ジョンソン首相 なぜ辞任?今後の影響は?

相次ぐ不祥事で、求心力が急速に低下しているイギリスのジョンソン首相は、日本時間の7日午後8時半すぎ、首相官邸前で声明を発表して与党・保守党の党首を辞任する意向を明らかにし、次の党首が決まりしだい首相が交代する見通しとなりました。

ジョンソン首相は、このなかで「党の新しいリーダー、新しい首相が必要だ。新しいリーダーの選出プロセスを始めるべきで、そのスケジュールは来週、発表されることに合意している」と述べました。

ジョンソン首相は、EU=ヨーロッパ連合からの離脱を実現させるなどその実績をアピールしてきましたが、就任からおよそ3年で辞任に追い込まれることになりました。

これまでの動き

ジョンソン首相をめぐっては、新型コロナウイルスの厳しい規制が続く中、首相官邸などでパーティーが繰り返されていた問題に加え、与党幹部が性的なスキャンダルで先週、辞任し、二転三転する首相の対応が不誠実だなどとして反発が強まっていました。

さらに主要閣僚やおよそ50人の政府高官も辞任を表明し、政権の運営にも影響が出て辞任を求める圧力が一段と強まっていました。

こうした中、イギリスの公共メディアBBCなど複数のメディアは、ジョンソン首相が7日、与党・保守党の党首を辞任する意向を表明すると一斉に伝えていました。

これを受けてイギリスの最大野党、労働党のスターマー党首は、7日、自身のツイッターに声明を投稿し「辞任は、国にとって良いニュースだ」とした上でジョンソン首相について「彼はいつだってその座にふさわしくなかった。数々のうそやスキャンダルなどの責任を負っている」として、もっと早い段階で辞任を表明すべきだったと厳しく批判しました。

ジョンソン首相は、EUからの離脱が最大の争点になった2019年の総選挙で与党・保守党を圧勝に導き、離脱を実現させるなどその実績をアピールしてきました。

また、ことし2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降は、プーチン大統領を批判し、ロシアに対して強硬な姿勢を示す一方で、ウクライナの首都キーウを訪問して、ウクライナへの積極的な支援を打ち出すなど存在感を示してきました。

【解説】なぜ辞任? ウクライナ情勢への影響は

Q.これまで強気だったジョンソン首相が辞任に追い込まれた最大の理由は?
A.政権や党幹部の不祥事が続き、求心力が一気に低下したことが最大の理由です。まず、新型コロナウイルスの厳しい規制が続く中、首相官邸などでパーティーが繰り返された問題で大きな批判を浴びました。その後、いったんは、先月、党内の投票で信任され、党首として続投することが決まり、G7の首脳会議などにも出席してウクライナ情勢にも積極的に関わる姿勢を見せていました。
しかし、先週になってみずからが任命した与党・保守党の幹部が性的なスキャンダルで辞任したことをめぐり、対応が不誠実だと党内からも一気に批判が強まっていました。複数の閣僚を含むおよそ50人の政府高官が辞任を表明するという異例の事態となり、与党内では党首としての信任を問う投票を模索する動きも出ていました。

側近を含む閣僚などから直接辞任を迫られるなど、ジョンソン首相はかつてないほどの窮地に追い込まれていました。イギリスメディアは、首相はもはや辞任に追い込まれる瀬戸際だと伝えていました。

6日夜の時点では、ジョンソン首相はあくまでも辞任を拒否していましたが、事態は7日朝になって急展開しました。

これまでみずからを支持する閣僚、さらには側近からの説得にも応じてきませんでした。しかし7日朝、数日前に任命したばかりの閣僚が辞任を表明したのに加え、任命したばかりの財務相からも辞任を求める書簡を公表される事態となりました。
次々と閣僚や政府高官が辞任し、そのあとに任命する人材をあてるのも難しくなっていたという見方も出ていました。外堀を埋められた形で、首相が職を続けたいと思っても、ついてくる人もわずかで、辞任を選ぶしか道は残されていなかったというところだとみられます。

