【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(17日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる17日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

プーチン大統領 “欧米側のロシアへの経済制裁は失敗”

ロシアのプーチン大統領は、第2の都市、サンクトペテルブルクで開かれている「国際経済フォーラム」で演説し「今回のフォーラムは、国際社会にとって困難な時期に開催される。貿易や製造、物流で新たな課題に直面している。ビジネスの評判や通貨の信頼が、欧米によって意図的に損なわれている」と述べ、ロシアに対する経済制裁を強化する欧米側を批判しました。

そのうえで「一極集中の世界秩序の時代は終わりを告げた」と述べ、アメリカなどに対抗する姿勢を鮮明にしました。

また、プーチン大統領は「欧米側はロシアの経済を破壊しようとしたが、明らかに失敗した。ことしの春先にはロシア経済の先行きに対して悲観的な見通しが予想されたが現実のものとなっていない」と述べ、欧米側の制裁は失敗しているとけん制し、ロシアの経済対策が機能していると強調しました。

“ウクライナをEU「加盟候補国」の立場に” 欧州委が勧告

EU=ヨーロッパ連合への加盟を申請したウクライナについて、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は交渉開始の前提となる「加盟候補国」の立場を認めるよう、加盟国に勧告しました。

EUは来週開かれる首脳会議で協議する見通しですが、ウクライナが「加盟候補国」として認められるにはすべての加盟国の同意が必要で、各国がどのような姿勢を示すかが焦点です。

これを受けてゼレンスキー大統領は17日、ツイッターにコメントを投稿し「ヨーロッパ委員会の判断を称賛する。これはEU加盟に向けた道のりの第一歩であり、われわれの勝利を確実に近づけるものだ。歴史的な決定をしたフォンデアライエン委員長や委員会のメンバーに感謝する。来週の首脳会議で前向きな結果が出ることを期待している」と歓迎しました。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は17日、記者団に「EUでは、軍事や安全保障など防衛強化についての議論が活発に行われている。今回は軍事とは別の側面だが、われわれはこうした動きをもちろん非常に注意深く見ていく」と述べ、強い警戒感を示しました。

プーチン大統領 「国際経済フォーラム」での演説 1時間遅れに

ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれている「国際経済フォーラム」で17日、プーチン大統領が演説する予定の全体会合について、大統領府のペスコフ報道官は、当初の予定より1時間遅らせ、日本時間の午後9時から開始すると記者団に明らかにしました。

理由について、ペスコフ報道官は、会場のシステムに大量のデータを送りつけてダウンさせる「DDoS攻撃」といわれるサイバー攻撃があったためだと説明しています。

ルハンシク州知事「砲撃と戦闘で工場から出ること不可能」

東部ルハンシク州のハイダイ知事は17日、ウクライナ側が拠点とする「アゾト化学工場」について、子ども38人を含む568人が工場内のシェルターに残っていると、SNSへの投稿で明らかにしました。

そのうえでハイダイ知事は「絶え間ない砲撃と戦闘により、工場から出ることは今は不可能かつ物理的に危険だ。工場からの脱出は完全な停戦があって初めて可能だ」と書き込みました。

キーウの医療機関などを視察した医師ら 支援の必要性訴える

今月、ウクライナの首都キーウの医療機関などを視察した日本のNPO法人の医師などが都内で会見し、避難した人たちがもとの地域に戻り始める一方、医薬品などの調達が困難で、通常の医療の提供は難しい状態にあるとして支援の必要性を訴えました。

都内で会見を開いたのは今月、ウクライナの首都キーウの医療機関などを視察した医師の稲葉基高さんなどNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」のスタッフです。

この中で稲葉さんはキーウなどでは軍事侵攻を受けて避難した人たちがもとの地域に戻り始めているとしたうえで「輸入に頼っていた医薬品や手術器具の調達が困難でがんや心筋梗塞などに対応した通常の医療を提供することは難しい状態にある」と述べ、支援の必要性を訴えました。

また現地の医療機関の中には、攻撃を受けて穴が空いたまま建物を使い続けているところもあり、施設の改修も喫緊の課題となっていると指摘しました。

JICAとウクライナ政府 契約書に署名 650億円の追加借款で

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナを支援するため、日本は650億円の借款を追加で行うことになり、17日、JICA=国際協力機構とウクライナ政府が契約書に署名しました。

