遠方から通うがん患者を支えるホテル 病院敷地内にオープンへ

がんの治療を受けるために、遠くから病院に通う患者も利用しやすい設備やサービスを提供するホテルが、来月千葉県にある日本のがん医療の中核を担う病院の敷地内にオープンすることになり、20日報道陣に公開されました。

ホテルは千葉県柏市にある国立がん研究センター東病院の敷地内に建設されました。

この病院はがんの薬の治験を行う国内の拠点になっていることなどから、治療を受けたり、治験に参加したりする患者が、全国各地から訪れていて、およそ1割の患者は、2時間以上かけて来院しているということです。

ホテルは計画の段階から、がん患者や家族から話を聞くなどして、ニーズに応じた設備を整えたということで、145室の客室に合わせて300人余りが宿泊することができます。

客室には緊急時に備え介護の研修を受けたスタッフとつながる呼び出しボタンがあるほか、人工肛門を装着している人に対応したシャワールームやトイレがある部屋や、治療で長期滞在する人のためにキッチン付きの部屋もあるということです。

病院から情報を受けて、ホテルのスタッフが、患者の状態に合わせて介助を行う体制も整えるということで、病院では、がん患者と家族に対応したホテルができるのは初めてではないかとしています。

大津敦病院長は「ホテルを活用することで、より多くの患者に、この病院の医療を提供できるようにしていきたい」と話しています。

治験実施は都市部が多い 100キロ以上離れた患者も

がん治療は、全国400か所余りに「がん診療連携拠点病院」が整備されていて、全国どこでもがんの標準治療を受けることができますが、国立がん研究センターなどによりますと、新たな薬の治験や治療法の効果を検証する臨床試験の実施件数は都市部の病院が多くなっているということです。

国立がん研究センター東病院の大津敦 病院長によりますと、特に初期の段階の薬の治験の8割から9割ほどは国立がん研究センターの千葉県柏市にある東病院と、東京 中央区にある中央病院の2つの病院で行われているということです。

今回、敷地内にホテルが建設された東病院では、年間に受診するがん患者およそ30万人のうちの1割ほどは2時間以上かけて受診し、薬の治験に参加する患者の4分の1は100キロ以上離れたところから受診しているということです。

大津病院長は「治験を行うためにはスタッフも含めて非常に高度な態勢が必要で、どうしても受け入れられる病院が限られてしまう。抗がん剤の副作用などで体調を崩している患者さんにとっては、遠方からの移動は非常に負担になっていて、こうしたホテルを活用して少しでも負担を少なくしたい」と話していました。

ホテルの設備やサービス 患者や家族の意見を反映

今回、建設されたホテルは、がんの治療中の患者やその家族などの意見を聞いて設備やサービスが整えられたということです。

アイデアを提供した1人、櫻井公恵さん(54)は2010年に夫の雄二さんを消化器の希少がんで亡くしました。

雄二さんは千葉県銚子市にある自宅から片道3時間近くかけて治療のために国立がん研究センター東病院に通院し、仕事と病院での治療を両立させていたということです。

櫻井さんは当時のことを思い出し、ホテル側に対して客室のインターネット環境を整え、患者が作業しやすい高さの机を置いてもらうよう要望しました。

また、雄二さんが抗がん剤の副作用で手の指に痛みが出て、ものを握ることが難しくなっていたことを思い出し、ペットボトルのふたなどをあける「オープナー」を部屋に常備してもらうようアイデアを出し、サービスとして取り入れられたということです。

櫻井さんは「治験など、最新の治療は受けられる施設がどうしても限られるが、患者や家族としてはどんなに家から遠くても、そこでしか受けられない治療なら受けたいという気持ちだと思う。患者目線に立ったホテルがあることは支えになるし、在宅療養に切り替えたときの参考にもできると思う」と話していました。

ホテルでは患者や家族の要望を生かして、治療中の患者が食べやすいよう患者や家族の希望に応じて、食事を細かく刻んだり、一口で食べられるようにしたりするほか、食べこぼしにくいスプーンなどの貸し出しも行うということです。