皇居「三の丸尚蔵館」本格的な展示施設へ 建て替え工事を機に

皇室ゆかりの貴重な美術品などを保存・公開する皇居の「三の丸尚蔵館」が、建て替え工事を機に宮内庁から国立博物館などを運営する「国立文化財機構」に移管される見通しとなり、本格的な展示施設として生まれ変わることになりそうです。

皇居・東御苑にある「三の丸尚蔵館」は、皇室から国に寄贈された国宝級の作品など1万点近い美術・工芸品を、宮内庁が保存・管理するとともに一部を無料で公開しています。

現在、収蔵・展示スペースの大幅な拡充に向けた建て替え工事が施設を休館にして進められていて、4年後の全面開館を前に、来年の秋、全体の半分を占める新たな施設がオープンすることになっています。

関係者によりますと、これを機に、宮内庁が管理・運営してきた施設が、文化庁の所管で全国に4つある国立博物館などを運営する「国立文化財機構」に移管される見通しになったということです。

建物や収蔵品のほか、学芸員などの職員も移されることになり、今後、宮内庁や文化庁などが調整を急ぐことにしていて、これまで無料だった展示スペースの有料化や、建物の新たな名称についても検討が進められる見通しです。

「三の丸尚蔵館」は、皇居の新たな顔として皇室と日本の文化を内外に発信する役割を担う本格的な展示施設に生まれ変わることになりそうです。

「三の丸尚蔵館」とは

三の丸尚蔵館は、皇室に代々受け継がれてきた美術品の数々が、平成元年に国に寄贈されたのをきっかけに、作品を保存・管理するとともに一般に公開する施設として、皇居・東御苑の旧江戸城の三の丸に建設され、平成5年に開館しました。

その後、昭和天皇の后の香淳皇后の遺品や三笠宮家からの寄贈品なども加わり、絵画や書、工芸品など1万点近くが収蔵されています。

宮内庁によって運営され、展示スペースへの入館は無料で、新型コロナウイルスの感染拡大以前は、外国人観光客の増加もあって、年々、来館者が増える傾向にあり、平成29年までに620万人余りが訪れました。

建て替え後は、地上3階、地下1階の建物となり、収蔵スペースはこれまでのおよそ4倍の4000平方メートル程度に、展示スペースは、およそ8倍の1300平方メートル程度になる見通しです。

これによって、一度に展示できる作品の数が大幅に増えるだけでなく、複数の展示施設ができ、展示品の入れ替えのための休館も無くなる見込みです。

三の丸尚蔵館は、現在、新たな施設への移行期間中で、宮内庁は、学芸員などの体制の強化を図りつつ、地方の博物館などへの作品の貸し出しを進めています。

また、新たな施設の全面開館に間に合うよう、施設の向かいにはおよそ3000平方メートルの休憩所が整備される予定です。

皇居内では初めてとなるカフェのほか、売店やテラスなどが併設され、皇室の活動や皇居について紹介するコーナーも設けられるということです。

「三の丸尚蔵館」の収蔵品は

三の丸尚蔵館の収蔵品には、歴史の教科書などにも登場する知名度の高い作品が数多く見られます。

宮内庁が設けた収蔵品の保存や公開に関する有識者懇談会は、全体の4分の1にあたるおよそ2500点が国宝や重要文化財の候補になるレベルのもので、それ以外のほとんどの作品も、美術的・歴史的価値を有し博物館や美術館で展示することが適当だとしています。

去年の秋には、5点の収蔵品が国宝に指定されました。

鎌倉時代の軍記絵「蒙古襲来絵詞」や、江戸時代の絵師、伊藤若冲の「動植綵絵」、桃山時代に狩野永徳が描いたびょうぶ絵、「唐獅子図」などです。

有識者懇談会は、展示スペースの拡充で、2巻からなる「蒙古襲来絵詞」の全場面を展示したり、30幅の連作である「動植綵絵」を一堂に展示したりすることが可能になるとしています。

「三の丸尚蔵館」立て替えの経緯

収蔵を主な目的として建てられた三の丸尚蔵館。

作品の増加に伴って収蔵スペースが不足するとともに、展示スペースにいたっては施設全体の10分の1以下しかなく、一度に展示できる作品が限られてしまうのが大きな課題でした。

7年前、宮内庁は、建て替えではなく増築と改修という形での基本構想を取りまとめました。

その翌年、政府が皇室関連施設など国の施設の観光資源としての活用方針をまとめます。

宮内庁は、皇居の参観の拡大や京都御所の年間を通じた公開に踏み切り、三の丸尚蔵館についても有識者懇談会の提言を受ける形で計画の見直しを進め、平成30年、今の建物を取り壊して収蔵や展示の機能を一体化した施設を新たに建設する方針を明らかにしました。

「国立文化財機構」とは

「国立文化財機構」は、平成19年に発足した文化庁が所管する独立行政法人です。

東京、京都、奈良、九州の4つの国立博物館や、3つの研究施設を運営しています。

このうち、来館者が最も多い東京国立博物館では、ほぼ毎週、常設展の展示替えを行い、特別展も例年複数回開いています。

新型コロナウイルスの影響を受ける前は、特別展だけで年間に100万人から200万人もの人たちが訪れていました。

最近でも、ことし3月から開かれた「空也上人と六波羅蜜寺」展や、ことし1月からの「ポンペイ」展などは、コロナ禍にもかかわらず多くの来館者を集めました。

「国立文化財機構」は、文化財の専門的・技術的な事柄に関する日本で唯一の国立の研究機関でもあり、およそ400人の職員の半数を研究職が占めています。