日本政府は先月、復興や経済対策の財源などとしてウクライナ政府に130億円の借款を行っていて、今回、650億円の借款を追加で実施します。

その窓口となるJICAは、17日、山田順一 副理事長とウクライナのマルチェンコ財務相がそれぞれ契約書に署名したと発表しました。

これを受けて、今月中にも650億円がウクライナ側に送金される予定だということです。

マルチェンコ財務相は、「日本からの借款は、国民の生活に必要不可欠な公共サービスを提供するため活用している。財政支援が増額されたことに深く感謝している」とコメントしています。

県内避難のウクライナ人へ「ビート」を 富山 高岡

ロシアによる軍事侵攻から逃れ富山県内に避難しているウクライナ人に届けようと、ウクライナ料理の食材として使われる西洋野菜、「ビート」の収穫作業が、17日、高岡市で行われました。

「ビート」はビーツとも呼ばれる赤色の根菜で、ウクライナでは伝統料理のボルシチの材料として使われています。

富山県高岡市の農家、茅原享さんの畑では、15年前から「ビート」を栽培しています。

春先に種をまいた「ビート」がようやく収穫の時期を迎え、17日は午前9時から茅原さんがソフトボールほどの大きさにまで育った「ビート」を1本1本、引き抜いていました。

富山県内には現在、避難してきたウクライナ人1人が暮らしていて、17日に収穫したビートは県を通じて本人に届けられることになっています。

茅原さんは「避難している人は母国ウクライナから遠く離れた日本で寂しい思いをしていると思います。自分が作ったもので支援できればうれしいです」と話していました。

米大統領補佐官 “中国はロシアとの関係に非常に慎重な姿勢”

アメリカのバイデン政権で安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は16日、シンクタンクのイベントでウクライナ情勢や台湾などについて講演しました。

この中で、ウクライナ情勢をめぐって、中国が、友好関係にあるロシアへの軍事支援や制裁逃れにつながるような支援を行っているとは確認できないとしたうえで「中国はこの問題について非常に慎重な姿勢で臨んでいる」と指摘しました。

そして、中国が国連の非難決議などでロシア寄りの姿勢を見せていると指摘しつつも「一線を越えるような措置はとっていない」と述べ、中国が踏み込んだ支援は行っていないとの見方を示しました。

ゼレンスキー大統領「きょうは歴史的な日だ」

ゼレンスキー大統領は16日に公開した動画の中で、フランスやドイツ、イタリアなどの首脳が訪問したことについて「きょうは歴史的な日だ。ウクライナは、ヨーロッパの4つの強力な国々から一度に支持されたことを実感した」として、EU=ヨーロッパ連合への加盟について訪れた首脳全員から支持を得たと強調しました。

また、各国首脳が首都キーウに到着した際に空襲警報が鳴ったことを明らかにし「ロシアはサイレンを誰もが聞こえるようにし緊迫した雰囲気を作ったが、誰も怖がることはなく、われわれをウクライナやヨーロッパのすべての人の利益のために交渉しようと奮い立たせただけだ」と述べました。

そして「われわれはウクライナの完全な安全と領土の保全が保証されるまで戦い続けるだろう」と述べ、結束してロシアに対じする考えを強調しました。

“ロシア情報機関員 ICCでなりすましで働こうとした”オランダ

オランダ政府は、ロシアの情報機関員が別人になりすまして入国し、ウクライナで行われた疑いのある戦争犯罪などについて捜査しているICC=国際刑事裁判所でインターンとして働こうとしていたと明らかにしました。

オランダ政府の16日の発表によりますと、ことし4月、33歳のブラジル人になりすまして渡航してきた男が実際には、36歳のロシアの情報機関員であることが明らかになり、入国を拒否されてブラジルに送還されたということです。

情報機関員はオランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所でインターンとして働こうとしていたとしています。

ICCはウクライナで行われた疑いのある戦争犯罪などについて捜査を進めていて、オランダ政府は、この情報機関員が実際にICCで働いていれば、ロシアが必要とする情報を集めただけでなく捜査などにも影響を及ぼした可能性があると指摘しています。

ロシア国防省 “ウクライナ軍の指揮所や兵器を破壊”

