ウクライナ軍 “多くの兵器を失った”さらなる軍事支援を訴え

ロシア軍は完全掌握を目指す東部ルハンシク州で、ウクライナ側の兵士や市民が残る工場の制圧に向け攻勢を強めています。一方、ウクライナ軍で地上部隊の補給活動を担う司令官は、これまでの戦闘で戦車やミサイル発射システムなど多くの兵器を失ったとして、欧米側にさらなる軍事支援を訴えました。

ロシア軍は完全掌握を目指す東部ルハンシク州で、ウクライナ側の拠点セベロドネツクを包囲しようと攻撃を続けています。

セベロドネツクの「アゾト化学工場」には、ここを拠点とする兵士とともに市民も取り残され、ルハンシク州のハイダイ知事は17日、子ども38人を含む568人が残っていると明らかにしています。

これに対し、ロシア側は市民を避難させる「人道回廊」を設置すると主張する一方、兵士には投降を迫っていて、現地の親ロシア派武装勢力の指導者はロシア国営のタス通信に対し、ロシア側の部隊の一部が工場内に入り戦闘が行われているとしています。

イギリス国防省は18日に発表した戦況分析で、ロシア軍がセベロドネツクの一帯を北側からも包囲しようとしていて、それに向けた進軍を再開した可能性があると指摘しています。

また、ロシア軍が主張する「人道回廊」について、イギリス国防省は「ロシア軍は、ウクライナ侵攻の当初も各地で『人道回廊』を一方的に提示し強制移住を促している。今回も、市民はロシア側が支配する地域に連れて行かれるとみられる」と指摘し、ウクライナ側が拒否する可能性があるという見方を示しています。

一方、ウクライナの公共放送は17日、ハイダイ知事の話として、セベロドネツクに隣接するリシチャンシクでもロシア軍が空爆を行い、少なくとも3人が死亡し、複数のけが人が出ていると伝えました。

ハイダイ知事はSNSへの投稿では、リシチャンシクと近郊の都市とを結ぶ幹線道路がロシア軍によって破壊されるなど、重要なインフラへの攻撃も続いているとしています。

こうした中、15日付けのアメリカの軍事専門誌「ナショナル・ディフェンス」は、ウクライナ軍で地上部隊の補給活動を担う司令官のインタビューを掲載し、ウクライナ軍は、これまでに歩兵戦闘車およそ1300台、戦車およそ400両、ミサイル発射システムなどおよそ700基を失ったということです。

そして、それぞれの損害の割合は最大で全体の50%に上るとしています。

ロシア軍が東部で攻勢を強める中、ウクライナ側は、兵器の火力などが圧倒的に劣っているとして、欧米側にさらなる軍事支援を訴えています。