アダルトビデオ出演強要 被害防止法案 あす成立へ

アダルトビデオへの出演を強要される被害を防ぐため、無条件に契約を解除できる期間を設けるなどとした法案が、参議院内閣委員会で全会一致で可決されました。
法案は15日の参議院本会議で可決・成立する見通しです。

成人年齢の引き下げで、新たに成人となった18歳と19歳が、アダルトビデオへの出演を強要される被害が増えるおそれがあるという指摘を受けて、自民党や立憲民主党など6党がまとめた法案は、先月27日に衆議院本会議で可決され、参議院に送られました。

そして、14日の参議院内閣委員会で、趣旨説明と質疑のあと採決が行われ、全会一致で可決されました。

法案では、年齢や性別にかかわらず、契約を交わしてから撮影までに必要な期間を1か月、撮影の終了から公開までに必要な期間を4か月とするとしています。

また、無条件に契約を解除できる期間も設け、法律の施行から2年は、公表から2年間とし、その後は公表から1年間とするとしています。

法案をめぐっては、被害者の支援団体が性行為の撮影を合法化するものだと指摘していることから、委員会では、政府に対し、被害の予防や救済に万全を期すとともに、違法な行為を容認し、合法化するものではないことを周知徹底するよう求める付帯決議も採択されました。

法案は15日の本会議で採決が行われ、可決・成立する見通しです。

松野官房長官「政府も被害発生防止に取り組む」

松野官房長官は午後の記者会見で「アダルトビデオへの出演被害は被害者の心身や私生活に長期間にわたって悪影響を及ぼす重大な人権侵害であり、深く憂慮すべき問題だ。法案が成立した際には、政府においても相談体制の整備強化や被害発生を防止するために必要な教育啓発などにしっかり取り組んでいきたい」と述べました。

自民 宮崎衆議院議員「政府で運用してもらえるよう見守る」

法案の作成に携わった自民党の宮崎政久衆議院議員は、記者団に対し「被害の防止や、被害が発生した場合の救済の手だてをとるために、かなり踏み込んだ形で法制化し、画期的な内容となっている。法案が成立したあとも政府でしっかり運用してもらえるよう見守っていく」と述べました。

立民 山井衆議院議員「画期的な被害者の救済法ができる」

立憲民主党の山井和則衆議院議員は、記者団に対し「法案には大きな誤解があり、実際の性行為を撮影したアダルトビデオを合法化するのではないかというのは全くのデマだ。出演契約を2年間は無条件に解約し、ビデオを回収できるという画期的な被害者の救済法ができると思う。野党が問題提起し、与党も動き出して、円満にまとまったので、今後のモデルケースにしたい」と述べました。

法案の詳しい内容は

【議論のきっかけ】

法案をつくるきっかけになったのは、ことし4月の成人年齢の引き下げです。

18歳と19歳の人が新たに成人となることで、親などの同意を得ずに結んだ契約を原則あとから取り消せる「未成年者取消権」が使えなくなって、アダルトビデオへの出演を強要される被害が増えるおそれがあると指摘されました。

このため、与野党6党で検討が進められ、最終的には、被害が出れば長期間にわたって心身に悪影響が及ぶことから、法律の対象となる年齢や性別は問わないということになりました。

【制作者側の義務】

アダルトビデオの制作にあたっては、制作者側と出演者が書面で契約を交わすことが義務づけられます。

契約書には、
▽アダルトビデオであることを明記し、
▽撮影の日時や場所、
▽作品を公表する期間や方法、
それに、
▽出演料や支払いの時期なども記載する必要があります。

また、
▽映像の公表によって出演者が特定される可能性があることや、
▽行政が設置する相談窓口の連絡先、
▽契約解消のルールの説明も求められます。

【出演者による契約の解除】

そのうえで、出演者がこうした契約を解除できる規定も盛り込まれています。

制作者側には、
▽契約から撮影までには1か月間、
▽撮影終了から公表までには4か月間をあけるよう求めていて、
この間は、無条件で契約を解除できることになっています。

また、作品が公表されたあとでも無条件で契約を解除できることになっています。

具体的な期間は、法律の施行から2年たつまでは公表から「2年間」。
施行から2年がたったあとは、公表から「1年間」となっています。

このほか、制作者側が書面の交付や説明の義務を怠るなど、契約にかしがあった場合は、撮影や公表からの期間にかかわらず、取り消すことができます。

そして、出演者がこの法律に基づいて契約を解除しても、損害賠償の責任は負わないことになっています。

【罰則】

制作者側に対する罰則も盛り込まれています。

契約にあたって、意図的にうその説明をしたり、脅したりした場合、法人に対しては、1億円以下の罰金、個人には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。

また、契約の際に書面を渡さなかったり、うその内容の書面を渡したりした法人には、100万円以下の罰金、個人には6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

【アダルトビデオを合法にする懸念も】

一方で、法律をつくる過程で、被害者を支援する団体などからはこの法律がアダルトビデオの合法化につながりかねないという懸念が出されました。

このため、国会では、違法な行為を容認し、合法化する法律ではないことの周知徹底を政府に求める決議が採択されたほか、法律の内容について、2年以内に見直しを行う規定も盛り込まれました。