ウクライナへの侵攻を続けるロシアの国防省は、16日も各地をミサイルで攻撃し、東部ハルキウ州でウクライナ軍の指揮所や兵器を破壊したほか、スホイ25戦闘機を撃墜したなどと発表しました。東部ドネツク州でも地上部隊や無人機などが攻撃し、ウクライナ軍の兵士280人以上を殺害し、弾薬庫や戦車などを破壊したとしています。

また、ロシア軍は東部ルハンシク州の完全掌握に向け、ウクライナ側の拠点となっているセベロドネツクを包囲しようと攻撃を続けていて、アメリカ軍の制服組トップのミリー統合参謀本部議長は15日、セベロドネツクの4分の3がロシア軍に掌握されているという見方を示しました。

イギリス国防省 “東部で戦うロシア軍 深刻な兵員不足に”

戦況を分析するイギリス国防省は16日、ロシア軍がセベロドネツクと外部とを結ぶ主要な橋をすべて破壊した可能性が高く、残されたウクライナ軍の部隊や市民は非常に困難な状況が続いていると指摘しました。

一方でイギリス国防省は、東部で戦うロシア軍は深刻な兵員不足に陥っていて、通常であれば600人から800人の兵士で構成される部隊が、30人程度で運用されるなど、部隊編成に課題を抱え、これによってロシア軍の進軍が鈍っているとも分析しています。

仏独伊3か国首脳とゼレンスキー大統領会談 結束姿勢を強調

フランスとドイツ、イタリアなどの首脳が16日、ウクライナをそろって訪問しました。ゼレンスキー大統領との会談後の会見で各国首脳は、軍事面での支援の強化などで結束していく姿勢を強調し、ロシアとの関係をめぐるウクライナ側の懸念の払拭(ふっしょく)に努めるねらいもあったとみられます。

これに対してゼレンスキー大統領は「ロシアによる侵略は結束したヨーロッパ全体に対する侵略であり、われわれが重んじる価値に対する侵略だ」と述べました。そのうえで「より強力な兵器が供与されればもっと早くウクライナの市民や領土を解放できる。決断の遅れや先延ばしは、ロシア軍がウクライナ人を殺し、われわれの街を破壊する機会を与えることになる」と述べて支援をためらわないよう促し、会談は、EU主要3か国に強い決意を迫るものになりました。

ロシア 国際経済会議を開催 友好関係ある国々との協力アピールか

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクで国際経済会議を開いています。会議では、欧米や日本の企業が参加を見送る中、ロシアは、友好関係にある国々との協力強化をアピールし、国際社会で孤立しているわけではないと印象づけたいねらいもあるとみられます。

17日にはプーチン大統領が演説する予定で、食料安全保障などについて言及するものの、ロシアの対応を正当化するなど、強気の姿勢を貫くものと見られます。

NATO国防相会議 ヨーロッパ東部の防衛態勢 大幅強化方針を確認

NATO=北大西洋条約機構は、今月末の首脳会議に向けて国防相による会議を開き、ヨーロッパ東部の防衛態勢を大幅に強化する方針を確認しました。

NATOは16日までの2日間、ベルギー・ブリュッセルの本部で国防相会議を開きました。
会議では、ロシアに近く安全保障上の脅威をより強く感じているヨーロッパ東部の国々の防衛態勢について協議し、NATOがバルト3国やポーランド、ルーマニアなど8か国に配置している多国籍部隊を規模と即応性の両面で強化する方針などを確認したということです。

“難民に支援行き届かない懸念” 国連 難民高等弁務官

国連のグランディ難民高等弁務官がNHKのインタビューに応じ、ウクライナ情勢を受けて難民や国内避難民が急増する中、シリアやアフガニスタンなどほかの地域の難民への支援が行き届かなくなることへの懸念を示しました。

グランディ難民高等弁務官は、国連が定めた今月20日の「世界難民の日」を前にNHKのインタビューに応じました。

この中でロシアによる軍事侵攻を受けたウクライナの難民や国内避難民への支援が集まっていることを歓迎したうえで「これらの支援がほかの地域への支援から振り向けられてしまった可能性もある。すでに存在するほかの地域の問題は放置されがちだ」と述べ、シリアやアフガニスタンなどの難民や避難民への支援が行き届かなくなることへの懸念を示しました。