ウクライナ侵攻4か月 終結への道筋見えず 今後のシナリオは

ウクライナ東部ルハンシク州の知事は、ロシア軍との激しい攻防が続いてきたウクライナ側の拠点、セベロドネツクからウクライナ軍の部隊が撤退すると明らかにしました。
一方、これまでの戦闘でロシア側の損失も大きいことから、ウクライナ側は、欧米から供与される兵器を使って攻勢に転じる構えで、戦闘の終結に向けた道筋は見えない状況です。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、24日で4か月がたちます。

ロシア軍は、東部2州のうちルハンシク州の完全掌握を目指し、ウクライナ側が拠点とするセベロドネツクや、隣のリシチャンシクに、重点的に戦力を投入してきました。

ロシア国防省は24日、▽過去5日間で、周辺の地域を相次いで掌握し▽セベロドネツクの南方では、ウクライナ側の兵士およそ2000人を包囲していると発表しました。

ルハンシク州のハイダイ知事は24日、地元メディアに対して「残念ながら、ウクライナ軍はセベロドネツクから撤退せざるを得ない」と述べ、防衛にあたってきた部隊が別の拠点に移動することを明らかにしました。

そして、セベロドネツクの隣のリシチャンシクにもロシア軍の部隊が向かっていると危機感を示しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は23日、2つの都市をめぐる攻防でのロシア軍の優位を認めたうえで「ウクライナ軍は、ロシア軍の侵攻を遅らせ、部隊に打撃を与えるという基本的な目標を達成している」と分析しています。

そのうえで「ロシア軍の攻撃は、今後数週間、停滞し、ウクライナ軍に反撃の機会を与える可能性が高い。セベロドネツクを失うことは、ウクライナにとって損失だが、この戦いはロシアの決定的な勝利にはならないだろう」と指摘し、今後も一進一退の攻防が続くという見通しを示しました。

またイギリス国防省は24日の分析で、▽ロシア空軍が、戦闘に参加する軍用機の乗組員として退役軍人を搭乗させたと、兵員不足を指摘しました。

さらに▽軍用機のパイロットが、軍用ではなく商業用のGPS装置を使っていたとみられるとして、ロシア軍の装備品の課題も指摘しています。

東部での劣勢が伝えられるなか、ウクライナのレズニコフ国防相は23日、射程が長く、精密な攻撃が可能な高機動ロケット砲システム=ハイマースがアメリカから届いたことを明らかにするとともに、欧米の軍事支援を弾みに攻勢に転じる構えを示しました。

ハイマースについては23日、アメリカ国防総省が、4基を追加供与すると発表していて、合わせて8基が供与されることになります。

ウクライナでは、ロシア軍とウクライナ軍双方の兵士の犠牲や兵器の損失が拡大し続ける消耗戦となっていて、戦闘の終結に向けた道筋は全く見えない状況です。

米シンクタンクが示す今後の「3つのシナリオ」

アメリカのシンクタンク「アトランティック・カウンシル」は、先月末、戦況によって状況が変化するため断定はできないと前置きしたうえで、今後考えられる展開について3つのシナリオを提示しました。

シナリオ1.「ウクライナは徐々に追い込まれていく」

ロシアは、ウクライナ東部から、すでに併合している南部クリミアにつながる陸続きの地域の支配を強めていく。

そして、南部の港湾都市オデーサを壊滅させるか封鎖することで、ウクライナを海に面することのない内陸に封じ込める。

プーチン大統領は、ウクライナ全土でインフラ施設への攻撃を続け、南部と東部の一部を併合するとともに、ロシア国内においては、反戦などの世論を抑えて一方的に勝利宣言をする。

プーチン大統領は、来年の早い時期に停戦を呼びかけるものの、和平に向けて合意する用意はない。

プーチン大統領は、モルドバにつながる地域など、将来的にはより広い範囲の土地を得たいと望んでいる。

来年になっても、NATOの加盟国は、領土を取り戻そうとするウクライナへの軍事支援を続ける。

しかし、来年の後半までには、経済的な負担や難民への対応、それに核攻撃のリスクを含めた緊迫の高まりへの懸念から、欧米側の合意や結束にほころびが生じ、このうち、ドイツとフランスが中心となって和平に向けた交渉を働きかけることになる。

