岸田首相“安倍元首相の遺志継ぎ拉致問題や憲法改正取り組む”

参議院選挙を受けて、自民党総裁の岸田総理大臣は党本部で記者会見し、銃で撃たれ亡くなった安倍元総理大臣の遺志を受け継ぐとして、安倍氏が力を注いだ北朝鮮による拉致問題の解決や憲法改正などの難題に取り組んでいく考えを強調しました。

この中で、岸田総理大臣は「いただいた議席の数が示すのは自公政権に対する信任だけではない。『日本を守り、未来を切りひらくために全力で仕事を進めよ』との国民からのしった激励だと、覚悟を新たにしている」と述べました。

そして、安倍元総理大臣が銃で撃たれ亡くなったことに触れ「安倍元総理の思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けてこられた拉致問題や憲法改正など、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでいく」と強調しました。

また、今の日本は戦後最大級の難局にあり「有事の政権運営」が求められると指摘し、再拡大している新型コロナへの対応として、病床の確保やワクチン接種、検査の拡大などの取り組みを点検・強化して、引き続き感染拡大の防止と経済社会活動の両立を図るほか、ウクライナ情勢などを踏まえ、日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化する考えを重ねて示しました。

さらに、物価高騰対策をめぐって、今週中に政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」を開き、5兆5000億円の予備費の機動的な活用を含め、物価や景気の状況に応じて総合的な対策を迅速かつ切れ目なく行う考えを強調しました。

また、電力供給について、全国10か所以上の火力発電所が運転を再開し、ことし夏の安定供給に必要な水準を確保できる見通しだとしたうえで、熱中症が懸念されるこの夏は無理な節電をしないよう呼びかけました。

一方、憲法改正について、自民党が掲げる自衛隊の明記、緊急事態対応、参議院の合区解消、教育充実の4項目の改正項目は、いずれも現代的な課題だと指摘し、実現に向けて国会での議論をリードしていく考えを示しました。

そして「秋に予定される臨時国会では、今回の選挙で示された民意を受けて、与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待する」と述べました。

参院選について

岸田総理大臣は記者会見で「安倍元総理大臣が襲われ命を落とすという事件が、民主主義の根幹である選挙のさなかで起き、多くの国民が民主主義や選挙に対して不安を感じたと思う。それにもかかわらず多くの皆さんが協力していただき、民主主義の根幹である選挙を最後まで完結できたのは、大変、大きなことだ」と述べました。

内閣改造と自民党役員人事など

岸田総理大臣は記者会見で「偉大な政治的リーダーを失ったので、影響がないとは言えない。まさに戦後最大級の危機に直面している状況であり、有事の政権運営というものを考えなければいけない」と述べました。

また、内閣改造と自民党の役員人事を行うかどうかについて「今の時点ではまだ具体的なものは何もまだ決めてはいない。厳しいさまざまな課題を前にして、党の結束は大事にしていかなければならない。そういった思いで今後の日程や人事などについても考えていきたい」と述べました。

防衛力の強化

岸田総理大臣は記者会見で、防衛力の強化について「内容と予算と財源は3点セットで考えなければいけない。年末までに新たな国家安全保障戦略を策定する作業などを進める中で、あらゆる選択肢を排除せず、具体的に国民の命を守るために何が必要なのかを、しっかりと議論し積み上げていく。まずそれを行ったうえで見合う予算をしっかり確保し、予算の額に応じた財源を考えなければならない。この考え方に基づいて、年末に向けて3点を具体化し明らかにしたい」と述べました。

拉致問題

岸田総理大臣は記者会見で、北朝鮮による拉致問題について「選挙期間中、G7サミットやNATO首脳会議に出席し、各国のトップに対して協力を強く求めた。国際社会と協力しながら、今後、あらゆるチャンスをものにしなければならない。今後の動きは不透明だが、現在も水面下を含め、いろいろな取り組みが進められている。その状況を見ながら、国際社会と協力し、私自身がキム・ジョンウン(金正恩)総書記と直接向き合う覚悟で取り組んでいく」と述べました。

憲法改正

岸田総理大臣は記者会見で、憲法改正について「国会での議論をしっかりと前に進めていく中で、改正内容について衆参両院で3分の2の結集をしっかり図っていきたい。それによって、できるかぎり早く発議に至る取り組みを進めていく。改正の議論を進めることが、国民の理解を深めるチャンスになると思う。国民の理解の促進と相まって、結果的に憲法改正にたどりつく。こうした道のりをしっかりと示していきたい」と述べました。

経済対策

岸田総理大臣は記者会見で「5兆5000億円の予備費の機動的な活用をはじめ、今後の状況に的確に対応していくことが大事だ。そのうえで、さらに必要になった場合に、補正予算となると編成に時間もかかるので、状況の変化をしっかり見たうえで、必要に応じて適切なタイミングで次の経済対策も考えていく」と述べました。

また、財政健全化をめぐっては「まずは経済あっての財政が基本だ。目の前の経済対策での財政出動と中長期的な経済の信頼の維持は決して矛盾するものではない。目の前の経済にしっかり対応し、経済を再生し、維持することで、財政の信頼にも取り組んでいく」と述べました。

衆議院の解散・総選挙の見通しなど

岸田総理大臣は記者会見で、記者団から「参議院選挙に与党が勝利し、最長で3年間、本格的な国政選挙の予定がない期間を得たが」と質問されたのに対し「『黄金の3年間』などという言われ方がされるが、そういった考え方は全くとっていない。新型コロナやウクライナ情勢など何十年に一度の大きな困難を乗り越えたうえで、日本経済の再生に向けて取り組み、外交・安全保障、憲法改正も進めなければいけない。ひとつひとつが真剣勝負で、乗り越えるために命懸けで取り組んでいく」と述べました。

そのうえで、衆議院の解散・総選挙の見通しについては「ひとつひとつの真剣勝負の中で考えていくことであり、少なくとも今の時点で具体的なものは考えていない」と述べるにとどめました。

安倍派 一致団結を確認

安倍元総理大臣が亡くなったことを受けて、自民党安倍派の幹部に加え、中堅・若手の議員およそ20人が11日夕方、東京都内のホテルで会合を開き、安倍氏の遺志を継いで、一致結束していくことを確認しました。

また、これに先だって、11日午後、国会近くの派閥事務所にはともに派閥の会長代理を務める塩谷元文部科学大臣と下村前政務調査会長、事務総長の西村前経済再生担当大臣、それに世耕参議院幹事長が集まり、およそ20分間、12日行われる葬儀の段取りなどについて協議しました。

このあと西村氏は記者団に対し「みんな本当に深い悲しみの中にあるが、しっかりと安倍元総理大臣を見送ろうと明日の葬儀の段取りなどを相談した。それ以上は全く何も話していない」と述べました。

安倍派は、今後、派閥の体制や運営方針について、改めて幹部を中心に検討を進めることにしています。