「候補者はアイドル!」若者たちの意外な選挙観

22日に公示された参議院選挙。
しかし、前回の参議院選挙では全国の選挙区の投票率は、48.80%と、過去2番目の低さ…。その一方で、「選挙が好き!」と熱く語る若者たちがいます。
「候補者はアイドル!」と街頭演説をハシゴする19歳。
「国会議員要覧を読むのが娯楽」と語る20歳。
さらには、投開票の当日に「選挙バー」というイベントを企画し、開票速報番組を見てスポーツバーさながらに盛り上がっているという大学生も。
3人の視点で、公示から投開票まで、選挙期間のディープな魅力を見ていきます。
しかし、前回の参議院選挙では全国の選挙区の投票率は、48.80%と、過去2番目の低さ…。その一方で、「選挙が好き!」と熱く語る若者たちがいます。
「候補者はアイドル!」と街頭演説をハシゴする19歳。
「国会議員要覧を読むのが娯楽」と語る20歳。
さらには、投開票の当日に「選挙バー」というイベントを企画し、開票速報番組を見てスポーツバーさながらに盛り上がっているという大学生も。
3人の視点で、公示から投開票まで、選挙期間のディープな魅力を見ていきます。
街頭演説を追いかけて 自転車で1日100キロ爆走!
選挙期間のために、大学の授業を2限から6限まで空ける“参院選シフト”の時間割を組むという都内在住の加藤準平さん(19)。
日中の7時間半を“街頭演説の追っかけ”に費やすほどの選挙好きです。
都内各地で行われる街頭演説を巡っているのですが、交通手段はなんと自転車。移動する道すがら、街に貼られた候補者のポスターを見て回るのも楽しみなのだそうです。
去年の東京都議会議員選挙では、自転車で1日105キロ走ったという記録も。
なぜそんなに選挙が好きなのかを聞いてみると…。
日中の7時間半を“街頭演説の追っかけ”に費やすほどの選挙好きです。
都内各地で行われる街頭演説を巡っているのですが、交通手段はなんと自転車。移動する道すがら、街に貼られた候補者のポスターを見て回るのも楽しみなのだそうです。
去年の東京都議会議員選挙では、自転車で1日105キロ走ったという記録も。
なぜそんなに選挙が好きなのかを聞いてみると…。
加藤準平さん
「選挙に出る候補者の皆さんは自分にとってアイドルです。(候補者は)選挙を戦って“センター”へ行こう、そして自分の声を聴いてもらおうと奮闘し、ファンすなわち私たち有権者を喜ばせるための政策を考えてくれる。だから私には各所に“推し”がいます」
「選挙に出る候補者の皆さんは自分にとってアイドルです。(候補者は)選挙を戦って“センター”へ行こう、そして自分の声を聴いてもらおうと奮闘し、ファンすなわち私たち有権者を喜ばせるための政策を考えてくれる。だから私には各所に“推し”がいます」

準平さんが特におすすめする街頭演説スポットは、池袋・豊洲・秋葉原の3か所。
同じ都内でも地域ごとに特性や演出があり、それぞれに楽しみ方があるといいます。
同じ都内でも地域ごとに特性や演出があり、それぞれに楽しみ方があるといいます。
加藤準平さん
「街頭演説は、候補者が自分のところに来て目線を見て話してくれる、本人の口から直接話を聞けるのが魅力です」
「街頭演説は、候補者が自分のところに来て目線を見て話してくれる、本人の口から直接話を聞けるのが魅力です」
池袋駅東口は、選挙期間に通い詰めているスポットの1つ。
駅前の横断歩道の途中に中洲のような場所があり、人が立ち止まりやすく演説を聞かせやすい立地であるため、多くの政党、候補者が演説をするそうです。
準平さんにとっては、ビラや機関誌など、“グッズ”を集められるのも魅力。
準平さんは種類豊富なポスターやビラ、名刺をコレクションしています。
駅前の横断歩道の途中に中洲のような場所があり、人が立ち止まりやすく演説を聞かせやすい立地であるため、多くの政党、候補者が演説をするそうです。
準平さんにとっては、ビラや機関誌など、“グッズ”を集められるのも魅力。
準平さんは種類豊富なポスターやビラ、名刺をコレクションしています。
加藤準平さん
「例えばビラ1つでも、カフェのメニューのような受け取りやすいものに工夫する陣営もあり、各党の違いが出ます。集めたビラやポスターを見て、過去を振り返ったり、ビジュアルの変化を楽しんだりしています」
「例えばビラ1つでも、カフェのメニューのような受け取りやすいものに工夫する陣営もあり、各党の違いが出ます。集めたビラやポスターを見て、過去を振り返ったり、ビジュアルの変化を楽しんだりしています」
“つまらない選挙なんて1つもない”
地域や場所に合わせて変わる、さまざまな演出。
豊洲で見ることができるのは、運河沿いの高層マンションに向かって「船」から演説する珍しい光景です。
豊洲で見ることができるのは、運河沿いの高層マンションに向かって「船」から演説する珍しい光景です。

