WTO閣僚会議 1日延長 食料不足に一致した対応方針へ詰めの協議

WTO=世界貿易機関の閣僚会議は最終盤を迎えました。

15日が最終日でしたが会期を1日延長し、16日まで協議を続けると発表しました。

ロシアによるウクライナ侵攻で起きている食料不足への対応などで一致した方針をとりまとめ、閣僚宣言に盛り込もうと詰めの協議が行われています。

スイスのジュネーブで開かれているWTOの閣僚会議は、15日が最終日でしたが、さきほど、会期を1日延長し、16日まで協議を続けると発表しました。

閣僚宣言の合意に向けてさらに時間が必要なためと説明しています。

このうち、ロシアの軍事侵攻によって起きている食料不足など、食料安全保障の分野では不必要な食料輸出の制限をしないというWTO協定上のルールを各国が順守する方向で議論が進んできましたが、関係者によりますとインドなどが異なる主張をしていて調整が続いています。

また、新型コロナウイルスのワクチンを含む医療品や医療機器を世界各国が公正に調達できるようにするルール作りでも協議が続いています。

一方、貿易紛争処理の最終審にあたる「上級委員会」が事実上、機能停止に陥っている問題についても立て直しに向けて議論が行われました。

前回の2017年の会議では、先進国と新興国の間で意見の隔たりが大きく、全会一致での合意には至らず、閣僚宣言を出さずに閉会しています。

新型コロナの世界的な感染拡大にロシアの軍事侵攻で世界経済がゆさぶられるなか、自由貿易を理念としてかかげるWTOが一致した方針を打ち出すことができるか、交渉は山場を迎えています。

主な議題とこれまでの交渉の経緯

今回の閣僚会議での主な議題は、
▽食料不足への対応
▽新型コロナへの対応
▽漁業補助金
▽貿易紛争処理機能の回復などです。

これまでの交渉の経緯です。

食料不足への対応

ロシアの軍事侵攻によって、大農業国ウクライナからの小麦などの農産物の輸送が滞っているうえ、ロシアも国内への供給を優先し、輸出を制限していることから、世界の食料価格は一段と高騰しています。

今回、不必要な食料輸出の制限をしないというWTO協定上のルールを各国が順守することなどで、一定程度議論が進展しました。

ただ、インドなどが特例措置を盛り込むよう主張し、協議が続いています。

新型コロナへの対応

新型コロナウイルスのワクチンを含む医療品や、医療機器を世界各国が公正に調達できるようにするルールを作ることです。

先進国の製薬会社が保有するワクチンの特許を、新興国にも使えるよう開放することについて、各国の意見の隔たりが埋まらず、合意に向けて調整が続いています。

漁業補助金

水産資源の乱獲につながる各国政府の漁業補助金を規制する新たなルールをつくろうという議論です。

日本やEU=ヨーロッパ連合などは、水産資源の乱獲につながる漁業補助金は禁止すべきだとする一方、適切な資源管理を行っている場合の補助金については禁止する必要はないと主張しています。

これに対して発展途上国などからは、資源を管理する能力には、国によって差があり、必要な補助金まで禁止されるのではないかという懸念から、発展途上国向けの優遇措置を求める声も根強く、全会一致での合意に向けた調整が続いています。

貿易紛争処理機能の回復

WTOには、貿易紛争を解決するための機能として、第1審にあたる紛争処理小委員会「パネル」と最終審にあたる「上級委員会」があり、この「上級委員会」が、事実上、機能停止に陥っています。

アメリカの、前のトランプ政権が「上級委員会」の新しい委員の選任に反対し、最終審での貿易紛争の解決ができない状況に陥っています。

アメリカが、これまでの判断を覆し、新しい委員を選任する可能性は低く、今回の閣僚会議での根本的な解決は難しいとみられています。