節電の夏 相次ぐ電気代値上げに各地で悲鳴

節電の夏 相次ぐ電気代値上げに各地で悲鳴
電気代の請求を見て、こんなに使ったっけ?とびっくりしている人も多いのではないでしょうか。
政府は節電でポイントを付与する新制度を導入を発表しましたが…
地元で長年愛されている遊園地も、頭を抱えています。

目を疑った“年間1700万円増”

「やばい 大ピンチです」

新潟県にある遊園地「サントピアワールド」。
6月14日に公式ツイッターに投稿された書類の画像には、電気料金が年間1820万円から3580万円に、実に2倍近い値上げになると書かれています。
サントピアワールド 高橋修 園長
「値上げの通知が届いた時は、正直、ひとけた違ってるんじゃないのと思うくらい驚きました。原油が上がったりしていたので1割か2割ちょっとは上がるだろうと想像はしていましたが、えっ!という金額で。経営もぎりぎりのところでやってきているので、この値上げは本当に厳しいです」
この遊園地が契約しているのは大手電力会社ではなく、電力の小売りを行う「新電力」。

4年前に大手電力会社から切り替え、年間で数百万円安くおさえられるようになっていたそうです。それが今回の値上げ…。

もっと安く契約できる電力会社がないか探しましたが7月の契約更新を前にすぐには見つからず、高い電気料金をのむしかないといいます。

どうする!?節電が大きな課題に

エアコンを節電効果の高い最新のものにかえたいところですが、すべてやると1億円以上かかるため、園内でお客さんが使うエリアの一部だけを買い替えることに。

従業員が使うスペースはこまめに消灯。
メリーゴーラウンドの電球も減らすことにしました。
それでも値上がり分をカバーすることはできないため、7月から一部のチケットを少しだけ値上げすることを決断しました。
サントピアワールド 高橋修 園長
「お客様への負担は、極力、お願いしたくないという思いはあり心苦しいのですが、ご理解いただけるとありがたいです。この遊園地はいろいろな方にとっての思い出の場所になっていて、これからもちょっと遊びに来たくなる遊園地として運営していけるよう工夫していきたいと思います」

そもそもどのくらい高くなった?

大手電力10社の電気料金は、火力発電に使う燃料価格の高騰などを背景に、この1年で約10%~30%値上がりしています。
各社が示している「使用量が平均的な家庭」では、7月分の金額が2000円近く高くなるところも。
ことし7月分の電気料金 ※()内は前年同月比
北海道電力 8763円(+1212円)
東北電力  8565円(+1322円)
東京電力  8871円(+1898円)
中部電力  8516円(+1870円)
北陸電力  7211円(+ 526円)
関西電力  7497円(+ 752円)
中国電力  8029円(+1103円)
四国電力  7915円(+ 906円)
九州電力  7271円(+ 782円)
沖縄電力  8847円(+1379円)

また、近年は「新電力」に契約を切り替える家庭や企業も増えています。

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会によると、国内のシェアは全体のおよそ2割(契約口数ベース)に上り、ことし6月時点で700社以上ありますが、全社の電気料金の動向がわかるデータはないそうです。

家庭でも高まる節電意識 ちょっとした工夫の結果は…

静岡県で幼い子どもと夫と3人暮らしをしているりょうさん(仮名)。

3月の電気代が1万7000円を超えました。
ことし電力会社を変えたため単純に比較はできませんが、今の時期に1万円を超えたことは過去になかったといいます。
りょうさん
「請求書が届いたときにこんなに高いのかと驚きました。産休中でずっと家にいるので家計のためにもできることをやろうと決めました」
これを機に家の中の節電に取り組むことに。

まず目を付けたのがトイレです。便座やウォシュレットの温度はこれまで調整したことがありませんでしたが、いちばん低い目盛りまで下げました。
子どもが小さいこともあって毎日のように使っていた電子レンジ。レトルト食品は湯せんで温めるなどして使用頻度を半分ほどに減らしました。

このほか待機電力を減らすため炊飯器などのコンセントを抜く。
室内の照明は明るさを落としてこまめに消す。
エアコンのフィルターや冷蔵庫の排気口の掃除など思いつくかぎりの節電対策をやったそうです。

すると4月は、暖房などを使わなくなったこともあって電気の使用量が前の月の3分の1ほどに激減。
電気代も約6000円と、去年のいまごろと同じ水準にまでおさえられたといいます。
りょうさん
「こんなに下がるんだと驚きました。まだまだ節電できることはあるんだなと気付くきっかけになりました。これから暑くなってエアコンを使うこともあると思うので、無理のない範囲で節電対策を続けようと思います」

りょうさんの節電何がよかった?

家庭向けの節電についてアドバイスをしている専門家によると、ちょっとした工夫の積み重ねが大きな節電効果を生むケースは珍しくないそうです。
京都府地球温暖化防止活動推進センター 川手光春 事務局長
「暖かくなってくると一般的に電気代は減りますが、りょうさんの場合、大きく減っていて、努力をされたんだろうと感じます。以前の電気の使用量や家電の種類によっても変わりますが、照明をこまめに消したのが大きかったかもしれません。

一軒家の場合、蛍光灯なら月に多くて数千円、LEDでもその半分程度の節約ができることもあります。また電子レンジの使用頻度を減らしたり、炊飯器の保温を切るといった対策も効果はあります」

節電ワザはほかにも…

SNSには家庭でできる工夫がたくさん投稿されています。
「玄関にカーテンの仕切りを入れて冷たい空気を逃がさないようにする」
「部屋の照明の輝度を最低にして代わりに小さなデスクライトを追加する」
中には、ベランダでソーラー発電をして電力の一部をまかなっているという人もいました。

また国のサイトでも節電に関する情報が紹介されています。
環境省の「うちエコ診断WEBサービス」では、いくつかの質問に答えると、どこに節電のポイントがあるのか教えてくれます。電気の使用量が平均と比べて多いかどうかも分かるそうです。
資源エネルギー庁のサイトには家電製品ごとの節電の工夫などが紹介されています。

ただし、熱中症には気をつけて!

専門家は節電も大事だとしつつ、これからの季節、熱中症の危険がある時はエアコンなどを適切に使って命を守ることを優先してほしいと呼びかけています。
杏林大学 高度救命救急センター長 山口芳裕 教授
「急激な気温や湿度の変化に体が慣れていない時期や、体力や抵抗力が失われる残暑の時期は特に熱中症になりやすいです。政府が節電のために呼びかけている冷房の設定温度は28度で、これだと涼しいとは感じられないかもしれませんが、十分に熱中症を防ぐ効果があります。電気料金が値上がりして大変な思いをしている人もいると思いますが、できればクーラーなどを適切に使ってもらいたいです」
(ネットワーク報道部記者 金澤志江・野田麻里子・松本裕樹 SNSリサーチ 三輪衣見子)