ウクライナ“復旧復興に各国で凍結のロシア関係者の資産も”

ロシアによる軍事侵攻で甚大な被害を受けているウクライナの復興について話し合う国際会議で、ウクライナ政府は、復旧や復興には日本円にして101兆円余りが必要だと強調しました。そのうえで、費用の一部については、制裁に伴って各国で凍結されているロシア関係者の資産をあてるべきだと提案しました。

ウクライナの復興をめぐる国際会議は、4日、スイス南部のルガーノで開かれ、日本や欧米などおよそ40か国の政府関係者のほか、EU=ヨーロッパ連合の機関や世界銀行など、国際機関の代表も出席しました。

この中では、ウクライナのシュミハリ首相が、復興に向けた計画を初めて明らかにしました。

それによりますと、復旧や復興は緊急度に応じて3段階に分けて行い、はじめに水道や橋など人々の生活に欠かせないインフラの復旧を進めたうえで、学校や病院などの施設の再建、その後、環境を重視した経済の回復など長期的な課題に取り組むとしています。

また、シュミハリ首相は、復旧や復興には現時点で総額およそ7500億ドル、日本円にして101兆円余りが必要だと強調したうえで、費用の一部については、ウクライナへの軍事侵攻を受けた制裁に伴って各国で凍結されているロシア関係者の資産をあてるべきだと提案しました。

最終日の5日は、各国の代表がそれぞれの支援方針を発表することになっていますが、日本に対しては、建物のがれきの処理など震災の経験を生かした支援が期待されているということです。

復興を妨げる地雷の被害

ウクライナでは、ロシア軍が撤退した地域でも地雷や不発弾が数多く残され、ウクライナの非常事態庁は、すべて除去するのに少なくとも10年はかかるとしていて、人々の生活再建や農業の再開など今後の復興の大きな妨げとなっています。

このうち、ことし4月初めにロシア軍が周辺から撤退したキーウ州では、林道や農地などに埋められた地雷の被害にあう人が後を絶ちません。

キーウ州で大工をしていたペトロ・カシュピルコさんは、4月9日、キーウ近郊の林道で地雷を踏み、右足首を失いました。

カシュピルコさんは当時の状況について「地雷を踏んでしまい、爆発しました。革のベルトで自分で止血しましたが、ひどい痛みで、叫びました。娘が来てくれて、2人で林道からはって出ました」と話していました。

カシュピルコさんによりますと、同じ林道では、他にも地雷の被害にあって複数の死傷者が出たということで「ロシア兵がいたところには、どこも地雷が埋められています。住民を標的にした地雷は、ロシアによる戦争犯罪です」と強く非難しました。

カシュピルコさんは、いまは週に3日、リハビリ施設に通い、かつてのように大工として働けることを願っています。

キーウ州では、各自治体などが森林や林道の入り口に地雷など爆発物の危険を知らせる看板を立てるなどして住民に注意を呼びかけているほか、各地で地雷の除去が行われています。

キーウ近郊のイルピンのクラフチュク副市長は「イルピンでは地雷、ロケット、爆弾とあらゆる種類の武器が使われ、今もそうした爆発物が多く見つかります」と述べ、現在、学校などでの爆発物の捜索にも力を入れていると説明しました。

そのうえで「人々は戻ってきていますが、がれきの下に何があるか分からず、恐れています。復興にとって、障害となっています」と述べ、今も残る地雷などが人々の生活を脅かし、復興の妨げになっていると訴えていました。