水泳授業 3年ぶりの本格再開 水着も泳ぐ場所も変化が…

季節はまもなく夏。水泳の授業も本格的に始まる時期です。
ことしは、新型コロナの影響で中止となっていた水泳が3年ぶりに再開されるという学校も多くあります。
現場では、様々な影響や変化がみられるようです。

スクール水着に注文が殺到

3年ぶりの水泳の授業の再開で、大忙しとなっているのが水着メーカーです。

奈良県御所市にある昭和13年創業の「南和繊維工業」では、全国の小中学校向けに、これまで年間およそ10万着の水着を製造・販売してきました。

新型コロナの感染拡大で水泳の授業が中止され、このところは注文が激減していました。

しかし、この夏、3年ぶりに全国的に再開される動きが広がっていることを受けて水着の注文が全国から相次ぎ、対応に追われています。
このメーカーによりますと、
▽入学以来初めて水泳の授業に臨む小学校低学年や中学生からの注文が増えているほか、
▽水着のサイズが小さくなってしまった小学校高学年の買い替えも重なり、ことしは例年の2.5倍ほどの注文が入っているということです。

ことしの注文の増加を見込んで生地の仕入れを増やし、予定を前倒しして生産を続けてきましたが、今月に入っても注文が殺到し、一部の学校には納品が間に合っていないということです。
(営業部・西河剛史さん)
「コロナ禍の反動が大きく、想定を超える注文が入っています。1日も早く商品を納められるよう生産に努めていきたい」

水着にも変化の波

80年以上の歴史を持つこのメーカーはスクール水着の変化も目の当たりにしてきたといいます。
スクール水着といえば、かつては男子が上半身裸のトランクス型、女子はワンピース型などが定番でしたが、最近は、これまでとは異なるタイプの水着が人気を集めています。

その1つが、男女とも上下2枚に分かれた「セパレート型」と呼ばれる水着です。
上は半袖や長袖、下はハーフパンツやハーフパンツにスカートが付いたスタイルです。

肌の露出が従来のタイプよりも少なく、紫外線をカットする素材でできていて、夏の強い日ざしから肌を守ることができるということです。

また、上下の組み合わせを変えれば性別を問わず着られることも人気の理由だということです。

このメーカーによりますと、今では自社で生産している商品のおよそ7割が、こうした新しいタイプの水着だということです。

水着のデザインは、どう変わってきたのか、その変遷をまとめたのがこちら。
最近、登場したのが男女が同じデザインの「ジェンダーレス水着」です。
東京・墨田区の水泳用品メーカー「フットマーク」がことしから販売を始めました。
この「ジェンダーレス水着」は、上下が分かれたデザインで、上は長袖、下はハーフパンツと露出を少なくし、体の成長による違いがあらわれる胸や腰、それにお尻などの部分はゆったりしたシルエットになるよう工夫しています。

メーカーによりますと、最近は学校現場で制服をスカートだけでなくパンツも選べるようにするなど性的マイノリティーの子どもにも配慮した取り組みが進み、水着も性別による選びにくさを減らし、選択肢を増やそうと開発したということで、今年度は3つの学校で導入される予定です。

メーカーの担当者は「性的マイノリティーの子どもだけでなく、体形や体毛、アトピーなどさまざまな事情で肌の露出を控えたいという声があります。こうした水着を着ることで水着に対する不安を払拭(ふっしょく)し、水泳授業に前向きに取り組んでもらえたら」と話していました。

3年ぶりの水泳の感染対策は

そして、各地で3年ぶりに再開されている水泳の授業。
現場では、感染対策に気を配っています。

神戸市灘区にある成徳小学校では3年ぶりに16日から水泳の授業が行われ、このうち、6時間目には小学5年生の半数にあたるおよそ70人の児童が参加しました。
子どもたちはマスクを外して声を出さないよう気をつけながら、4つのグループに分かれてプールの中に入り、早速浮いたり短い距離を泳いだりして、水の感覚を確かめていました。

感染対策として、
▼着替えは教室だけでなく、家庭科室なども利用して分散して行うほか、
▼プールサイドには1メートル間隔で印を付け、児童どうしが距離を取るようにしていました。

男子児童の1人は「声を出せないのは残念ですが、長い間、水泳の授業がなかったのでとても楽しかったです」と話していました。

赤木裕之校長は「感染対策はもちろんですが、久しぶりの水泳なので水に慣れてもらうことに重点を置いて取り組んでいます。楽しそうな顔を見ることができてよかったです」と話していました。

プールはスポーツクラブを活用

水泳の授業が再開するのに合わせて、新しい取り組みを始める学校も出てきています。

民間のプールの活用です。

大阪・枚方市では今年度から小学校の水泳授業で民間のプールとスタッフを活用した取り組みを始めました。
この日、枚方市のスポーツクラブにやってきたのは、枚方市立殿山第二小学校の5年生、60人。学校は徒歩3分の場所にあります。

5年生にとって2年生以来の水泳授業。しばらく泳いでいない子どももいます。

そのため、子どもの泳力ごとにグループに分け、それぞれにスイミングスクールのスタッフを配置し、効率的に指導できるよう工夫しています。

3年ぶりの授業に子どもたちは…

「とても楽しい。スタッフは優しく教えてくれる」
「室内だから雨でもできるし、中止にもならない」

市が水泳の授業で民間の施設を活用する主なねらいは教員の負担軽減や経費などの削減です。

枚方市教育委員会によりますと、民間のプールを利用することで、プールの維持管理などの費用を1校あたり年間200万円ほど削減できるほか、教員にとっても清掃などの手間が減ります。

また、雨や熱中症など天候を気にせず水泳ができるため、学習の計画をたてやすいのもメリットの1つです。
(山本容子校長)
「コロナ禍だからこそ運動に親しめないというところもありました。水泳は全身運動ですので、体力向上には大きな成果があるんじゃないかなと期待しています。今回は、新しい取り組みということで、課題もあるかもしれませんが、クラブの方とも相談させていただきながら、よりよいものを作り上げていけたらと考えています」

3年ぶりの水泳 どこに注意が必要?

3年ぶりの水泳の授業。

どんな指導が求められているのでしょうか?
水泳教育に詳しい、鳴門教育大学の松井敦典教授は「2年間できなかったことを前提とした指導を、各学校で工夫しなければならない。できない課題をいきなり与えると、できる子はやりますが、できない子はどんどん嫌いになっていきますので、基礎的な動きができるかを確かめながら、徐々に学年で取り扱う内容に持って行くことが必要です」と指摘します。

そのうえで「水泳の授業は、水に親しむ態度を養い、自己保全能力の獲得、自分を安全に保つ、水辺で溺れない、そのための能力を獲得するのが大きな目的です。水に入ることに平気になる、そのうえで水の中での作法を知ることが大事ではないでしょうか。コロナ禍でプールに入る時間を確保できなかったのなら、プール以外の場所で、水の危険性や泳ぐための理論などを学ぶといった、水泳学習を補う工夫が必要だと思います」と話していました。

また、民間に委託する動きが広がりつつあることについては、松井教授は「学校がプールを管理する手間暇がなくなるし、水道代もいらなくなるなどメリットはあります。しかし、泳ぐ距離や速さを鍛える民間のスイミングスクールと学校は役割が異なるので、委託するにしても丸投げするのではなく、体育としての学習内容は学校主体で行ってほしい」と指摘していました。

(大阪放送局 取材班)