ウクライナの復興めぐる国際会議 スイスで開幕

ロシアによる軍事侵攻で甚大な被害を受けているウクライナの復興をめぐって、日本や欧米などの各国と国際機関の代表が話し合う会議が、スイスで始まりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで出席して各国に支援や協力を呼びかけるほか、復興に向けた具体的な計画が初めて示される見通しです。

ウクライナの復興をめぐる国際会議は、ウクライナとスイスの両政府が開くもので、4日午後、日本時間の4日夜から、スイス南部のルガーノで始まりました。

会議には、日本や欧米などおよそ40か国の政府関係者のほか、EU=ヨーロッパ連合の機関や世界銀行など国際機関の代表も出席しています。

会議では、ゼレンスキー大統領がオンラインで支援や協力を呼びかけるほか、ウクライナ政府によって、復興に向けた具体的な計画が初めて示される見通しです。

ウクライナ政府は先月、ロシアの軍事侵攻によるインフラの被害は、これまでのところ総額で1040億ドル、日本円にしておよそ14兆円に上ると明らかにしていて、今回の会議をばく大な資金が必要となる復興の出発点と位置づけ、各国から長期的な支援を取りつけたい考えです。

このうち、日本に対しては、災害からの復興に関するこれまでの経験を踏まえた支援に期待しているものとみられます。

会議は2日間の日程で行われ、5日は、各国の代表がそれぞれ支援の方針を発表する予定となっています。

キーウ近郊 生活再建程遠く 避難生活長期化

4月初めにロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ近郊では、インフラの復旧などが進められる一方、破壊された建物のがれきの撤去や修復作業は手付かずのままで、家を失った多くの人は今も避難所での暮らしを強いられるなど人々の生活の再建は程遠い状況です。

このうち、侵攻してきたロシア軍との間で激しい戦闘があったキーウ近郊のイルピンでは、街の北側を中心に多くの建物が破壊され、ロシア軍の撤退から3か月がたった今もほぼそのままの状況で、建物の残骸やがれきの撤去は進んでいません。

ただ、ロシアの進軍を阻むため破壊された橋の建て替えなどは進んでいて、避難していた住民も戻りつつあります。

キーウ州のブラスーク副知事は、NHKの取材に対し「州内だけで2万棟以上の建物が破壊されました。再建のための計画をたてていますが、それには多額の資金が必要です。国際社会からの支援の継続が欠かせず、戦争が終わってからではなく、今必要としています」と話し、ロシアによる侵攻が続く中でも復興を始める必要があるとして、国際社会に支援を呼びかけました。

一方、住宅の再建にめどがたたない中、家を失った人たちの避難生活は長期化しています。

3月にロシア軍の砲撃でイルピンにある家が完全に破壊されたオレーナ・トゥリヌースさん(63)は、ウクライナ西部に逃れたあと、ロシア軍の撤退を受けて5月に戻ってきましたが、今は一時的な避難施設で同じように家を失った人たちと共同で暮らしています。

市からは家が全壊したとする証明書を受け取りましたが、補償や今後の住宅の確保については、めどがたっていないということです。

トゥリヌースさんは「生活は一変してしまいました。家も財産も失い、とても苦しく、今の状況で暮らしていくのはとても厳しいです。補償や家の再建を受けられるまで仮設の住宅でいいので支援がほしいです」と話していました。

日本も がれきの処理など復興に向けノウハウ

スイスで開かれるウクライナの復興をめぐる国際会議には、日本からは鈴木外務副大臣が出席するほか、JICA=国際協力機構からも職員が参加し、復興に向けた支援などについての議論に加わる予定です。

また、JICAは、日本政府の方針のもと、ウクライナ政府の復興計画を主導する国家復興評議会のワーキンググループに参加し、復興計画の策定の支援にもあたっています。

これまでにJICAは、ウクライナの国家復興評議会の23のワーキンググループのうち、経済の復興や金融分野など13のグループに職員や専門家など18人が参加し、日本からどんな支援ができるかなど、具体的な検討を進めてきました。

さらに、ウクライナ政府や自治体の関係者も参加するオンラインのセミナーを開催し、現地で課題となっている、がれきの処理などに向けて日本のノウハウを伝えてきました。

先月末に開かれた初回のセミナーには、ウクライナ政府やキーウ州の関係者も参加し、東日本大震災で被災した宮城県東松島市や、町づくりに関わった企業が当時のがれきの処理方法や復興までの経緯について紹介しました。

JICAの山田順一副理事長は「ウクライナでは避難先から戻る人も西部などで徐々に増えている。地域によっては、意外に早く、復興事業が始まるのではないかと捉えている。がれきの撤去や住宅の再建など復興の分野でも遅れることなく、日本の知見を生かせるよう努めたい」と話しています。