子どもが虫を連れてきた 親が知りたい飼い方のコツ

子どもが虫を連れてきた 親が知りたい飼い方のコツ
ある日突然、息子が「カブトムシの幼虫」を連れて帰ってきました。大人になって、虫たちとは距離を置いていたのに…なんで…。
羽化の時期っていつごろ?成虫になったらどう育てる?何を買えばいいの?「ムシって苦手…」なあなたに。親子で飼育を楽しむ方法です。

出会いはいつも突然に

私(佐藤)と「虫」の出会いは去年秋のこと。公園からの帰り道、息子たち(4歳と1歳)と歩いていると、ご近所さんが玄関先でレジャーシートを広げています。土を出している…畑仕事か何かかな?気になってのぞいてみると、そこには8センチほどの白い塊10個ほどが、クネクネと動いていました。

「よ、幼虫だ…!!」青ざめる私。それをよそに、息子は目を輝かせています。「えー、すごい!」「カブトムシの幼虫だよ。飼ってみる?うち増えすぎちゃって」「うん、飼う飼う!」

ちょ、ちょっと待ってよ、私のことも考えてよ!なーんてママの心の叫びは顧みられることなく、わが家は幼虫さんたちを迎え入れることになったのです。
Q 幼虫から飼い始めたいけど、くれる人がいない…どこで見つければいい?
A 例えばカブトムシとクワガタムシの幼虫を都市部で見つけるのはかなり難しいと思います。また山間部でも私有地に無断で立ち入るのはダメです。ルールを守って探さないといけません。そうなると知り合いから譲ってもらうか、ペットショップや昆虫ショップで購入するのが現実的です。

手探りの飼育、一からのスタート

まず確保したのが住みかでした。幼虫を譲ってくれたご近所さんに聞くと専用の土が必要とのことで、ネット通販でオススメの発酵マットを購入。パッケージには「大きく育てよう!」と書かれていました。土一つで違うのかなあ?
Q 土って買わなきゃダメ?庭の土とかは使えないの?
A そこらへんの土でないほうがいいです。販売されている発酵マットをお勧めします。幼虫が育つのに必要な栄養分がより多く含まれているので。今は専門店だけではなく、ホームセンターや100円ショップで扱っていますし、通販でも購入できます。
あとでわかったのは、ご近所さんが玄関先でやっていたのは、マットを入れ替える作業でした。霧吹きなどで土に湿気を与えつつ、定期的に入れ替える必要があるとのこと。ずっと同じ土だとフンだらけになってしまうのだそうです。
Q 使い終わった土はどこに捨てればいいの?
A 捨て方については住んでいる自治体のルールにのっとって適切に処分してください。家に庭があれば植木の土に混ぜてもいいです。虫が死んでしまった場合も公園などには捨てないほうがいいです。庭に埋めるか、抵抗があるかもしれませんが、燃えるゴミに。自分が育てたものは最後まで管理するようにしてください。

訪れた危機?も脱し 季節は巡る

幼虫さんたちはだんだん大きくなってきました。時に白いものが土の表面を覆ってビックリした時もありましたが、定期的に土を入れ替える作業を怠らず続けました。寒い冬から桜が咲き誇った春。そして梅雨の時期に入って、大きな変化がありました。そうです。さなぎになったんです。
飼い始めて半年ほど。当初抱いていた「気持ち悪い」という感情はなくなり、大切な家族の一員となっていました。まるで赤ちゃんが生まれるかのような気持ちで成虫になるのを待っています。

いつ出てくるんだろう、どうやって迎えてあげようか、そんなことを考える毎日。朝起きたら、仕事を終えて家に帰ったら、そして眠る前には、必ず飼育ケースを確認して「いつ出てきてくれても大丈夫だよ」なんて私も語りかけるようになりました。

気持ち悪いと思わず ぜひ虫を飼ってみて!

「もうサナギになった?オス?メス?」「ちょっと前に羽化したよ!」近所に住む虫を飼っているママ友との会話も成長の進み具合についてばかり。

でも、その中で少し気になることを耳にしました。サナギからうまく羽化できなかったり、幼虫のまま動かなくなってしまったりするケースも決して少なくないのだそうです。

子どものワガママを渋々受け入れた形でスタートした昆虫飼育。今では私の方がトリコになってしまいました。カブトムシの幼虫以外にはチョウの幼虫、青虫も。クネクネしていた青虫が美しいチョウの姿に生まれ変わり、空を舞う姿に胸が熱くなりました。
大きく育ったちょうを外に放つ時、息子は「元気でねー!」と、見えなくなるまで手を振っていました。あるじがいなくなった飼育ケースを見て感じた「空虚感」とともに、飼育を通して、息子が一回り成長したように思います。

虫を育てることに、面白さや魅力を感じてしまうのは、それがやはり生き物だからだと思います。生命の尊さ、美しさ、残酷さ。おもちゃとは違う予想外の展開や深い愛情。早送りもスキップもできない時間のかかる日々の積み重ねが、何より楽しく感じました。

さあ、どうでしょう。もうすぐ夏本番。あなたも「虫」の世界に、足を踏み入れてみませんか?

昆虫にまつわるこんな質問に答えます

これまでの質問にも答えてもらったのは昆虫の販売や昆虫に関する月刊誌の発行を行う東京・中野区の「むし社」の3代目社長・飯島和彦さん。カブトムシとクワガタは店内であわせて50種類ほどを取り扱っています。
Q 昆虫を飼育するのは日本独特と聞いたことがありますが本当?
A こういう文化が根付いているのは日本ぐらいだと言われています。コンビニや100円ショップに虫捕り用のあみが売っている。そして飼育道具も売っているというのは世界を見れば、極めて珍しいことです。ヨーロッパなどでは虫好きが標本にするために採集することはあります。
Q 昆虫の繁殖を行うブリーダーで生計を立てることはできる?
A ブリーダーで生計を立てている人はいます。YouTubeやインスタグラムをうまく使ってやっている人もいれば、ネットショップやオークションに出して売ったりも。ブリーダー以外には輸入専門でやっている人もいて、私たちはそこから仕入れることがあります。
Q 子どもが公園で見つけて持ち帰ってくる代表格のダンゴムシは飼育できる?
A ダンゴムシは飼えますよ。飼い方を紹介する本が出るなど、最近、人気があると言えます。子どもだけではなく、大人で飼っている人もいます。腐葉土とか野菜くずをエサにできますが、雑食なので何でも食べます。カブトムシやクワガタムシは怖いと思う人でもダンゴムシは大丈夫という人が多いのではないでしょうか。気軽に始められる昆虫飼育と言えるかも知れません。

昆虫を極めたい!

最後に昆虫に関わる仕事がしたいと考える人にはこんな学校もあります。仙台市の専門学校では去年、昆虫専攻のコースが新たに設けられました。このコースでは3年間、カブトムシやクワガタムシの繁殖技術や標本制作それにインターネットを通じた販売ノウハウなどを幅広く学ぶことができるということです。
昆虫は地球上でもっとも繁栄している生き物です。都会のど真ん中からしゃく熱の砂漠、さらには極地まで。あらゆる環境でたくましく生きる身近な隣人ということも心に留めておきたいと思います。

(佐藤恵梨香/おはよう日本 鈴木彩里・國仲真一郎・今井桃代/ネットワーク報道部)