大阪ビル放火受け 国の検討会 「退避区画」設置などの報告書案

大阪 北区のビルが放火され、26人が巻き込まれて犠牲になった事件を受けて対策を議論していた国の検討会は、避難階段が1つしかない建物について一時的に安全を確保する「退避区画」を設けるなどとする報告書の案をまとめました。

去年12月、大阪 北区のビルでクリニックが放火され26人が犠牲になった事件を受けて、防火や避難の対策を議論してきた国の有識者会議は、21日の会合で報告書の案をまとめました。

それによりますと、避難経路にガソリンをまいて火をつけるなど、悪質な放火への対策を法律で一律に規制することは社会の負担が大きく、新たな制限を設けるべきではないと指摘しています。

そのうえで、事件が起きたビルのように、地上とつながる階段が1つしかない建物で敷地に余裕がある場合には、避難に利用する階段の増設や屋外バルコニーの設置を推奨するとしています。

さらに、対策が難しい建物では避難ができないことも想定されるため、屋内に炎や煙を遮る扉を増やして、消防などの救助までに一時的に安全を確保する「退避区画」を設けることが有効だとしています。

会合では報告案が了承され、国は近く、階段が1つしかない建物の防火や避難対策のガイドラインを策定することにしています。

一方、国土交通省はこうした対策を推進するため、今月、建築基準法を改正し、規制が適用されない「既存不適格」の建物について、防火や避難に関わる部分的な改修を認めることになりました。

検討会の座長で日本大学大学院の菅原 進一教授は、「階段が1つの建築物は構造上リスクを常に抱えており、リスクを少しでも下げるための取り組みが必要だ。大変だが地道に進めることが大事だ」と話しています。

総務省消防庁 火災の原因調査結果を報告

21日の国の検討会では、去年12月の大阪 北区の放火事件について総務省消防庁が現地で行った火災の原因調査の結果も報告されました。

それによりますと、出火場所となったビル4階にあるクリニックの入り口付近の床からはガソリンの成分が検出され、エレベーターの前でライターも見つかりました。

出火場所に近い待合室の写真では天井が崩れ落ち、特に激しく燃えた様子がうかがえます。

犠牲になった人たちが発見された待合室から続く廊下や、その奥の診察室の写真では、壁や天井にいたるまで黒いすすがついています。

また、総務省消防庁のシミュレーションでは、火災の発生からわずか1分で奥の診療室まで黒い煙が充満して、数分後には一酸化炭素濃度が非常に高くなり、避難した人が一酸化炭素中毒などになったとみられることも報告されました。

このほか、多くの人が犠牲となったことについては、放火に使われたガソリンによって燃焼が急激に進んだことと、唯一の避難経路となっていた入り口の前で火災が発生し、奥に避難せざるをえなかったことが原因だとしています。

国土交通省 建築基準法を改正へ

今回の放火事件で現場となったビルには、建築基準法の施行令で2つ以上設置することが義務づけられた階段が1つしかありませんでした。

この基準は1974年以降の建物を対象としていて、今回のビルは規制が適用されない「既存不適格」だったとみられています。

国土交通省によりますと、避難階段が1つしかないなど「既存不適格」の雑居ビルは全国にあるものの、建物を改修する際には一部であっても原則として不適格部分すべての基準を満たす必要があるため、費用などの理由から所有者がためらうケースがあったということです。

国土交通省は、今回の事件などを受けて建築基準法を改正し、これまで小規模な耐震化工事などに限っていた建物の部分的な改修を、防火や避難に関わる場合についても認めることとなりました。

この法律の規定は2年以内に施行される見通しで、国土交通省は今回の検討会での議論も踏まえ、具体的な基準の検討を進め、施行令で定める方針です。