は、「日本一選挙と政治に関心がある村」「投票率日本一」です。
ことし3月の村長選挙の投票率は92.52%でした。

不在者投票の連絡は子どもにも親にも

投票率日本一を達成するためには、一人ひとりの投票が欠かせません。
例えば、進学などで村を離れている人たちには、不在者投票の方法についての連絡を送ります。

それだけではありません。
実家にも、子どもに不在者投票の案内を送ったことを重ねて連絡。
ちゃんと投票するよう親からも働きかけてもらっています。

今回の参議院選挙での不在者投票は16票。
投票するために村に一時帰省した人もいたということです。
西米良村役場総務課 黒木俊介 主任主事
「人口の少ない村で、誰がどこに住んでいるかも把握できるため、こうした呼びかけができるのだと思います。期日前投票に来ていない人がいれば、街で見かけた時に『選挙はどうですか』と声をかけることもあります」
なぜ、そこまで村が投票を呼びかけるのか尋ねると…
「私もこの村で生まれ育ったので行かないと『なんで行かないの』と言われるくらい投票は当たり前という意識をみんな持っています。ただ、実はその理由はうまく説明できません」

元村長に聞いてみた

西米良村の高い投票率のナゾをどうしても知りたい。

そこで話を聞いたのが、今年4月まで6期24年、村長を務めた黒木定蔵さん(73)です。
黒木さんがまずあげたのは「コミュニティの強さ」です。

村の人たちは、山に囲まれた地域で助け合いながら生活していて、行事への参加意識がとても高いといいます。

子どもの数が少ないからと始めた小中学校の合同の運動会は、村民の半数以上が参加する一大イベントになっています。

また「過疎の地域ならではの事情」も、政治への期待が高い理由だと指摘しています。

西米良村では、現在、村内の国道の工事が続いています。
村単独ではできない大きな工事なども、選挙を通じて自分たちの生活改善を訴えることで、政治的配慮を受けてきたといいます。
西米良村 黒木定蔵 前村長
「まずは投票に行く、自分たちの要望を届けるためには投票という権利を履行しなくてはいけないという思いは皆持っています。『投票に行っても行かなくても同じだ』という声も聞きますが、今の政治が自分の暮らしのどういうところとつながっているのか、ぜひ見方を広げて考えてみてほしいと思いますね」

東京・文京区は65.1%

投票率が高いのは小規模な自治体だけではないか。

そんなことはありません。

都市部でも投票率が高いところもあります。
東京・文京区です。
今回の投票率は65.1%で、これまでの国政選挙でも投票率は高かったといいます。
東京大学やお茶の水女子大学など多くの大学が立つ文京区。

若い世代への呼びかけにも力を入れていて、選挙権を新たに得た18歳の有権者には「バースデーレター」。

お祝いの手紙と一緒に、投票の流れや候補者や政党についての情報の集め方などをまとめた冊子を郵送で送るなど、啓発にも力を入れています。
文京区選挙管理委員会 大武保昭 事務局長
「長い時間をかけてこれまで地域の方と一緒に取り組んできた啓発活動があるからこそ、投票率が高いと思います。啓発活動はすぐに効果を出すことが難しい面もあるため、こうした地道な活動にしっかり取り組んでいきます」
自治体によって大きな差がある投票率。

皆さんは参議院選挙、行きましたか?