一方、秋葉原では、ロータリーを囲むように広い歩道や歩道橋があり、多くの聴衆が集まって盛り上がる“ライブ感”を楽しめるといいます。

自分の住んでいる地域ではどんな街頭演説スポットがあるのか、観察してみると意外な発見があるかもしれません。
準平さんは今回の参議院選挙では、都内だけでなく、全国各地で演説する“アイドル”に会いにいく予定です。
加藤準平さん
「1つ私が伝えたいことは、つまらない選挙なんて1つもないということです。なぜならどんな選挙でもそれぞれのドラマがあって、それぞれの候補者にはいろんな思いや考え方があるからです。選挙に少しでも興味をもってもらえたらと思います」
「1つ私が伝えたいことは、つまらない選挙なんて1つもないということです。なぜならどんな選挙でもそれぞれのドラマがあって、それぞれの候補者にはいろんな思いや考え方があるからです。選挙に少しでも興味をもってもらえたらと思います」

選挙は人間がみえてくるデータの宝庫!?
「国会議員要覧を読むのが大好き」と語るのは、舞大樹さん(20)。
現在スウェーデンに留学して政治を学んでいる大樹さんは、幼い頃から「衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調」など選挙に関する膨大な資料を熟読し、娯楽のように親しんできました。
現在スウェーデンに留学して政治を学んでいる大樹さんは、幼い頃から「衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調」など選挙に関する膨大な資料を熟読し、娯楽のように親しんできました。

選挙のデータを通して大樹さんが見ているのは、その向こう側にある、人間の“心の内”。
数字だけでなく、候補者の応援演説を100以上集めて分析し、選挙を楽しむためにみずから「架空の応援演説原稿」まで作成してしまうほどの熱の入れようです。
数字だけでなく、候補者の応援演説を100以上集めて分析し、選挙を楽しむためにみずから「架空の応援演説原稿」まで作成してしまうほどの熱の入れようです。
舞大樹さん
「分析の結果、政治家の応援演説は『候補者の紹介』『選挙区の課題』『ご当地ジョーク』などのパターンから構成されているということが分かりました。そのうえで実際の演説を聞くと、次にくる話題や政治家の戦略が見えてくる。いちばん言いたいことも、逆に避けたい話題も、分かってくるんです。選挙のデータから、各地域の候補者や有権者の考え方を知るのは、すごくワクワクして楽しいです」
「分析の結果、政治家の応援演説は『候補者の紹介』『選挙区の課題』『ご当地ジョーク』などのパターンから構成されているということが分かりました。そのうえで実際の演説を聞くと、次にくる話題や政治家の戦略が見えてくる。いちばん言いたいことも、逆に避けたい話題も、分かってくるんです。選挙のデータから、各地域の候補者や有権者の考え方を知るのは、すごくワクワクして楽しいです」
国民全員が参加して1つのデータを作りあげる
大樹さんにとって最もエキサイティングな瞬間は「開票」。
特に、投票締め切り直後に放送される「開票速報番組」は見逃せないといいます。
投開票日の夜は、自分の部屋にテレビとパソコンを6台配置して、テレビ番組・ネット番組・新聞社のウェブサイトなどを同時にくまなくチェック。
さらには「ドント式」という、各政党の比例代表の獲得議席数を決めるための計算方法を用いて、独自に当選予測までしているのです。
特に、投票締め切り直後に放送される「開票速報番組」は見逃せないといいます。
投開票日の夜は、自分の部屋にテレビとパソコンを6台配置して、テレビ番組・ネット番組・新聞社のウェブサイトなどを同時にくまなくチェック。
さらには「ドント式」という、各政党の比例代表の獲得議席数を決めるための計算方法を用いて、独自に当選予測までしているのです。

