工場の“やっかいもの”が商品になりました

工場の“やっかいもの”が商品になりました
キャンプ人気で、多くのメーカーがキャンプ用品の開発に乗り出しています。愛媛からは特産のタオルを作るメーカーが、あるモノを商品化し、キャンパーの間で話題になりました。目をつけたのは、工場で廃棄されていた“やっかいもの”でした。(松山放送局カメラマン 岩崎温)

日本一のタオルの産地

瀬戸内海に面した、愛媛県今治市。2019年の生産量は1万トンを超える、日本一のタオルの産地です。

市内にはタオルを織る工場をはじめ、糸を加工する工場や染色工場など200近い関連工場があります。

新型コロナの影響で2021年の生産量は8000トンに減少しましたが、全国のシェアは57%と、ほかの産地を圧倒しています。
今回、私が取材したのは、創業68年のタオルの染色会社です。この会社では、タオルをさまざまな色に染めたり、風合いを出す加工を行っています。

近年、タオル業界も環境対策が課題になっています。

工場では、機械を動かし繊維を染めるために、水や電気など、大量のエネルギーが必要になります。

この会社でも省エネのため配管を断熱材で覆ったり、電力効率の高い機械を導入したりと環境にやさしい取り組みを推進してきました。

あの“やっかいもの” 綿ぼこりが…

染色会社で商品開発を担当する福岡友也さんです。持続可能な商品開発を目指していましたが、ある日、工場の中で目にとまったものがありました。

それは、工場の片隅に山積みに置かれていた「綿ぼこり」です。
染色工場では染めたタオルを巨大な乾燥機で乾かしますが、機械を一日使用すると、240リットルもの綿ぼこりが出ます。

フィルターにはびっしりとほこりが張り付き、省エネや防火対策のためにも毎日、5回程度の掃除が欠かせません。
ただ廃棄するしかなかった綿ぼこりを、再利用できないか。

キャンプが趣味の福岡さんは、たき火に火をつけるために使う“着火剤”として活用することを思いつきました。
福岡さん
「火がつきやすいというのは前からわかってました。しかし、どういう燃え方するのかわからなかったので、商品化をするために、ほこりの量によって燃焼時間がどう変わるかなど、何度も観察しました」

“カラフルさ”を売りに

福岡さんは実験を繰り返し、実用性には確信を持ちました。

しかし、元はただのほこり。そのまま商品化するだけでは消費者の目には止まりません。

そこで、着目したのが染色工場ならではの「色」でした。
「色なら自由自在に作ることができる」というこの工場にはタオルの色と同じ数の色のほこりがあります。

乾燥機のフィルターに付着したほこりは白、黄、赤、青、緑…
本当にカラフルなんです。

カラフルなほこりをどう商品に生かすか。
若手の従業員と議論していた時、SNSに映えることを意識して、詰める容器を透明にしたら外から色が見えて面白いのではというアイデアが出ました。

さらに、1色ではなく複数の色を合わせたらより人目を引くのではないかという意見も。

どの色を組み合わせて詰めるかは若手の感性に任せることにしました。
女性従業員
「外から見てほこりが層になるようにこだわっています」
福岡さん
「私が作るとどうしてもおじさんの色になってしまうのですべて任せています」
これが、完成したほこりの“着火剤”です。ことし2月から、販売を開始しました。

一般的な使用量で、およそ5回分の着火に使えるほこり、50グラムが詰められています。
アウトドアブームの後押しもあって福岡さんのねらいは当たり、商品はSNSを中心に人気を集め、全国から注文が相次いでいるといいます。
アウトドアショップの店員
「注目している人は多いです。ぱっと見た色合いなどが今の若い人の好みにあったテイストで、目に入りやすいからだと思います」
実際の使い勝手はどうなのか気になり、瀬戸内海に面した場所にあるキャンプ場で利用者に試してもらいました。
いつもまきに火をつけるのは、アウトドアが趣味の夫に任せっきりだという妻は商品を手に取ると。

「初めてまきに火をつけることができたよ。あったかいね」
廃棄されるだけだったタオルのほこりを今治の“誇り”にして照らしたい。福岡さんの願いです。
福岡さん
「元は“ほこり”ですが、ほこりで終わってはいけない。この地域のタオル産業、これらを含めて未来への光になればなと思います」

ほかにもあった タオル工場で見つけた再利用

工場で出た不要なものを、再利用する取り組み。取材を続けると、ほかのメーカーでも進んでいました。

そのうちの1つが、今治市内に本社を置く創業63年のメーカーです。

この会社では、タオルを織ったあとに出る余り物の「残り糸」を再利用してタオルを生産しています。
メーカーによりますと、タオルの生産には、デザインごとに指定された色の糸を多めに準備するため、どうしても糸が余ってしまいます。

その量は、年間およそ6000キログラム。色は数百種類以上に上るといいます。
このメーカーでは、およそ20年前から残り糸を使ったタオルの生産をしています。

今では、その99%を再利用し、新たな商品に生まれ変わらせることで、廃棄物の削減につなげているということです。

「残り糸」を再利用した今治市のタオルメーカーの担当者は次のように話しています。
今治市のタオルメーカーの企画営業 桑原崇さん
「工場で生産される上質なタオルの残り糸を使ったものなので、品質は通常タオルと変わらずとてもよく、色がミックスされていることが人気です。最近は、環境問題への関心の高まりから、残り糸を使ったタオルへの問い合わせが増えています」
廃棄するしかなかった「やっかいもの」を、ちょっと視点を変えることで、別のビジネスチャンスにつなげていく。

今回取材した取り組みには、地域の大切な産業を守り、発展させていくためのヒントがありました。

今後も、愛媛の地場産業を支える魅力的なアイデアを見つけて発信していきたいと思います。
松山放送局カメラマン
岩崎温
1999年入局
2020年から愛媛県で勤務
趣味の1つはダイビング。海でサンゴや熱帯性のカラフルな魚を見ると心が躍ります