シナリオ2.「ロシアは戦果を得ることができない」

東部ドンバス地域などで反撃が成功するなど、ウクライナ軍の戦術によって、ロシア軍は、来年の初めまでに軍事侵攻を開始した2月24日以前の支配地域にまで押し戻される。

しかし、ロシア側の強固な守りに阻まれ、ウクライナ側がさらに前進することまでは難しい。

プーチン大統領は、経済の崩壊などに対する国民の不満の高まりに直面し、ウクライナとの和平合意の締結に向けた圧力にさらされる。

来年初めごろから、世界的な経済危機を理由に、トルコ、カタール、インドが調停者として停戦を強く求める。

一方、ヨーロッパの指導者も外交的な枠組みを求め始めるようになる。

フランスのマクロン大統領は、解決策を見いだすため、中国の習近平国家主席とともに協議を呼びかける。

協議の枠組みは、ウクライナをはじめ、ロシアを含む国連安全保障理事会の常任理事国5か国に、ドイツを加えたもの。

中国は、プーチン大統領の計画を損なうようなことはしたくないが、経済上の理由からもほかに選択の余地はない。

シナリオ3.「ウクライナがほぼすべてを取り戻す」

ウクライナへの欧米の軍事支援が、大幅に増加するのに対して、ロシア軍は、兵士たちの士気がうせるとともに制裁によって軍の装備品などが補給できなくなることで、クリミアを除いてウクライナからの完全な撤退を余儀なくされる。

これによって、ウクライナは、クリミア奪還に向けた準備を始める。

欧米の軍事支援を止めるため、ロシアによる核を使った報復のリスクが高まる。

そして、ウクライナが攻撃を開始し、フランスと中国による仲介が失敗することで、第3次世界大戦の可能性が一気に高まることになる。

プーチン氏は、再選を目指す大統領選挙の1年前にあたる来年半ばごろ、国民の怒りによって権力を維持することが脅かされることになる。

隣に「巨大な北朝鮮」が現れることを恐れるヨーロッパは、ロシアがエネルギー収入などで得た一部を賠償金としてウクライナの復興基金に充てる見返りとして制裁緩和のための模索を始める。

これらのシナリオを発表した「アトランティック・カウンシル」は、次に戦場で何が起きるかによって現在、こう着状態にある戦闘が最終的にロシアとウクライナのどちらに有利になるのかが決まるとしています。
では、現在の戦況はどうなっているのか。

防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は、「東部のセベロドネツクなど局所的にロシアが優勢だという見方ができたとしても、今後、ロシア軍が東部2州の完全制圧を短期間で達成するのは難しい。一方でウクライナ軍も、ロシア軍が支配している地域を大幅に奪還することは難しく、ロシア側もウクライナ側もみずからの支配地域を大きく変更することができない状況にある」と話しています。

そのうえで、今後の鍵を握るとみられる欧米からウクライナへの軍事支援について、「今後いつまで、そして、どの程度の兵器を供給し続けるのかということに関して、各国の間で温度差が見られつつある。背景にはウクライナへの『支援疲れ』のようなものがあるのではないか」と指摘しました。

欧米各国の立場 対応の違い浮き彫りに

ロシアとウクライナの停戦に向けた交渉が中断したまま進展が見られない中、ウクライナ情勢をめぐっては、欧米各国の立場や対応の違いが浮き彫りになっており、今後の展開は依然として見えにくい状況が続いています。

このうちアメリカは、バイデン大統領が、先月21日、ウクライナへの兵器の供与や人道支援などを強化するため、およそ400億ドル、日本円にして5兆円余りの追加の予算案に署名し法律が成立しました。

アメリカは、軍事面では、▽携帯型の地対空ミサイル「スティンガー」や、▽対戦車ミサイル「ジャベリン」などを供与してきましたが、ウクライナが求める長距離ミサイルの供与には慎重で、ロシアを過度に刺激したくないという思惑もあるとみられます。