誰かに見せるためではなく、純粋に自分で楽しむのが目的だという、ひとり当選予測。時にはテレビよりも早く当選を確信する瞬間があるといいます。
舞大樹さん
「長かった選挙戦のクライマックスであり、みんながたくさん努力して票を集めようと頑張ってきた結果が数字でどんどん分かっていく。そのダイナミックな感じがおもしろいんです。当選予測は、朝の5時とか6時まで没頭しています」
「長かった選挙戦のクライマックスであり、みんながたくさん努力して票を集めようと頑張ってきた結果が数字でどんどん分かっていく。そのダイナミックな感じがおもしろいんです。当選予測は、朝の5時とか6時まで没頭しています」
大樹さんにとって選挙は、日本国民全員が参加して1つのデータを作りあげる、ダイナミックなイベント。
そこに、数字で割り切れない、候補者一人一人の人間模様や感情が色濃く出るのが、選挙のおもしろさだと語ります。
そこに、数字で割り切れない、候補者一人一人の人間模様や感情が色濃く出るのが、選挙のおもしろさだと語ります。
“選挙バー” みんなで選挙や政治を語り合いたい
長野県飯田市出身の細田朋宏さん(19)は、地元の施設を借りて「選挙バー」というイベントをこれまで3回開催してきました。
「選挙バー」は、投開票日に開票速報番組を見ながらみんなで盛り上がるというもの。リラックスして政治を語り合える場にしようと、朋宏さんは選挙事務所をイメージした飾りつけをしたり、選挙の争点を知ってもらう企画を用意したり工夫を凝らしました。
「選挙バー」は、投開票日に開票速報番組を見ながらみんなで盛り上がるというもの。リラックスして政治を語り合える場にしようと、朋宏さんは選挙事務所をイメージした飾りつけをしたり、選挙の争点を知ってもらう企画を用意したり工夫を凝らしました。
細田朋宏さん
「最初に選挙バーを開催したのは16歳のとき。自分にとっての選挙の楽しみ方があって、それをみんなで共有したいと思って提案しました。3か月ほどかけて準備したのですが、20人ほどの参加者が集まり大盛況。正直これほど人が来てくれるとは思わなかったのでうれしかったですね」
「最初に選挙バーを開催したのは16歳のとき。自分にとっての選挙の楽しみ方があって、それをみんなで共有したいと思って提案しました。3か月ほどかけて準備したのですが、20人ほどの参加者が集まり大盛況。正直これほど人が来てくれるとは思わなかったのでうれしかったですね」

小学生の頃から、読書の宿題に各党の公約を読んだ感想文を書いてしまうほど政治・選挙が大好きだった朋宏さん。
しかし、自分の好きな話題を友達と共有できず、苦しんでいた時期がありました。
悩みがちになり、中学では体調を崩して学校に通えなくなるほどに。病院で「強迫性障害」と診断を受け、1年半ほどの入院生活を余儀なくされました。
退院後、自分の“好き”を周りと分かちあいたいと考え、たどり着いたのが「選挙バー」だったのです。
しかし、自分の好きな話題を友達と共有できず、苦しんでいた時期がありました。
悩みがちになり、中学では体調を崩して学校に通えなくなるほどに。病院で「強迫性障害」と診断を受け、1年半ほどの入院生活を余儀なくされました。
退院後、自分の“好き”を周りと分かちあいたいと考え、たどり着いたのが「選挙バー」だったのです。
細田朋宏さん
「選挙・政治の話題が周りとしづらくて、友達と話題を合わせるためにバラエティー番組などを無理して見ていました。自分が心底楽しいと思っているものを楽しいと言えず、自分自身の正しい姿ではなかったと今は思います」
「選挙・政治の話題が周りとしづらくて、友達と話題を合わせるためにバラエティー番組などを無理して見ていました。自分が心底楽しいと思っているものを楽しいと言えず、自分自身の正しい姿ではなかったと今は思います」

