普及進むか “水平リサイクル”

普及進むか “水平リサイクル”
6月5日は、環境保全への関心と理解を深めようと国連が定める「世界環境デー」です。環境を守るために私たちが日常の中でできること。その1つに「リサイクル」があります。近年、さまざまな製品がリサイクルされるようになり、環境への関心も高まる中で、今、「水平リサイクル」と呼ばれる方法が注目されています。従来のリサイクルとどう違うのか。また、そのメリットとは。

問題に挑戦!

まずはリサイクルに関する入試問題を見てみましょう。
問題
ペットボトル本体をつくるときに日本では共通のきまりがあります。それは、リサイクルしやすくするためです。どのような決まりでしょうか。

(女子学院中学校 2019年)
正解例としては、「ほかの物質をまぜない」などがあります。

例えば、ペットボトル本体に製品名が印刷してある場合、使われたインクを取り除かなければ、リサイクルしづらくなってしまうんです。

“水平リサイクル” その特徴は?

水平リサイクルとは、どのようなリサイクル法なのでしょうか。
循環経済学が専門で、叡啓大学特任教授の石川雅紀さんに聞きました。
石川さん
「水平リサイクルとは、リサイクルする対象の使い終わった製品を集めて、元の製品に戻すということですね。典型的なものにはペットボトルがあります」
ペットボトルを例に見ていきます。
従来のリサイクルでは、使用済みのペットボトルは、工場で繊維や食品トレーなど、別の製品へと再生されました。
一方、水平リサイクルの場合、使用済みのペットボトルは工場でペットボトルへと再生。つまり、使用済みのペットボトルが、次のペットボトルの原料となるため、持続可能な循環ができ、新たな原料は不要となるのです。
石川さん
「資源はちゃんと大切に使わないといけません。水平リサイクルはすごく有力な手段だと思います」

潜入!リサイクル工場

水平リサイクルは、実際どのように行われているのか。その現場を訪ねました。
回収された使用済みのペットボトルは、細かく粉砕してから、アルカリ性の溶液で洗浄し、汚れなどを取り除きます。
こうしてできた、不純物をほとんど含まない「フレーク」を再形成してペットボトルの原型をつくります。あとは、この原型を膨らませれば、おなじみのペットボトルになるのです。

こちらの工場によりますと、水平リサイクルによって、本来、原料となる石油の使用量が抑えられるほか、排出される二酸化炭素の量もトータルで7割削減できるということです。
リサイクル会社 古澤栄一社長
「ペットボトルに戻せば循環するんですね。石油資源を使わない、二酸化炭素を削減できる。そういう物づくりができるんです」

“水平リサイクル”を広めるには

環境への負荷を減らす水平リサイクル。しかし、PETボトルリサイクル推進協議会によりますと、国内で販売されたペットボトルのうち、再びペットボトルへと水平リサイクルされたのは、2020年度は15.7%にすぎませんでした。
その原因の1つが、「事業系ごみ」として出されるペットボトルだといいます。
石川さん
「家庭では、ペットボトルの中身を洗って、ラベルやキャップを取ってから出していると思いますが、自動販売機の横とか、お店の外にある回収ボックスに入れるときは、飲み残しが入っていたり、ラベルなどが残っていたりするんです。そうすると、リサイクル工場で機械を汚すうえ、コストや手間もかかるんです」
リサイクルは、製造メーカーや工場だけでは行えず、消費者や、回収する自治体などの協力が不可欠だと石川さんは指摘します。
石川さん
「ごみを出すのではなく資源を循環させる。みんなで循環させる。自分はその中でこういう役割をするんだと。『お金を払って買ったからそれで終わり』ではないようにすることが大事だと思います」

使用済み「紙おむつ」の水平リサイクルに挑む!

水平リサイクルは、ペットボトル以外の製品でも徐々に進められています。
中でも注目されているのが、紙おむつの水平リサイクルです。
大手紙おむつメーカーの実験施設では、使用済みの紙おむつを粉砕したあと、洗浄・除菌し、再び紙おむつを作る技術の研究が行われています。
大手紙おむつメーカー 織田大詩さん
「高齢化によって大人用の紙おむつの使用量が増加していて、2030年には一般廃棄物の7%が紙おむつになるというふうに予想されています」
紙おむつの水平リサイクルが実現すれば、資源の節減や、排出される二酸化炭素の削減にもつながるということです。

水平リサイクル、技術的にはまだ難しい製品もあるのかもしれませんが、将来に向け、環境を守っていくためにも、もっと広まってほしいですね。
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