メルケル前首相「正当化の余地全くない」ウクライナ侵攻を非難

去年12月に退任したドイツのメルケル前首相が7日、トークイベントに登場し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「正当化の余地は全くない。国際法に違反する残忍な侵略だ」と述べ、強く非難しました。

ドイツを16年にわたって率いたあと、去年12月に退任したメルケル前首相は7日、首都ベルリンで開かれたトークイベントに登場しました。

このなかで、メルケル氏は、ロシアによるウクライナへの侵攻について「正当化の余地は全くない。国際法に違反する残忍な侵略だ」と述べ、強く非難しました。

そして8年前、クリミアを一方的に併合したロシアのプーチン大統領と対話を重ねながら侵攻を防げなかったことについて、「外交がうまくいかなかったことはたいへん悲しいことだ。今回のような事態を防ぐ安全保障の枠組みを作り出すことができなかった」と述べながらも「外交は失敗したとしても間違いではない」と述べ、みずからの対応は誤りではなかったとの認識を示しました。

メルケル氏は、退任後、公の場で語ることがほとんどなかったことから、今回はその発言が広く伝わる事実上、初めての場となり、会場には多くの観客が訪れるとともにテレビでも生中継されるなど、関心の高さをうかがわせる形となりました。

メルケル前首相とプーチン大統領

旧東ドイツで育ったメルケル前首相は、ロシア語を流ちょうに話すことで知られ、プーチン大統領も1980年代、旧ソビエトのKGB=国家保安委員会に所属していたころ、旧東ドイツのドレスデンに派遣されるなど、ドイツ語は堪能とされています。

2人は、相手側の母国語を使って交流ができたと言われ、プーチン大統領は、首相時代も含めておよそ16年にわたり、ウクライナなど地域の課題や国際情勢をめぐってメルケル前首相と会談を重ねてきました。

2007年、ロシア南部のソチで行われた首脳会談でプーチン大統領は、犬が大の苦手なメルケル前首相の目の前に、みずから飼っていた黒の大型犬を連れてきたというエピソードが伝えられ、メルケル氏がどういう反応を示すか試したのではないかともみられています。

また、2014年のロシアによるクリミア併合やウクライナ東部での戦闘を受けて、ロシアと欧米の対立が深まりますが、メルケル氏は、プーチン氏とも協議を行い、停戦合意を仲介しました。

ウクライナや中東のシリア情勢、そして、ロシアの反体制派に対する人権問題などを巡り、2人は、厳しいやり取りも繰り広げますが、プーチン氏は、メルケル氏には一目、置いていたともみられ、メルケル氏が在任中、最後にモスクワを訪れた去年(2021年)8月の首脳会談では、花束を渡してねぎらいました。

そして、会談後の共同記者会見では、「メルケル氏は、16年にわたってドイツを率いてきた。ヨーロッパ、そして世界で最も権威のある指導者の1人だと尊敬している。メルケル氏とロシアで会えるのはいつも嬉しいことだ」と述べていました。

一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ドイツでは、新たなガスパイプライン「ノルドストリーム2」の計画など、ロシアに依存するエネルギー政策は誤りだったのではないかという見方も広がり、一部のメディアは、メルケル氏がプーチン氏と進めた協力関係について否定的に伝えています。