朋宏さんの「選挙バー」が実現した裏側には、地域の大人たちの支えもありました。
新海健太郎さんは、会場の手配やサポートをおこなった一人。
実はそれまで「選挙はタブーな世界」とどこか怖い気持ちも抱いていたという新海さんですが、「選挙バー」に参加したことで、自分の選挙に対する考え方が変わってきたといいます。
新海健太郎さんは、会場の手配やサポートをおこなった一人。
実はそれまで「選挙はタブーな世界」とどこか怖い気持ちも抱いていたという新海さんですが、「選挙バー」に参加したことで、自分の選挙に対する考え方が変わってきたといいます。
新海健太郎さん
「地域のイベントで政治を扱っていいの?という思いは、選挙バーを準備しているさなかもありました。でも若い方のむくな気持ちが、課題をクリアしていくというか。おかげで政治について語り合うことができて、すごくいい機会をいただきました」
「地域のイベントで政治を扱っていいの?という思いは、選挙バーを準備しているさなかもありました。でも若い方のむくな気持ちが、課題をクリアしていくというか。おかげで政治について語り合うことができて、すごくいい機会をいただきました」

自分の行動を応援してくれる大人との出会いで、再び選挙を心から楽しめるようになった朋宏さん。自分の気持ちを押し殺すような経験や思いを、ただの1人にもしてほしくないと語ってくれました。
選挙や政治の話題がタブーでなく、みんなで語りあえるものになってほしいという願いが「選挙バー」には込められているのです。
選挙や政治の話題がタブーでなく、みんなで語りあえるものになってほしいという願いが「選挙バー」には込められているのです。
やっぱり選挙が好きすぎる!
選挙が好きすぎる若者たちはその魅力や思いを熱く、そして楽しそうに語ってくれました。
政治や選挙ということばを聞くとつい構えてしまいがちですが、彼らの「好き」は、選挙をそんなイメージから解き放ち、自由に語り合ったり楽しんだりしていいのではと訴えていました。
6月22日公示、7月10日投開票の「参議院選挙」。
街頭演説から投票・開票まで、選挙や政治ということばから想起されるイメージにとらわれず、自分なりの楽しむ気持ちを持って選挙と向き合ってみてもいいのかもしれません。
最後に朋宏さんはこんなメッセージをくれました。
政治や選挙ということばを聞くとつい構えてしまいがちですが、彼らの「好き」は、選挙をそんなイメージから解き放ち、自由に語り合ったり楽しんだりしていいのではと訴えていました。
6月22日公示、7月10日投開票の「参議院選挙」。
街頭演説から投票・開票まで、選挙や政治ということばから想起されるイメージにとらわれず、自分なりの楽しむ気持ちを持って選挙と向き合ってみてもいいのかもしれません。
最後に朋宏さんはこんなメッセージをくれました。
細田朋宏さん
「私にとって選挙は“祭り”ですね。開票速報を見ているととにかくすごく興奮しますし、選挙カーが走ってくると飛び出していきたくなっちゃう。こんなおもしろいものは自分にとってはなかなかないです。祭りに参加するような気持ちで、選挙や政治に参加してみるのも、おもしろいかもしれません」
「私にとって選挙は“祭り”ですね。開票速報を見ているととにかくすごく興奮しますし、選挙カーが走ってくると飛び出していきたくなっちゃう。こんなおもしろいものは自分にとってはなかなかないです。祭りに参加するような気持ちで、選挙や政治に参加してみるのも、おもしろいかもしれません」

関連番組「SENKYOが好きすぎる!」6月19日放送
パンサー向井慧と20歳前後の出演者たちがお届けする、極私的政治バラエティー。街頭演説から開票速報まで、選挙が好きすぎる人ならではのディープな楽しみ方を掘り下げます!NHKプラスで6月26日(日)15:00まで見逃し配信します。


仙台放送局 ディレクター
石森康裕
2009年入局。最近制作した番組は「ロッパグラム~転生したら戦時中の喜劇王だった件~」「ありがとうを3.11に伝えよう委員会」など。
石森康裕
2009年入局。最近制作した番組は「ロッパグラム~転生したら戦時中の喜劇王だった件~」「ありがとうを3.11に伝えよう委員会」など。