イギリスは、ジョンソン首相が今月17日、ウクライナの首都キーウを訪問してゼレンスキー大統領と会談し、その後の記者会見で「ウクライナの人々がプーチン大統領とは妥協できないことはよく理解できる」と述べ、財政面や軍事面での支援が引き続き必要だと強調しました。

フランスは、マクロン大統領が、今月3日に伝えられたフランスの新聞のインタビューで「ロシアに屈辱を与えてはならない。外交的な手段で出口を作ることができなくなるからだ」と述べました。

この発言は、停戦交渉でフランスが仲介役を担うためにもロシアのプーチン大統領と対話ができる関係を維持したいという考えを示したものでしたが、ウクライナ側の強い反発を招く結果となりました。

ドイツは、ショルツ首相が、先月13日、プーチン大統領と電話で会談し、一刻も早く停戦を実現し外交による解決を模索するよう促したほか、先月28日には、マクロン大統領とともにプーチン大統領との3者による電話会談を行いました。

この会談についてドイツ側は、ショルツ首相とマクロン大統領は、プーチン大統領にゼレンスキー大統領との直接交渉を呼びかけたとしています。

ただ、ロシアと対話するフランスとドイツの首脳については、ポーランドのドゥダ大統領が、今月8日、ドイツメディアとのインタビューの中で「第2次世界大戦の最中に、ナチス・ドイツを率いるヒトラーと電話でやり取りするのと同じだ」と批判しました。

このほか、ロシアと地理的に近いバルト3国は、今回の軍事侵攻に危機感を強めており、このうちリトアニアでは、先月10日、議会がロシアの軍事侵攻を「ウクライナ人に対する集団虐殺」だとする決議案を全会一致で採択しました。

一方、ロシアへの制裁をめぐっては、EU=ヨーロッパ連合が、先月30日の首脳会議で、ロシア産の石油の輸入禁止で合意しましたが、ハンガリーが自国のエネルギー確保が脅かされるとして強く反発し、パイプラインによる輸入については、当面除外されることになりました。

このように、ウクライナ情勢をめぐっては、欧米各国の立場や対応の違いが浮き彫りになっており、今後の展開は依然として見えにくい状況が続いています。

各国表明のウクライナ支援総額

各国が表明したウクライナに対する軍事支援や人道支援などを含む支援の額について、ドイツの「キール世界経済研究所」が、ことし1月から今月7日までの総額をまとめ、今月16日に発表しました。

それによりますと、▽総額は780億ユーロ、日本円でおよそ11兆円となっていて、▽このうちアメリカは、もっとも多い426億ユーロ、日本円でおよそ6兆円で、全体の半分以上を占めています。

次いで、▽EU=ヨーロッパ連合は155億ユーロ、日本円でおよそ2兆2000億円、▽イギリスは48億ユーロ、日本円でおよそ6800億円、▽ドイツは32億ユーロ、日本円でおよそ4500億円、▽ポーランドは27億ユーロ、日本円でおよそ3800億円などとなっています。

また、支援額が各国のGDP=国内総生産に占める割合については、多い順に、▽エストニアが0.87%、▽ラトビアが0.73%、▽ポーランドが0.49%、▽リトアニアが0.31%などとなっていて、ロシアに地理的に近く、歴史的にもロシアを脅威と捉えてきた国々が上位を占めています。

これについては、ヨーロッパの主要国であるドイツやフランスは、いずれも0.1%未満となっています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐってヨーロッパ各国の国内世論には違いも見られます。

ヨーロッパの調査研究機関「欧州外交評議会」が、ことし4月下旬から先月中旬にかけてヨーロッパの10か国で、合わせて8000人を対象に調査を行いました。

調査では、▽「たとえ領土をロシアに渡すことになったとしても、もっとも大事なのは可能なかぎり早く停戦することだ」という回答を選択した人たちを「和平派」としています。

一方、▽「たとえさらに多くのウクライナ人が殺されたり、避難を余儀なくされたりしても、もっとも大事なのは侵攻したロシアを罰することだ」という回答を選択した人たちを「正義派」としています。

調査結果をみると、▽「和平派」が35%なのに対し、▽「正義派」が22%、▽「どちらとも言えない」が20%となりました。

国別に「和平派」と「正義派」の割合をみると、▽イタリアは52%と16%、▽ドイツは49%と19%、▽ルーマニアは42%と23%、▽フランスは41%と20%などと、調査が行われた10か国のうち9か国で「和平派」が「正義派」を上回っていることがわかりました。

