【解説】“和平”か“正義”か ウクライナめぐり揺らぐ欧州

「ウクライナの戦争をどう終わらせるかをめぐって、ヨーロッパが分断するおそれがある」。
そう警鐘を鳴らしたのが、15日発表されたヨーロッパのシンクタンク「欧州外交評議会」の報告書です。

報告書の詳しい内容とヨーロッパ各国の状況について、油井秀樹キャスターの解説です。

(動画は3分4秒です。データ放送ではご覧になれません)

「欧州外交評議会」の報告書は、先月中旬に行った10か国8000人の世論調査をもとに、ウクライナの戦争でヨーロッパの世論が
▽「和平派」35%
▽「正義派」22%
▽「どちらともいえない」20%
▽「その他」23%
と分かれていると指摘しています。

和平派とは

「和平派」というのは「できるだけ早期に戦闘を停止して交渉を始めるべき」と考えている人たちで、戦争終了のためにはウクライナ側が多少の譲歩をするのもやむをえないとする人たちです。

正義派とは

これに対して「正義派」というのは、ロシアに侵略の代償を払わせ、ウクライナは国土を取り戻すべきと考えている人たちで、戦闘の長期化や死傷者の増加もやむをえないとする人たちです。

国別にみると

国別にみると、
イタリアやドイツ、ルーマニア、それにフランスでは「和平派」が圧倒的に多いことがわかります。

これに対してポーランドでは「和平派」が少なく「正義派」が多いことがわかります。

今回の世論調査の対象には入っていませんが、バルト3国もポーランドと同様「正義派」が多いとみられ、報告書はヨーロッパの分断が顕著になりつつあると警告しているのです。

フランス ドイツ イタリア 3首脳がキーウに

16日、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相、イタリアのドラギ首相が、首都キーウにそろって列車で入りました。

ヨーロッパの中でも「和平派」と称される国々です。

3首脳は外交交渉を優先する姿勢で知られていますが、それは自国の世論を反映した姿勢ともいえます。

特に「和平派」の多いイタリアでは、具体的に4つの段階を踏んだ和平案を提案しています。
そのため、今回の訪問をめぐってはウクライナが求めるEUの加盟に向けた交渉開始を3首脳が認める引き換えにウクライナに和平案を迫るのではないかという臆測も出て、注目が集まったのです。

戦争をどう終わらせるのか 結束は揺らぎかねない

「欧州外交評議会」の世論調査では、戦争の結果ヨーロッパの状況がよくなると答えた人たちは「和平派」「正義派」ともに少なく、悪くなると答えた人たちが半数を超えています。

こうしたことから、ヨーロッパでは戦闘の長期化に反対する人が増えていくとみられています。

戦争をどう終わらせるのか。その問いに答えるのは一義的にはウクライナの人たちです。ただ、ウクライナを支える民主主義の国々は時間とともに結束が揺らぎかねない状況で、どう結論を導くのか問われています。