Q.現地ではどのように受け止められているのか?
A.当然の結果だという受け止めです。
いわゆるパーティ問題以降、ここ半年余り、ジョンソン首相をめぐっては批判が高まり、支持率は低迷していました。そもそも新型コロナの厳しい規制の中、だれもが我慢を強いられる中でパーティーをしていたことへの怒りは強いものがありました。それに加え、新たなスキャンダルがあり、市民の間には、またか、というという呆れにも似た思いも広がっていました。

イギリスでは物価が高騰し、人々が厳しい状況を強いられています。
そうしたなかで、この半年余り、いわば政治の駆け引きが続いてきたことに国民はへきえきしています。経済状況への対応、さらにはEUから離脱した後の混乱も続いています。政府には、国民のために混乱をおさめ、すみやかに山積する課題に対応していくことが求められるとみられます。

Q.今後イギリス国内はどうなる?
A.当面は政治的な混乱が続くことは避けられません。
ジョンソン首相は夏に党首選挙が行われるまでは首相を続ける見通しで党内で後継の党首が決まるまではまだ紆余曲折(うよきょくせつ)が予想されます。

イギリスはEUからの離脱をめぐり長く政治的な混乱が続いてきたのに加えて、新型コロナの感染が拡大するなか、ジョンソン首相が強いリーダーシップを発揮し国を率いてきました。国民から一定の支持を得てきたことも確かです。

その一方、ジョンソン首相をめぐっては問題や不祥事が相次ぎ、批判の矢面に立たされ、そのたびに切り抜けてきた印象ですが、今回いよいよ辞任に追い込まれる見通しになりました。

すでにジョンソン政権の司法長官が党首選挙が行われれば立候補する意向を表明するなど、今後、党首選挙に立候補する顔ぶれがどうなるかも注目されます。

Q.ウクライナを含めて世界への影響はどうなる?
A.ジョンソン首相は、アメリカのバイデン大統領などと歩調を合わせる形で軍事侵攻を続けるロシアへの圧力を強めてきました。ヨーロッパのなかではプーチン大統領に対する厳しい姿勢は際立っていました。また、ウクライナを訪問してゼレンスキー大統領と会談し、もっとも理解ある指導者の1人だとも評価されてきました。

先月開かれたG7やNATOの首脳会議でも、ウクライナを軍事的にも積極的に支援する姿勢を示してきました。ロシアへの圧力で結束を目指してきたヨーロッパにおいて、ロシアに対してとりわけ厳しい姿勢を示してきたジョンソン首相が辞任を表明したことでどのような影響が出るか注目されます。
一方、EUからの離脱を実現させたジョンソン首相は、アメリカや日本との経済の関係強化にも取り組んできただけに、こうした方針が継続されるのかなども焦点になるとみられます。

「パーティー問題」など これまでの経緯は

ジョンソン首相は、ことし1月に新型コロナウイルスの感染対策で厳しい規制が続いていたおととし5月、首相官邸で開かれたパーティーに参加していたことを認め謝罪しました。

また、首相官邸で開かれたみずからの誕生日を祝う会合に出席していたとして、ことし4月には警察から罰金を科されたほか、5月に公表された政府の調査報告書では「多くは当時のルールに従ったものではなかった」などとして、厳しく批判されました。

さらに、ジョンソン首相が任命した与党幹部が性的スキャンダルをめぐって先週、辞任しましたがその対応が二転三転したことから、党内からも批判や反発が一段と強まりました。
こうした中で今月5日、財務相だったスナク氏と保健相だったジャビド氏が首相に抗議する形で辞任しその後も政府の高官が次々に辞任するという異例の事態となっていました。

EU離脱 中心的存在に ジョンソン首相とは

ジョンソン首相は58歳。
雑誌の編集長などを務めたのち、2001年、下院議員に初めて当選し、2012年のロンドンオリンピックの際にはロンドン市長として大会の成功に貢献しました。