一方、▽ポーランドだけは、逆の傾向を示して16%と41%となっており、「正義派」が「和平派」を上回る結果となりました。

専門家「各国の立場に一定の違い 対ロ圧力では結束」

ウクライナ情勢をめぐる欧米各国の対応について、国際安全保障に詳しい慶應義塾大学の鶴岡路人准教授は、各国の立場には一定の違いはあるものの、経済制裁などでロシアに対して圧力をかけていく点では結束していると分析しています。

このうち、ヨーロッパの中でもロシアと地理的に近い場所に位置するポーランドやバルト3国については「ロシアを負けさせるべきだという主張を非常に強く打ち出している」として、ロシアに最も厳しい姿勢で臨んでいる立場だと分析しています。

背景として鶴岡氏は「これらの国々は、侵略戦争によってロシア側にも得るものがあったという結末になってしまうと、ロシアは再び侵略すると考えている。その場合、次に侵略される対象が自分たちの国になると真剣に考えている」と指摘しています。

また、同じヨーロッパでも、ドイツとフランスについては「ロシアの脅威に対する差し迫った切迫感はない。ロシアを排除して孤立させても、中長期的にはヨーロッパの安全は保障できないと考えている」として、ロシアとの対話を重視する立場だと位置づけています。

アメリカについては「ヨーロッパ各国の中で、ロシアに厳しい姿勢の国と甘い対応だと言われる国との中間に位置している」と分析しています。

そのうえで「バイデン大統領が『ウクライナに関する決定をウクライナ抜きで行うことはない』と繰り返し強調しており、この原則は非常に重要だ」と述べ、ウクライナとの合意形成に基づく支援を行う姿勢を維持していると指摘しています。

欧米各国の対応について、鶴岡氏は「いつも『足並みが乱れている』と指摘されるヨーロッパ各国だが、今回は足並みが極めてそろっている。アメリカとヨーロッパの間でも高いレベルで結束できている」として、各国の立場には一定の違いはあるものの、経済制裁などでロシアに対して圧力をかけていく点では結束していると分析しています。

一方、今後の見通しについては「ウクライナにとっては、領土内のロシア軍を押し返すことがいまの戦争の目的であり、それが勝利だ。ロシアが勝ったという形にしてはならないというのが国際社会の一致した考えだ」と述べています。

鶴岡氏は、戦闘の長期化が世界各国の政治経済にも影響すると指摘しています。

今月19日に行われたフランスの議会下院にあたる国民議会の選挙で、与党連合の議席が過半数を下回る結果となったことについて「ウクライナ情勢を受けた物価高騰に対応しきれなかった政府への不満が背景にあると言える」と分析しています。

そのうえで「ロシアにとって『物価高騰の責任は欧米各国の経済制裁にある』と主張することは、ほぼ唯一残された手段となっている」と指摘しました。

バイデン政権 ウクライナ支援強化しながら国内対応の課題

ロシアによる軍事侵攻から4か月を迎える中、アメリカのバイデン政権は、ウクライナへの軍事支援を一段と強化しています。

一方、アメリカ国内では、秋の中間選挙まで5か月を切り、国民のウクライナへの関心は薄れつつあり、バイデン大統領は、ウクライナ危機に対応しながら、選挙を見据え、インフレ対策など国民の暮らし向きを目に見える形で改善させるという大きな課題に直面しています。

アメリカのバイデン政権は、ウクライナ東部地域でロシア軍が攻勢を強めていることを受けて、軍事支援を一段と強化し、これまでに、▽対艦ミサイル「ハープーン」や▽高機動ロケット砲システム=ハイマースなどの兵器の供与を発表しました。

国務省によりますと、ウクライナへの軍事支援額は、ことし2月のロシアの侵攻以降、61億ドル以上、日本円にして8200億円以上に上ります。

さらに、バイデン政権は、軍事侵攻の長期化も見据え、多国間の枠組みでの支援にも力を入れています。

これまでに、NATO=北大西洋条約機構の加盟国などが参加する国際会合を3回、主催し、今月15日の会合では、ドイツが多連装ロケットシステムを供与する方針を示すなど、ヨーロッパ各国からの武器の供与の旗振り役も担っています。

