立民 内閣不信任決議案・細田衆院議長への不信任案を提出

立憲民主党は物価高への政府の無策ぶりは看過できないなどとして岸田内閣に対する不信任決議案を提出しました。
また、言動が議長としての資質に欠けるとして、細田衆議院議長に対する不信任案も提出しました。

来週15日に国会の会期末を控え、立憲民主党の泉代表は8日朝「政府は物価高に対して無策で、国民生活を守ることも日本経済を回復させることもできず看過できない」と述べ、岸田内閣に対する不信任決議案を提出する方針を明らかにしました。

そして夕方、西村幹事長らが衆議院の事務総長室を訪れ、内閣不信任案を提出しました。

また、細田衆議院議長が衆議院の小選挙区の「10増10減」に懸念を示すなど民主主義の根幹を揺るがす言動を繰り返し、議長としての資質に欠けるとして細田議長に対する不信任案も合わせて提出しました。

2つの不信任案の提出には、国会で統一会派を組む社民党も加わりました。

いずれも9日の衆議院本会議で採決が行われます。

西村幹事長は「政治は国民の命と暮らしを守るためにあるが、岸田内閣はその責任を全く果たしていない。与野党問わず賛同いただきたい」と述べました。

2つの不信任案への対応をめぐっては、共産党がいずれも賛成する意向を示しています。

一方、日本維新の会は内閣不信任案には反対し、細田議長の不信任案の採決には加わらず退席することにしていて、れいわ新選組は棄権する方向だということです。

また、国民民主党は9日までに対応を決めるとしていて、野党側の足並みはそろっていません。

内閣への不信任決議案「円安と物価高に無為無策」

岸田内閣に対する不信任決議案では「円安と物価高に無為無策で異次元の金融緩和をいまだに見直さないという愚策により円安は収まらず、ロシアによるウクライナ侵略も相まって『異次元の物価高』の局面になりつつある」としています。

また「中身のない『新しい資本主義』は空虚で、いつのまにか賃金所得の向上は諦め、政府が投資信託のコマーシャルのようなことを言い始めている。どれだけの人が乏しい生活費の中から投資にお金を回す余力があるのか、岸田内閣は人の苦しみに『共感する力』はほとんど持ち合わせていない」と批判しています。

そして「プライマリーバランスの財政黒字化や金融資産課税強化など初期の看板政策をことごとく後退させ、その一貫性のない政治姿勢に多くの国民は失望を感じている。よって岸田内閣を信任せず一刻も早く国民に信を問うべきだ」としています。

衆院議長への不信任決議案「最も不適切な人物だ」

細田衆議院議長に対する不信任決議案では「細田氏は民主主義の根幹を揺るがす言動を繰り返しており、最も不適切な人物だ」としています。

そして「立法府を代表する立場にありながら民主主義の根幹である一票の格差是正の意義を全く理解せず、あろうことか10増10減案を『地方いじめ』と歪曲し、区割り変更を『心ない政治』と放言するありさまだ」と批判しています。

また「『議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない。多少増やしてもバチは当たらない』などと発言し、歳費の原資が血税から出ているという事実を理解していない」と指摘しています。

そのうえで「週刊誌が報じた多くの女性に対するセクシャルハラスメントの疑惑について、国会での説明はおろか記者会見すら開いていない。議長たる者が民主主義の根幹を揺るがせている今、国会の権威は地に落ち泥にまみれている」などとしています。

松野官房長官「政策を国民に迅速に届ける」

松野官房長官は午前の記者会見で「政党の動きについてコメントは差し控えたい。政府としては原油価格や食料品価格の高騰による影響に対応するためガソリンや小麦などの国内価格の上昇を抑制するとともに、生活困窮者や低所得者支援を後押しするなど、総合緊急対策に盛り込まれた政策を国民に迅速に届けていく」と述べました。

また、記者団が「内閣不信任案に対しては衆議院の解散も選択肢としてあるが、どう対応するのか」と質問したのに対し「解散は総理大臣の専権事項であり私の立場からは差し控える」と述べました。

自民 茂木幹事長「国民感覚から いかがなものか」

自民党の茂木幹事長は記者団に対し「岸田総理大臣は国民から高い支持を得ている。物価の上昇は見られるがウクライナ情勢が緊迫化して以降、アメリカなどの主要国と比べて日本の物価上昇は抑えられているのが現実だ」と述べました。そのうえで「提出の理由は考えられず国民感覚からいっていかがなものか。選挙目当てで出すのであれば立憲民主党や不信任決議案に賛成する党への国民の目はさらに厳しくなる。きぜんと対応していきたい」と述べました。