6年前にイギリスがEUからの離脱を決めた国民投票では離脱派の中心的な存在として運動をけん引し、その後、発足したメイ政権では外相を務めました。
しかし2018年、メイ前首相の離脱方針に反発して辞任してからは、離脱強硬派として同じ保守党の中でメイ前首相を厳しく批判してきました。

そして2019年7月、メイ前首相がEUからの離脱をめぐる混乱の責任をとって辞任したことを受け保守党の党首選挙を経て首相に就任しました。

ジョンソン首相は、その知名度の高さや歯に衣着せぬ発言で保守党の支持者の間で広く人気がありますが、一方で強引な政治手法や過激な言動が繰り返し批判にさらされてきました。

さらに、新型コロナウイルスの感染対策で規制が続く中、首相官邸などでパーティーが繰り返されていた問題をめぐって党内外から厳しい批判を受け、警察から罰金を科されて議会で謝罪しました。

一方で、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降は、プーチン大統領を非難するなどロシアに対して厳しい姿勢を示すとともに、ウクライナの首都キーウをたびたび訪問してウクライナへの積極的な支援を打ち出し、ゼレンスキー大統領からも高く評価され、存在感を示してきました。

英 最大野党党首「国にとってよいニュースだ」

イギリスの最大野党、労働党のスターマー党首は7日、自身のツイッターに声明を投稿しました。

声明でスターマー党首は「辞任は国にとってよいニュースだ」としたうえで、ジョンソン首相について「彼はいつだってその座にふさわしくなかった。数々のうそやスキャンダルなどの責任を負っている」として、もっと早い段階で辞任を表明すべきだったと厳しく批判しています。

ウクライナ大統領府顧問「支援してくれ感謝」

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は7日、ツイッターに「ミサイル攻撃のさなかにもかかわらず最初にキーウに来てくれた。常に最前線でウクライナを支援してくれたことに感謝する」と投稿し、これまでの対応に謝意を示しました。

ロシア大統領府報道官「われわれも同様に好きではない」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は7日、記者団に対し「注視はしているが、イギリスの政治危機はわれわれの優先事案ではない」と述べました。

そのうえで「ジョンソン首相はわれわれのことが全く好きではないようだ。われわれも同様だ」と述べ、ウクライナ情勢などを巡りロシアに厳しい対応を示してきたジョンソン首相を皮肉りました。

またペスコフ報道官は「いつかは対話を通じた問題の解決を理解できるプロフェッショナルな人々がイギリスで政権を担うことを期待しているが、今のところそれはありそうにない」と述べ、イギリスとの関係に悲観的な見通しを示しました。

外務省幹部「驚いている」

外務省幹部は「報道に接し驚いている。ジョンソン首相と日本との間ではこれまで首脳間の会談などを重ね、信頼関係を構築してきただけに残念だ。ただ保守党による政権が変わるわけではなく、誰が次のリーダーになっても日英両国の関係は変わらない。安全保障協力などにも影響はないだろう」と話しています。

日本企業の経営者は…

日本企業の経営者からは国際情勢が緊迫する中、政治空白は許されないという声が出ています。

経済同友会の副代表幹事をつとめる住友林業の市川晃会長はNHKの取材に対して「正直驚いている。こういう時期だけに政治空白をもたらしてはダメなので、イギリスを1つにまとめるために辞任しようと考えられたのかなと思う」と述べました。

そのうえでジョンソン首相の求心力が相次ぐ不祥事で低下していたことについては「トップは常に現場の目線を持つことが大事だ。その目線に立った時に自分はどうあるべきか考えなければならなかったのではないか。本当に現場が分かっていれば身の処し方は変わっていたのではないか」と指摘しました。

経済同友会の副代表幹事で、精密機器大手「リコー」の山下良則社長は「ヨーロッパの本社がロンドンにあってやり取りをしたが、ビジネスへの影響はそれほど大きくないのではないかと思う。ジョンソン首相にかぎらず企業もそうだが組織のトップは責任を果たすために、職務から逃げないという姿勢が大事だったのではないか」と述べました。