夢を抱いていた日本で…

「私、寂しいです、奥さんに会いたいです」

ことし4月、大阪・淀川区で、弁当店でアルバイトをしていたベトナム国籍の女性が殺害されました。

女性は、日本語の教師になりたいという夢を抱いて日本に来ていました。

女性の夫が、自宅で初めて苦しい胸の内を語りました。

(大阪放送局 記者 奥村凌)

突然奪われた2人の夢

ベトナム国籍のヴォ・ティ・レ・クインさん(31)。

ことし4月、大阪・淀川区で起きた事件で殺害されました。

現場となった建物の1階に入る弁当店でアルバイトをしていました。

首を絞められて殺害され、現金およそ2万6千円を奪われました。
この事件で逮捕・起訴されたのは、弁当店の上の階に住む59歳の被告。

捜査関係者によりますと、1階の弁当店に1人でいたヴォさんに「店長に言われているから貴重品を持って来て」などと声をかけ、2階にある自分の部屋に誘い出していたということです。

これまでの調べに対し、「生活が苦しくなり、金を奪おうと思ったが、抵抗されたので殺した」と供述しているということです。

自宅で初めて語った胸の内

事件から2か月あまりがたち、亡くなったヴォさんの夫、ファン・タン・ユィさん(35)が、2人で暮らした自宅で初めて、苦しい胸の内を語りました。

8年前に来日し、板金工場で働いています。
夫・ファンさん
「私、寂しいです。毎日毎日、奥さんを思い出すんです。仕事とか、勉強とかできないです。何も考えることができないです。奥さんに会いたいです」

日本での生活 夢にまい進した日々

ヴォさんとは、6年前にベトナムで結婚式を挙げ、その後、2人で、日本での生活を始めました。

花が好きだったというヴォさん。

思い出に残っているのは、2人で、公園にバラや桜の花を見に行ったこと、近所に買い物に行ったこと。

日本語の教師になりたいというヴォさんの夢をかなえるため、2人で、支え合って生きてきました。

アニメや漫画など、幼い頃から日本の文化が好きで、日本語の勉強を続けてきたヴォさん。
日本語の検定試験に向けて、漢字やその読み方をノートにびっしりと書き込んでいました。
日本語の教師になる夢のため、アルバイトや家事の合間を縫って勉強を続けていたといいます。
夫・ファンさん
「奥さんは時間があれば3、4時間くらいは勉強していました。将来は日本の大学院に入って、日本語をもっともっと頑張って日本語の先生になりたいと言っていました」

2人で生きた証し

2人が大切にしていた物を見せてくれました。
弁当店のアルバイトなどでもらった、2人の給与明細です。

節約しながら貯金をしてきた2人。

大学院で日本語を専門的に勉強するという夢に向かって、2人が歩んだ証しだといいます。
夫・ファンさん
「なんで、奥さんは殺されたんですか。やさしい人なのに、なんでなんで」
ファンさんは、その場で泣き崩れました。

妻が好きだった日本でもう少し…

事件後、ヴォさんの遺骨とともにベトナムに帰国したファンさん。

ベトナムの家族からは、裁判が終われば国に帰ってきてほしいと言われています。

しかし、妻が好きだった日本でもう少し頑張ってみようと考えています。
夫・ファンさん
「日本のことは、本当はいま、あんまり好きじゃないけど。日本で私と奥さんで、夢を持ったので。奥さんの夢は、いまはまだかなっていないので、私が奥さんの夢をかなえたいです」