自民 高木国対委員長「堂々と受けて否決させてもらう」

自民党の高木国会対策委員長は記者団に対し「岸田政権はしっかりと内閣を運営していて不信任には全く当たらない。与党として粛々と否決することに尽きる。堂々と受けて否決させてもらうというだけだ」と述べました。

また細田衆議院議長に対する不信任決議案も、提出されれば速やかに否決する考えを示しました。

一方、記者団が内閣不信任決議案が提出された場合、衆議院の解散も選択肢としてありうるかと質問したのに対し、高木氏は「岸田総理大臣が適切に判断することになるが選択肢の1つだ」と述べました。

自民 高市政調会長「着実に成果をあげてきている」

自民党の高市政務調査会長は記者会見で「岸田内閣は去年秋の発足以降、国内外とも相当に厳しい多事多難な中で着実に成果をあげてきており、決して不信任には値しない。物価高対策でも私たちは着実に対策を打ってきている」と述べました。

自民 梶山幹事長代行「参院選目当てなら国民の目厳しく」

自民党の梶山幹事長代行は記者会見で「どのような事実関係や根拠に基づいて提出するつもりなのか全く理由がわからない。立憲民主党と共産党が参議院選挙の協力を目当てに不信任決議案を提出するならば、国民の目はより一層厳しくなるのではないか。ほかの野党も同調できるのか疑問であり粛々と否決したい」と述べました。

公明 山口代表「与党が結束して国民生活を守ることが大事」

公明党の山口代表は記者団に対し「政府与党連絡会議での結論は否決するということだ。与党が結束して国民生活を守ることが大事だというのが共通認識であり、与党、公明党としては機敏に国民の声を集約して政策を実現し、効果も上げている。国民に自信を持って伝えていきたい」と述べました。

維新 馬場共同代表「採決では反対する」

日本維新の会の馬場共同代表は記者団に対し「『骨太の方針』が『骨細の方針』に見えるなど岸田内閣の足らざる部分には不満を持っている。しかし不信任に至るレベルには達しておらず、採決では反対する」と述べました。

また、細田衆議院議長に対する不信任決議案については「所属議員からは『10増10減』に関する発言などについて三権の長としてよくないという意見が多数だった。しかし会期末が来れば不信任案を連発するという政治的な意味合いの強い決議には賛否を示さない」と述べ、9日の本会議の採決では退席する意向を示しました。

維新 藤田幹事長「政治的な茶番劇に近い」

日本維新の会の藤田幹事長は記者会見で「いつも国会の会期末に提出されているが、衆議院が解散されたとしても選挙の準備ができていない中で無責任に提出するのは政治的な茶番劇に近い。岸田内閣を全面的に肯定する気は毛頭無いが手段としては慎重に考えるべきだ」と述べました。

また、細田衆議院議長に対する不信任決議案について「『10増10減』を否定する発言などは説明責任を問われるもので強い態度で臨むべきだが、不信任案という手段がいいのか党内の意見を聞いて最終的な態度を決めたい」と述べました。

国民 古川国対委員長“対応はあすの役員会で決める”

国民民主党の古川国会対策委員長は記者会見で、内閣不信任決議案について「ただ提出して姿勢を示すというのは従来の野党像と変わらないという印象しか持たれないのではないか」と述べました。

また、細田衆議院議長に対する不信任案について「細田議長の『10増10減』などに関する発言はかなり前の話であり、それを理由にするのであれば、その時点で提出していないとおかしい」と指摘しました。

そのうえで、それぞれの不信任案への党の対応については9日の役員会で決める方針を明らかにしました。

共産 穀田国対委員長「不信任は当然だ」

共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で、内閣不信任決議案について「岸田政権は敵基地攻撃能力保有論など大軍拡、改憲の大合唱の先頭に立っている点で不信任は当然だ」と述べ、賛成する考えを示しました。

また、細田衆議院議長に対する不信任決議案については「議長の資質に欠けるという点での認識は一致しており賛成する。われわれは国会の品位と権威を著しく損なうセクハラ疑惑がいちばんの問題だと考えている」と述べました。

れ新 高井幹事長「採決はともに棄権する」

れいわ新選組の高井幹事長は記者団に対し「岸田総理はデフレとコロナ不況が重なる中、消費税の減税を考えていないと断言するなど経済を立て直す気がない。また細田議長は『10増10減』に関する発言や週刊誌報道などでの言動が議長として軽すぎる」と指摘しました。

一方で「岸田総理も細田議長も信任には値しないが今の国会での野党は重要法案に賛成するなど戦っておらず、不信任案は極めて茶番で選挙前のPRにすぎないので採決はともに棄権する」と述べました。

社民 福島党首「不信任に十分値する」

社民党の福島党首は記者会見で、内閣不信任決議案について「岸田内閣は、物価高やインフレの中で、暮らしに対する配慮が全くなく、不信任に十分値する。また、憲法改正に前のめりであることや、敵基地攻撃能力の保有や核共有、それに防衛予算の大幅増額などの議論に乗っかろうとしていることも不信任の大きな理由だ」と述べ、賛成する意向を明らかにしました。

