法隆寺がクラウドファンディング “コロナ禍で拝観料半減”

奈良県斑鳩町にある世界遺産の法隆寺は、新型コロナの影響で参拝者が大幅に減少し、境内の整備費用などを十分に捻出することが難しくなったことから、クラウドファンディングで寄付を募ることになりました。

これは、15日に法隆寺の古谷正覚管長などが記者会見を開いて発表しました。

世界遺産の法隆寺には、令和元年度はおよそ65万人が訪れていましたが、新型コロナの感染拡大によって、一昨年度は20万人、昨年度は35万人ほどに落ち込み、主な収入源である拝観料が半分ほどに減少したということです。

寺はこの2年間、人件費を抑えたり、境内の樹木を手入れする回数を減らしたり、国宝や重要文化財などに指定されていない建造物や所蔵品の修復をいったん中止したりして支出を切り詰めてきました。

新型コロナの感染が落ち着き、今後参拝者の増加が見込めるようになりましたが、境内の整備費用などを十分に捻出することが難しい状況が続いていることから、寺は今回、クラウドファンディングで寄付を募ることを決めました。

募集期間は、来月29日までで目標額は2000万円、寄付の額に応じた返礼品も用意しているということです。

法隆寺の古谷管長は「金銭的な面で困っており、クラウドファンディングで浄財をいただき、境内をきれいにしていきたい。法隆寺のためにご寄付を賜りたいと願っております」と話しています。

「世界遺産を皆さんで守っていただきたい」

法隆寺のトップの管長が、みずから会見を開き、窮状を訴えました。

法隆寺の寺務所で行われた会見には、古谷正覚管長とナンバー2の大野正法執事長がそろって出席しました。

会見で古谷管長は「コロナ禍で緊急事態宣言が出されていた時期に、一時、拝観を止めるなどしたため参拝者が大幅に減っている状況が2年間続いている。この2年間、私たちも境内の植木のせんていを先延ばしするなど必死に経費節減の努力をしてきた」と訴えました。

そのうえで「これから参拝者を再び迎えるに当たり、境内があまりに汚いのも失礼だと思い、境内の整備に取り組むためにクラウドファンディングに挑戦したい」と述べました。

また、大野執事長は「拝観料の値上げも考えたが、参拝者に申し訳ないという思いがあり、クラウドファンディングという方法を選んだ。世界遺産を皆さんで守っていくと思っていただけるならば非常にうれしい」と取り組みの趣旨を説明しました。

維持管理には膨大な費用が必要

クラウドファンディングの実施を決めた背景にあるのは、世界遺産 法隆寺の膨大な維持管理の費用です。

寺によりますと、法隆寺の境内の広さは甲子園球場およそ4.5個分の17万8000平方メートルにおよびます。

国宝や国の重要文化財を含むおよそ150棟の建造物があり、建物にはおよそ6万5000点の美術工芸品が保管されています。

国宝や重要文化財の修復にかかる費用には、国からの補助がありますが、広い境内にある設備の修理や樹木の手入れ、それに国宝や重要文化財などに指定されていない文化財の修復費用を含む維持管理費は年間およそ3400万円に及び、これらの多くは拝観料で賄ってきたということです。

新型コロナの影響で参拝者が激減してからは、樹木の手入れや草刈りを先延ばしするなど境内の管理費を35%削減しました。

さらに指定を受けていない建造物や所蔵品の修復をいったんすべて中止することで、全体の維持管理にかかる費用をおよそ半分にまで節減してきたということです。

しかし、今の状況が続けば、世界遺産の法隆寺を十分に守っていくことができなくなるおそれがあるとして、クラウドファンディングで寄付を募ることを決めたということです。