ロシア 国際経済会議を開催 友好国との協力強化をアピールか

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクで国際経済会議を開いています。欧米の企業が参加を見送る中、中国やアフリカの国々などとの協力強化をアピールし、ロシアは国際社会で孤立しているわけではないと印象づけたいねらいもあるとみられます。

ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれている国際経済フォーラムは16日、ロシアとの経済協力を話し合う中国、トルコ、イランといった国々との個別のセッションが開かれました。

このうちロシアと中国のセッションでは、中国側のパネリストの多くがオンライン参加となる中、ロシア側は、経済団体のトップが出席し、両国の地域間の連携や通貨ルーブルと人民元による決済などの経済協力を巡り意見を交わしました。

一方、ウクライナ侵攻を受けて世界的な課題となっている食料安全保障やエネルギー価格の高騰などを議論するセッションも行われました。

食料安全保障をテーマにしたセッションでは、ブラジルや、AU=アフリカ連合の議長国セネガルの大使のほか、インドの閣僚が登壇し、ウクライナ情勢が与えている問題の深刻さを訴えました。

これに対してロシアのアブラムチェンコ副首相は「制裁によって、必要なところに食料を届けられなかったり、これまでの2倍のコストがかかったりしている」と述べ、責任はあくまでロシアへの制裁を強める欧米にあると主張しました。

会議では、欧米や日本の企業が参加を見送る中、ロシアは、友好関係にある国々との協力強化をアピールし、国際社会で孤立しているわけではないと印象づけたいねらいもあるとみられます。

17日にはプーチン大統領が演説する予定で、食料安全保障などについて言及するものの、ロシアの対応を正当化するなど、強気の姿勢を貫くものとみられます。

専門家 “欧米けん制し中国などとの連携アピールする機会に”

ことしの「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」について、ロシアの企業活動に詳しい経済専門家、ドミトリー・ポタペンコさんはNHKのインタビューに対し「私が理解するかぎり、EU=ヨーロッパ連合で知られている指導者はイベントなどに出席しないだろう。フォーラムは軽量級のものとなる。一方、ロシアとしては、自分たちがどれだけ優れ、制裁などに対応できていて、安定しているのかを示す必要がある」と指摘しました。

そして、プーチン大統領が17日に予定している演説について「『今の世界的な経済の危機は欧米側が引き起こしたものであり、ロシアが成長しているアジアと関係を築いていることにヨーロッパ諸国はとても後悔するだろう』などと話すのではないか。そして、ロシアにはすばらしい未来が待っているとアピールするだろう」と述べ、欧米をけん制し、中国やインドなどアジアの友好国との連携をアピールする機会になると分析しました。

また「各国の外交使節団やビジネス関係者はプーチン大統領の演説に注目するより、むしろ情報収集のために来るのだろう。制裁をどう回避するのか中国やインド、イラン代表団の行動を観察するだろう」と述べ、出席者は、ロシアとの経済関係を維持している国の動向を注視するという見方を示しました。

さらに、ポタペンコ氏は、欧米などの制裁が与えるロシア国内への影響について「品ぞろえが減り、モノの価格が上昇するなど、サプライチェーンが劣化している」と指摘する一方で「制裁は長期的に影響を与えるが戦争を止めることはできない」と述べ、経済制裁がプーチン政権の軍事侵攻を阻む手段にはならないと悲観的な見方を示しました。