また、細田衆議院議長に対する不信任決議案についても「セクハラの問題は、企業であれば調査委員会が立ち上げられ、本人も説明するものだが、細田議長は説明責任を一切尽くしておらず、世間の常識や価値観とずれている」と述べ、賛成する考えを示しました。

内閣不信任決議案とは

内閣不信任決議案は、内閣が信任できないとする衆議院の意思を表明する議案です。

衆議院議員51人以上の賛同があれば提出できます。

決議案が、衆議院本会議で出席議員の過半数で可決されると、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならないと憲法で規定されています。

【与野党攻防のヤマ場】
内閣不信任決議案は、その時の政治情勢に応じて主に野党側が、その時の内閣に政策や対応を任せられないとして提出します。

国会会期末の直前に出されることが多く、終盤国会の与野党攻防のヤマ場となっています。

特に選挙前には対立が激しくなります。

一方で、国会議員からは「可決の見込みがない中、国会の会期末に年中行事のように内閣不信任案を提出するのは国民の理解が得られない」という指摘も出ています。

【内閣不信任決議案が否決されたケース】
2021年は、10月に衆議院選挙が行われましたが、その前の国会会期末の前日、6月15日に立憲民主党など野党4党が、菅内閣は新型コロナウイルス対応で失策を重ねているなどとして、内閣不信任決議案を提出しました。

これを受けて、衆議院本会議で審議が行われました。

立憲民主党の枝野代表は、およそ1時間半にわたって趣旨弁明を行い「補正予算など、国会が果たさなければならない案件は山積しており、戦後最大の危機の下で、会期延長を拒否し、国会を閉じようとしているのは到底容認できない。菅総理大臣は有事のリーダーとして失格で、即刻その地位を去るよう強く求める」と述べました。

これに対し、自民党の柴山幹事長代理は「菅内閣は総力をあげて新型コロナウイルスの1日も早い収束と、国民が安心できる日常を取り戻すことを最優先に取り組んできた。このコロナ禍で内閣不信任決議案を出すこと自体、国民の政治に対する信頼を損なわせるという理解はないのか」と反論しました。

このあと記名投票による採決が行われた結果、内閣不信任決議案は、自民・公明両党と日本維新の会などの反対多数で否決されました。

【内閣不信任決議が可決されたケース】
戦後、内閣不信任決議が可決されたのは4回あります。

▽1948年(昭和23年)の第2次吉田内閣
▽1953年(昭和28年)の第4次吉田内閣
▽1980年(昭和55年)の第2次大平内閣
▽1993年(平成5年)の宮沢内閣

いずれも不信任決議を受けて、衆議院が解散されました。

1993年6月に、宮沢内閣に対して野党側が提出した不信任決議案は、衆議院に小選挙区制を導入することなどを柱とした政治改革をめぐる自民党内の対立などから、当時の羽田派など、自民党の39人が賛成して可決されました。

この時は、羽田派に所属していた2人の閣僚も不信任決議案に賛成しました。

宮沢総理大臣は、これを受けて衆議院の解散・総選挙に踏み切りましたが、羽田派などが離党して新党を結成したことから、自民党は過半数を割り込みました。

そして、非自民、非共産の7党・1会派が連立を組む細川内閣が誕生し、自民党は結党から38年目で、初めて野党に転じる事態となりました。

一方、参議院で、内閣が信任できないなどとして総理大臣に対する問責決議案が提出されることがありますが、仮に可決されても、衆議院での内閣不信任決議のような法的拘束力はありません。

※(肩書は当時)

議長に対する不信任決議案とは

衆参両院の議長に対する不信任決議案は、議事運営や議長としての資質に疑義があることなどを理由に提出されます。

衆議院では50人以上、参議院では10人以上の賛同者が必要です。

ただ、憲法に明記されている内閣不信任決議案とは異なり、可決されても辞任などの法的な拘束力はありません。

衆参両院によりますと、現行憲法のもとでは衆議院議長には23回、参議院議長には31回提出されているということです。

ただ、議長は第一党から選出されるのが慣例となっていることもあり、可決されたことはありません。

衆議院議長に対する不信任決議案は、2016年12月に当時の大島議長に対する決議案以来となりますが、この時は合わせて提出された安倍内閣に対する不信任決議案だけが採決され、議長の不信任決議案は採決されませんでした。

一方、衆議院副議長をめぐっては、昭和36年に社会党の久保田鶴松・副議長に対し、法案審議で議長に協力しなかったなどとして提出された不信任決議案が可決され、その後、久保田副議長は辞任しました。