一方、アメリカ国内ではことし11月の中間選挙まで5か月を切る中、バイデン大統領の支持率は、世論調査の平均値で、40%を下回り、就任以降、最も低い水準に低迷しています。

さらに、アメリカ国民のウクライナへの関心は薄れつつあります。

調査会社イプソスが行っている世論調査によりますと、「アメリカが直面する最も重要な問題は何か」という質問に対し、「戦争と外国の紛争」と答えた人の割合は、侵攻直後のことし3月上旬は、「経済、失業、雇用」と答えた人の割合に次いで多い17%だったのに対し、3か月後の今月は、3%でした。

これに対し、今月、「経済、失業、雇用」と答えた人の割合は最も多い32%で、国民の関心は目の前の生活へと移っていることがわかります。

その大きな原因の1つがアメリカ国内で続く記録的なインフレです。

先月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて8.6%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準に達しました。

バイデン大統領は今月10日、「プーチン氏による値上げがアメリカに打撃を与えている」と述べ、インフレの原因は軍事侵攻を続けるロシアだと非難し「物価を下げるためであれば、できることは何でもする」としています。

バイデン大統領は、車社会のアメリカに欠かせないガソリンの価格の上昇に歯止めをかけようと、石油大手のエクソンモービルなど7社にみずから書簡を送り、速やかに供給を増やすよう求めました。

また、来月中旬には、これまで人権問題などで関係が冷え込んでいた産油国、サウジアラビアを訪問すると発表しました。

バイデン大統領としては原油の増産を促すことで、ガソリン価格の抑制につなげたい考えです。

さらに、トランプ前政権が中国からの輸入品に課した関税の一部引き下げを検討していることも認めています。

こうしたあの手この手のインフレ対策の背景には、11月の中間選挙で、与党・民主党が敗れれば、残り2年間、議会の協力を得られず、思うように政策遂行ができないいわゆる「レームダック」に陥ることがあります。

バイデン大統領は、長期化しつつあるウクライナ危機に対応しながら、国内では選挙を見据え、国民の暮らし向きを目に見える形で改善させるという大きな課題に直面しています。

米 専門家「バイデン政権 選挙に向け国内問題に注力か」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから4か月となる中、アメリカの専門家からは国民の関心が記録的なインフレなど身近な問題に移りつつあり、バイデン政権は、秋の中間選挙に向け、一段と国内問題に力を入れることになるとの見方が出ています。

アメリカ政治が専門のオハイオ州、ヤングスタウン州立大学のポール・スラシック教授は、NHKのインタビューの中でウクライナ情勢について「アメリカでは、ここまで長期化すると考えられていなかったことに加え、アメリカが直接、ウクライナに軍を派遣していないこともあり、人々の関心がやや薄れつつある」と述べ、国民の関心がインフレなど身近な問題に移りつつあるという見方を示しました。

そして「バイデン政権がいま行おうとしているのは、ガソリン価格の高騰はロシアのせいだと非難することで、インフレなどの経済問題とウクライナでの戦争を結び付けることだ」とし、「選挙が近づくにつれて、一段と、国内問題に焦点を当てていくことになるだろう」と述べ、バイデン政権は支持率の低迷に悩む中、投票まで5か月を切った中間選挙に向けて、今後、一層、内政に重きを置くようになると指摘しました。

また、このことがアメリカの戦略に与える影響について、スラシック教授は「アメリカはウクライナに対し、400億ドルの巨額の支援を行うとしているが今後、大きな資金的援助が難しくなってくる可能性がある。特に野党・共和党の候補者の中には、国内で財源が必要なときにそうした資金を提供することに疑問を投げかける人がいる」と述べました。

そのうえで「問題は、ウクライナが死活的に必要だとする武器を提供するため、アメリカがどれだけ進んで資金を投入し続けるかだ」と述べ、中間選挙が近づくなか、戦闘の長期化はアメリカの軍事支援のあり方に影響を与える可能性があるという見方を示しました。